「氣」が満ちあふれる5つの法則 感動経営――世界一の豪華列車「ななつ星」トップが明かす49の心得(唐池恒二)の書評


感動経営――世界一の豪華列車「ななつ星」トップが明かす49の心得
唐池恒二
ダイヤモンド社

本書の要約

感動経営を行うことで、顧客が自社のファンとなり、売上がアップします。社員が仕事に誇りとやりがいを感じ、お客様に最高のサービスを自ら提供することで、顧客は感動体験を得られます。リーダーは社員が主体的に動けるようにするために、「氣」が満ちあふれる組織をつくるべきです。

「氣」が満ちあふれる5つの法則

いまの私が最も大切にしているもの。 それは、「感動のない仕事は仕事ではない」という思いだ。(唐池恒二)

世界一の豪華列車「ななつ星」は、最高競争率がなんと316倍!にもなると言います。この成功の立役者がJR九州相談役の唐池恒二氏で、感動経営という手法で同社を成長させてきました。

山手線も新幹線もなく、数々の赤字路線が走るばかりの九州というエリアは、鉄道事業だけでは赤字を脱却できずにいました。同社は鉄道会社であるにも関わらず、その売上の6割はホテル、流通、不動産、建設、外食、ドラッグストアなどがあげています。

唐池氏は圧倒的なリーダーシップと感動経営により、大赤字のお荷物会社だったJR九州を変革させ、絶対に無理だと言われていた上場を実現します。

経営は人が感動することからはじまり、その感動を周りに伝染させることで、顧客から支持されるようになります。社員が思いをこめ、手間をかけたものがもつ力がサービスとなり、 その力がお客さまを感動させ、結果、売上げがアップするのです。

仕事は感動にはじまり、感動に終わる。 仕事の目的は、誰かを元気にすることだ。

「氣」に満ちあふれた人が集まり、「氣」に満ちあふれた職場には活力が生まれ、周りの人を元気にします。 

著者は「氣」が満ちあふれる5つの法則を明らかにしています。 
①夢見る力 
夢は将来に希望を抱かせ、人を元気にさせます。

②てきぱき、きびきび、スピード 
職場全体をスピードのある組織に変えるとそこに「氣」が集まってきます。

③明るく元気な声
明るく元気な声が行き交っている職場や会社には、「氣」が集まってくる。周りの人を元気にしたり、楽しくすると自分の幸福度もアップします。笑顔と感謝の心で喜びと希望を与えるようにしましょう。

④スキを見せない緊張感

店員も店も、ひたすらお客さまに集中している。スキを見せない緊張感がみなぎっている。緊張感は、店だけでなく、ひとやあらゆる組織にも重要だ。

社員がお客様に集中すること、緊張感を持つことで、いい「氣」を呼びこめます。

⑤よくなろう、よくしようという貪欲さ
貪欲に「氣」を求める人には、夢の実現というご褒美が待っています。売上アップには接客サービスの向上=顧客体験の向上が効果があります。

経営者は社員を元気にするビジョンを示せ!

会社が目指すべきは、事業を多角化し、売上も利益も底上げし、企業として自立をはたしたうえでの完全民営化と株式上場だった。

唐池氏は何もないところ、マイナスのスタート地点の時に上場というビジョンを社員に示します。元気のない組織に夢を語ることで活力が与えられ、エネルギーが徐々に高まっていったのです。

JR九州は新規事業で農業を行っています。JR九州が農業に力を入れる公式な理由は以下の3つですが、農業を行うことで、社員が元気になっていったと言います
1、各地に耕作放棄地が増えていくのを見てさびしく感じたから
2、日本の美しい田園風景を守るため
3、農業と鉄道には共通点がある

農業は食物を提供することにより、ひとの生命を維持している。さらには、食物はひとの元気と活力を生み出す。 すなわち、農業はひとを元気にしているのだ。

ななつ星もこの農業から恩恵を受けています。九州各地の農家から厳選された農産物を食材として料理に使用し、美味しいと好評を得ています。

阿蘇駅のホーム上につくったレストラン「火星」での朝食では、地元のとれたて野菜をビュッフェ方式で自由に食べられます。 九州の農産物がななつ星のお客さまを元気にすると同時に、地元の産業に活力を与えています。JR 九州は農業にチャレンジすることで、農家や地元の人たちとWin-Win-Winの関係を築いているのです。

売上目標を細分化して、パートやアルバイトの人達と共に動くことで、大きな目標も達成できます。外食部門の赤字もこの売上管理で巻返すことができ、JR九州の飲食部門は8億円の赤字からの黒字化を達成しました。

変化を厭わず、意志と勇気をもって進化に挑み、改革に取り組む企業に老衰はない。

唐池氏は挑戦する人をほめ、異端な人を増やすことで、新規事業を次々起こすことで、顧客を感動させていったのです。「このままではJR九州は必ず潰れる」という強い危機感を共有するだけでなく、上場というビジョンを示すことで、いくつもの目標を達成していったのです。


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