天才読書 世界一の富を築いたマスク、ベゾス、ゲイツが選ぶ100冊
山崎良兵
日経BP
本書の要約
イーロン・マスク、ジェフ・ベゾス、ビル・ゲイツの3人は、読書を現実の問題解決に活用し、数多くのイノベーションを実現してきました。3人は若い頃から読書を通じて深い教養を培ってきましたが、成功して大富豪になった今でも読書を続け、自分の教養をアップデートしています。
読書がイノベーションを起こす原動力
米国には、大富豪やイノベーター、セレブリティーといった著名人が薦める本を紹介する「ブックガイド」的なコンテンツが多数存在します。成功者が読んでいる本に強い興味を持ち、推薦されているタイトルを手に取ってみたいと考える人が多いからです。(山崎良兵)
読書好きのためにアメリカには数多くのブックガイドが存在します。ニューヨークタイムズやワシントンポストの書評欄だけでなく、「ブックガイド」から自分が読むべき本を探すという文化がアメリカにはあります。
それもイーロン・マスク、ジェフ・ベゾス、ビル・ゲイツという現代を代表するイノベーター3人に影響を与えた本を選りすぐり紹介したブックガイドが山崎良兵氏の「天才読書」です。著者は日経BPや日経新聞の記者として、この3人を個別にインタビューし、彼らの記事を執筆してきたスペシャリストです。
マスク、ベゾス、ゲイツの共通点は圧倒的な読書量です。ゲイツに至っては、猛烈な「読書マニア」として知られています。ゲイツは毎年夏に5冊の推薦書を公表しますが、この多くがベストセラーになっています。私もゲイツのお薦め本が翻訳されると必ず読むようにしています。
ビル・ゲイツの読書はマイクロソフトのビジネスにも影響を与えています。1995年のシンク・ウィークでゲイツがまとめた「インターネットの高波(The Internet Tidal Wave)」というメモによって、マイクロソフトはインターネット戦略を本格化させ飛躍を遂げます。
ジェフ・ベゾスはカズオ・イシグロの小説『日の名残り』から影響を受けています。「挑戦して失敗しても後悔しないが、挑戦しなければずっと後悔しながら生きることになる」とべゾスは考えるようになり、先送りをしなくなったと言います。
スペースXで宇宙ビジネスの覇権を握ったイーロン・マスクは「ロケットに関する知識は読書から得た」と述べています。マスクは子供の頃から読書家でさまざまなカテゴリーの本を読んできましたが、ビジネスのアイデアや知識を読書という習慣から得ていたのです。
3人の天才は読書を現実の問題解決に活用し、数多くのイノベーションを実現してきたのです。著者は3人に影響を与えた書籍を100冊選び、本書で紹介しています。3人のインタビュー時の印象も書かれており、彼らの実態にも触れられます。
3人は若い頃から読書を通じて深い教養を培ってきましたが、成功して大富豪になった今でも読書を続け、自分の教養をアップデートしています。この姿勢を私も見習いたいと思います。
幅広い読書がイノベーションの鍵
天才読書で紹介する100冊には、新しい本でも、ギリシャ・ローマ時代から近代、現代に至るまで、世界の歴史に名を残す偉大な学者や知識人の研究を土台にしているものが目立ちます。まさに「巨人の肩の上」に乗り、最新の知見や研究の成果を踏まえて、過去、現在、未来について論じている本が多いといえるでしょう。
100冊の本のカテゴリーは多岐にわたります。特にイーロン・マスクは歴史、SFやファンタジーにも強い関心を示しています。エドワード・ギボンの「ローマ帝国衰亡史」やウイル・デュラントの「歴史の大局を見渡す」などの歴史書やSFの本が紹介されています。また、ウォルター・アイザックソンの「スティーブ・ジョブズ」の伝記本が取り上げられているのも印象的でした。
歴史書で過去を振り返り、SFで未来を妄想し、伝記本で成功や失敗体験を知ることで、マスクは自分の成功確率を高めていたのです。読書がマスクの人生にレバレッジをかけていることがわかります。読書から得た幅広い知識がイノベーションの原動力となり、テスラ、スペースXの経営に影響を及ぼしています。
このブログでもお馴染みのピーター・ティールの「ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるか」が、お薦め本として紹介されています。私は何度もこの本を読み、自分の大学の授業でもペイパルマフィアやティールの考えたについて話をしています。
ティールはスタートアップを成功に導く普遍的な条件を3つあげています、
①起業家の資質
シリコンバレーでは人付き合いが極端に苦手なアスペルガー気味の人間が有利に見える、とティールは指摘します。空気を読めない人間は、周囲の人と同じことをしようとは思わないために、イノベーティブな姿勢を保てます。日本では空気が読めない人は排除されがちですが、他人にどう見られるかを気にせずに好きなことに集中している人の方が、イノベーションを起こせるのです。
②スタートアップの成功確率は高められる。
成功は運ではなく、科学的な思考に立ち、計画がうまくいかなかった場合に備えて準備しておくことが重要で、それにより成功確率を高められます。
③長期計画(ロードマップの策定)
テスラはEVのロードスターを発売して間もないころから、モデルS、モデルX、モデル3を発売するというロードマップを描いていました。著者は2012年にマスクに取材した際に、この計画が”絵に描いた餅”のように思えたと振り返ります。しかし、マスクはそのビジョンを実現し、EVの分野で圧倒的なシェアを握り、自分の正しさを証明しました。
幅広い書籍を数多く読むことで、自分の可能性を広げられます。私の場合、どうしてもビジネス書や歴史小説を読むことが多く、読書に偏りが生じていることに気付けました。また、3人のお薦め本から、多様な読書体験がイノベーションの原動力になることを再認識できました。100冊の中で読めていない本や再読すべき本をリストアップし、チャレンジしていきます。
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