その悩み、哲学者がすでに答えを出しています(小林昌平) の書評

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その悩み、哲学者がすでに答えを出しています
小林昌平
文響社

本書の要約

過去の哲学者や思想家の力を借りることで、「将来が不安」「仕事が難しい」という人間の悩みを解決することができます。アリストテレスの「ニコマコス倫理学」やルネ・デカルトの「方法序説」を読めば、人生の悩みや不安を解消するヒントが得られます。私たちの課題の多くは過去の偉人が解決策を考えています。

アリストテレスの教えで不安を解消する方法

「将来の目的や計画をいったん忘れ、今この瞬間のやりたいこと、やるべきことに熱中せよ」というのがアリストテレスです。(小林昌平)

私たち人間は将来に不安を感じやすい生き物です。将来何が起こるかわからない中で、詳細な計画を立てても、不安は払拭できません。そんな時、哲学の教えにより、私たちは不安を解消できるようになると著者の小林昌平氏は指摘します。

アリストテレスは「ニコマコス倫理学」の中で、「キーネーシス(運動)的な行為」と「エネルゲイア(現実活動態)的な行為」という2つの行為から不安解消の方法を説明します。

・キーネーシス・・・将来の目的を最優先にした行為
・エネルゲイア・・・将来の目的を度外視し、今この瞬間に集中する行為

「キーネーシス的な行為」とは、「目的が今の自分の〈外〉にある行為」と言い換えられます。たとえば、今の自分の楽しみを犠牲にして、将来の自分のために備蓄をするような行為のことです。

一方の「エネルゲイア的な行為」とは、『「今、自分にとって楽しく充実しているという状態」がそのまま「すでになしとげた成果」になることだ』とアリストテレスは指摘します。目的を度外視してプロセスにのめりこむことで、私たちは結果を出せるようになるのです。

結果はどうあれ、今ここのプロセスを楽しむことでパフォーマンスが高まります。いい結果とはプロセスを楽しんだおつりのようなものだと捉えるのです。

目的重視の「キーネーシス的思考」とプロセス重視の「エネルゲイア的思考」。両者をバランスよく発揮させることが現実的には最もいい活動のしかた、ということになります。

今この瞬間に没頭し、エネルゲイア的に日々をつないでいけば、将来の不安は自然と解消されていきます。自分のやりたいことに集中し、ゾーンに入ることで、普段とは異なる力を発揮できます。

デカルトの方法序説で課題を解決する方法

私が取り組む難しい問題のそれぞれを、できるかぎり多くの、しかもそれを最もうまく解くために要求されるだけの数の小さなパーツに分割すること。(ルネ・デカルト)

デカルトは有名な「方法序説」の中で、「困難の分割」という考えを採用することで、大きな課題を解決できると説いています。

「人生でどうしてもやりたいこと」を、時間軸で分割します。10年レベル、数年レベル、1年レベル、月レベル、毎日の生活(日課)というふうに小さくして、自分の手に負えるサイズに落としこんでいきます。さらに1日の中の数時間、数分の単位にまで落としこんで、そのタスクに対して自分の時間を使うようにするのです。

大きな目標を小さく切り刻み、「やりたいことを分割して小さな目標(サブゴール)にする」のです。目標が大きすぎで恐怖を感じるなら、その大きな目標を小分けにしましょう。途中で達成すべきいくつかのサブゴールを立て、そのサブゴールひとつひとつを確実にクリアしていくようにします。

ブライアン・トレーシーのサラミスライス法でも紹介しましたが、この方法は効果があります。サブゴールをクリアすること自体で達成感を得られます。

私は本を執筆する際にこの方法を活用しました。一冊の本は10万字から13万字程度のボリュームがあります。こう考えると途方もない量に思えますが、7つの章立てに分けることで、1万字から2万字程度に分けられます。更にそれを1日あたりの文字数(1500字)に分割し、文章を書くことにしました。こうすることで、恐怖感がなくなり、日々チャレンジできるようになったのです。

日々の小さなゴールを達成すれば、はずみがついて、また次の小さなゴールにいこうと思えます。毎日、書き続けることで、一冊の本を完成できたのです。デカルトの教えを信じ、困難を分割することで、結果を出せるようになります。

ジル・ドゥルーズの逃走論を使えば、自分の好きなことに時間を使えるようになりますし、ブッダの教え(瞑想)により、緊張感を緩和できます。本書の哲学者や思想家の教えを活用することで、人生のたいがいの問題は解決できるようになります。


この記事を書いた人
徳本

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数
iU 情報経営イノベーション専門職大学 特任教授 

■著書
「最強Appleフレームワーク」(時事通信)
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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