マーケティング思考 業績を伸ばし続けるチームが本当にやっていること
山口義宏
翔泳社
本書の要約
Who(顧客理解)、What(顧客価値)、How(4P施策)の3つのステップでマーケティングを実践することで、売上・利益がアップします。顧客体験を高めたいというパーパスのもと、チーム全体が正しいマーケティング活動を行うことで、企業文化が育まれ、組織がより強くなります。
マーケティング思考を身につける方法
「いかに顧客を獲得するか」ではなく「いかに顧客に使い続けていただき、LTV(顧客生涯価値)を伸ばして黒字化するか」という部分に競争の力点は拡張しています。(山口義宏)
業績を伸ばし続けた企業に共通するマーケティングへの取り組み、チームの人材の要件、業務の進め方といった、外部からは目に見えにくいけれど普遍性のあるOSを「マーケティング思考」と著者の山口義宏氏(ブランド・マーケティング領域の戦略コンサルタント)は名付けました。
マーケティングではWho、What,Howの順番で考えるべきですが、多くのマーケターはHowのアプローチから考えがちです。これでは正しい解決策が見つからず、たとえ、成功したとしても再現性がない施策になります。
マーケターは施策やツール活用を目的とせずに、本質的な問いからスタートすべきです。マーケティング思考はボウリングの一番ピンであり、これを身につけることで、売上と利益が上がるようになります。その際、以下の3つのステップでマーケティングを実践するようにしましょう。
①Who・・・どのような顧客に(顧客理解)
②What・・・どのような価値を(顧客価値→機能的価値、金銭的価値、社会交流的価値、自己表現的価値)
③How・・・どのような施策で届けるか(4P)
顧客価値を創造し、その価値を高め続けることで、顧客のLTVをより長くできるようになります。
著者は売上を伸ばす5つの方法を明らかにしています。
■短期的に売上を伸ばす取り組み
1、広告やPRにより、価値を高く評価する人(=誰に)へのリーチ、つまり接触範囲を拡げる。
2、商品・サービスは現状のままで、「誰に?」と「何を?」の新しい有効な組み合わせ(ターゲット顧客層と顧客価値)を開発する。
3、商品・サービスを得るための費用を下げる。具体的には、価格を下げる、トライアルの商品やプランを提供する、販売チャネルを増やして入手しやすくする、販売チャネルで目立つ場所に置かれるようにして探す時間を削減するなど。(ただし価格を下げる場合は、販売量を増やすことでコストを下げ、収益を増やすシナリオが必須)
■中長期的に売上を伸ばす取り組み(成果への反映に時間がかかる)
4、商品・サービスの実態となる仕様・スペックのレベルを高め、価値の大きさと、価値を評価する顧客層を拡げる。
5、商品・サービスを新しく開発し、価値提案の幅を拡げる。
マーケティングの3つの共通言語
マーケティングには以下の2つの落とし穴があります。
①顧客理解と顧客価値が整理されていない。
各施策の指針になる『誰に?(顧客理解)』と『何を?(顧客価値)』が不在で、4P施策のアウトプットがずれ、施策で顧客の心と行動の変容ができず、成果が出ない。
②4P施策の選択・リソース配分が弱い。
売上を伸ばそうと何らかのマーケティング投資をする際、常にお金や人のリソースは限られます。「どの施策にどの程度配分するのか?」という投資配分の判断が、成果を出すうえで非常に重要になります。
同じリソースがあっても、その使い方によって、成果が変わってしまいます。商品の中身の改良、パッケージデザイン、広告、PR、店頭販促など、何にどの程度お金を使うのかの判断によって、結果が左右されます。施策に必要な広くて浅い知識を持ったマーケターがコミュニケーションのデザインに関わるべきです。
マーケティングで良い成果を上げるには、各施策の担当者同士が連携し、役割の分断を乗り越え、双方向で意見をすり合わせて調整しないといけません。
過去の知識や体験にとらわれず、トラディショナルマーケティング、デジタルマーケティング、戦略PR、コンテンツマーケティング、SNSマーケティングなどを上手に組み合わせて、結果を出すことがマーケターには求められています。
狭い知識や体験にとじこもり、新たな知識を学ばない人は成果を出しづらくなっています。私は広告会社でマーケティングの基本を学び、戦略PRやSNS、コンテンツマーケティングを組み合わせることで、成果を出してきました。
広告会社やPR会社の若手の優秀なマーケターと日々交流することで、最新の知識と自分の体験を組み合わせて、クライアントのためにマーケティング戦略を立案しています。経営視点を持ちながら、マーケティングの幅広い知識を掛け合わせることで、成果を出せるようになるのです。
Who(顧客理解)とWhat(顧客価値)を正しく理解した上で、幅広い選択肢から正しい解決策を考えることで、マーケティングがうまくいくようになります。施策ばかりにこだわるのではなく、基本の設計からしっかりとコミュニケーションを考えたほうが効果があるのです。
チームが以下の3つの共通言語を認識し、協働することで結果を出せるようになります。
■マーケティングの3つの共通言語
共通言語1 誰に?何を?どのように?「誰に?」の顧客理解、「何を?」の顧客価値、「どのように?」の4P施策の入り口概要の知識・スキルを共有化することで、ミクロの施策の判断基準がそろいます。
共通言語2 用語・指標の定義と相場観CPA、LTV、リピート顧客、ロイヤル顧客など、専門用語と指標を組織で定義し、事実の把握・理解、目標とする数字を見積もれる相場観を共有化することで、現状の事実と課題の認識がそろいます。チーム全体でこのギャップを埋めるようにします。
共通言語3 事業フェーズ別の考え方事業フェーズごとに異なる重点的な取り組みとよくある課題、よくある落とし穴などの型を共有化することで、術目敢での重点事項と落とし穴の認識がそろいます。
この3つの共通言語が浸透したチームは、非常に短い時間で意思の疎通と連携がしやすくなり、施策同士のスムーズな連携を促すだけでなく、チームの他のメンバーが担当する施策への健全なフィードバックも実現します。
チーム間のコミュニケーションをよくし、お互いの領域に越境することで、アイデアも生まれやすくなります。心理的安全性が高まることで、新たなことにチャレンジできるようになり、イノベーションも起こりやすくなります。
マーケティングの3つの共通言語が組織に浸透すると、結果的に非常に良いチーム文化が形成されます。顧客体験を高めたいというパーパスのもと、正しいマーケティング活動を行うことで、企業文化が育まれ、組織がより強くなります。
マーケティングのOSを正しくメンバー全員にインストールすることで、経営者はさまざまな効果を得られるのです。
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