若者の個性を活かし、イノベーションを起こす方法。日本の死角の書評

three people standing each other during golden time

日本の死角
現代ビジネス(編集)
講談社

本書の要約

多くの若者は、個性的であることに抵抗を感じています。経営者は、若者の個性を受け入れ、活かす職場環境を整えることが重要です。若者は、企業に新しい視点とイノベーションをもたらすことができます。経営者は、若者の才能と情熱を最大限に引き出し、企業の成長と発展のために活用する必要があります。

日本人が集団主義であるという常識を疑え!

科学的な比較研究は、「日本人は集団主義」 という「常識」を否定している。この 「常識」は、欧米優越思想が蔓延していた19世紀の遺物にすぎない。しかし、基本的帰属錯誤が災いして、日本人の戦時中の集団主義的な行動が、この「常識」を証明する「動かぬ証拠」に見えてしまった。その結果、この「常識」は、外国人が共有する「日本人」のイメージになり、日本人自身の自己イメージにまでなってしまったのである。(高野陽太郎)

日本は、長い歴史と豊かな文化を持つ国です。また、世界でも有数の経済大国であり、先進国として知られています。しかし、日本は近年、少子高齢化や人口減少、経済成長の停滞など、様々な課題に直面しています。

このような状況の中、日本は今後どのような国になっていくのでしょうか?私たちはどのような時代を生きていくのでしょうか? 今回は。様々な専門家が日本の様々な謎や論点についてについて執筆した日本の死角からいくつかの考察を紹介したいと思います。

日本人は、自らを集団主義的な文化を持つ人々と認識しています。同様に、海外からも日本は集団主義的な社会と評価されています。それを評価する「同調実験」がアメリカで行われました。「同調行動」の実験では、他の数名の被験者がいる状況で同じ課題に回答してもらいます。

ここで注目すべきは、実際の被験者以外の参加者は全員「サクラ」であり、時折、明らかに間違った回答をすることです。このとき、被験者がどのように回答するかが観察されます。もし、被験者が他の参加者に合わせて明らかに誤った回答をする場合、「集団に同調した」と言われます。自身の判断を曲げてでも集団に合わせるこの「同調」は、まさに「集団主義」の核心となります。

この実験は、最初に「世界で最も個人主義的」とされていたアメリカ人を被験者として行われました。その結果、同調行動の割合を示す「同調率」は37%でした。その後、同じ方法で8つの実験が行われましたが、平均の「同調率」は25%でした。

では、「世界で最も集団主義的」と言われていた日本人の「同調率」はどれくらいだったのでしょうか?、実際の実験の結果、日本人の平均の「同調率」はわずか25%に過ぎなかったのです。予想とは異なり、日本人の数値は、アメリカ人とほとんど変わらなかったのです。

日本人とアメリカ人を比較した研究は、同調行動の実験を含めて43件が見つかりました。意外なことに、「常識」に反して、日本人とアメリカ人の間には差がないという結果を示す研究が最も多く、合計で24件ありました。一方で、逆に「アメリカ人の方が集団主義」という研究は驚くほど13件もありました。また、「常識」に合致する形で「日本人の方が集団主義」と結論づける研究はわずか6件に過ぎなかったのです。

科学的な方法できちんと比較をしてみると、日本人は、「世界でいちばん個人主義的」という定評のあるアメリカ人と比べても、特に集団主義的というわけではないのである。

科学的な比較研究の結果がこう出ている以上、「日本人は集団主義」という「常識」は、間違いでしかないのです。

この集団主義はパーシヴァル・ローウェルというアメリカ人の「先入観」に根差していると認知科学者の高野陽太郎氏は指摘します。哲学者へーゲルは、『歴史哲学講義』のなかで、「西のヨーロッパから東の中国へと向かうにつれて、個人の自由の意識が減少していく」と論じていました。

アメリカを「西の端」、日本を「東の端」と位置づけると、アメリカ人と日本人は対極的な存在とされます。アメリカ人は「強い自己意識を持つ個人主義的な国民」と見なされています。その一方で、日本人はその対極にある「明確な自己意識を持たない集団主義的な国民」であると考えられています。

「日本人は個性を持たない」というローウェルの主張は、このような「先入観」や演繹的な推論に基づいたものだったのかもしれません。 第二次世界大戦の時期までには、ローウェル流の日本人観は、西洋の知識人の間で「常識」とされていたようです。

アメリカ人は敵国である日本の文化が集団主義の特徴を持つというのは当然のことと感じていた可能性が高いのです。戦時中、日本人が示した集団主義的な行動も、外敵の脅威に対する普遍的な反応であり、特別なものではありませんでした。しかし、それが「日本文化に特有な集団主義」と誤解されてしまったのです。

見誤った最大の原因は、「基本的帰属錯誤」という思考のバイアスであると考えられます。ここでの「帰属」とは、何かの原因を特定の要素に「帰する」こと、つまり、原因の推定を意味します。この「基本的帰属錯誤」とは、人の行動の原因を推定する際に、その人が置かれていた状況の影響力を見過ごし、その人自身の内部にある特性が原因だと考えてしまうバイアスのことです。

このバイアスは非常に強固であり、状況の影響力を強調してもなかなか消えることがないと知られています。集団主義的な行動の原因は、「日本の集団主義的な精神文化」という内的な特性だと考えてしまうことになります。その結果、『菊と刀』の読者の多くは、「日本人は集団主義」という指摘に納得してしまい、「日本人は集団主義」という見方が「常識」になってしまったのです。

日本人はしばしば集団主義者であると見なされます。しかし、私たちは皆、独自の個性とアイデンティティを持っていることを忘れてはなりません。私たちが自分たちを個人として見ることで、私たちはより革新的で創造的になることができます。こう考えれば、日本人はアメリカ人のようにイノベーションを起こせるはずです。

個性的をネガティブに捉える若い世代の力の引き出し方。

「個性的と言われると、自分を否定された気がする」「周囲と違うってことでしょ?どう考えてもマイナスの言葉」「他の言葉は良い意味にも取れるけど、個性的だけは良い意味に取れない」「差別的に受け取られるかも」等々――。 驚かれるかもしれないが、どうやらこの中学生たちだけが特殊というわけでもないらしい。(土井隆義)

最近の日本の若者は、個性的であることをネガティブに捉える傾向があります。私が指導する大学の学生たちも同様で、「目立ちたくない」と口にします。 20代以下の世代のコミュニケーションは、以前の世代とは大きく異なります。

以前の世代は、全人的な関わり合いを前提とした「全面総括型」のコミュニケーションを好みました。つまり、彼らは、他の人と深い関係を築くために、自分の考えや感情を共有することをいとわなかったのです。しかし、20代以下の世代は、場面ごとに切り替えられる「一極集中型」のコミュニケーションを好む傾向があります。

つまり、彼らは、特定の状況や相手に応じて、自分のコミュニケーションスタイルを変えることを好みます。 この違いが生じる理由は、昨今の日本では人間関係の流動性が高まっているからです。

かつては、人間関係は比較的固定的でしたが、現在では、人々はより流動的な人間関係を築いています。そのため、20代以下の世代は、場面ごとに切り替えられるコミュニケーションを好むようになったのです。 上の世代から見ると、この20代以下の世代のコミュニケーションは希薄に見えることがあります。

現代の若者は、個性的であることが忌避される社会の中で、周囲に溶け込み、自分を守ろうとしています。これは、制度的な枠組みの拘束力が失われていることに起因しています。制度的な枠組みが人間関係を保証する共通の基盤ではなくなり、関係が不安定になりました。そのため、現代の若者は、個性的になることで、相手から選ばれない可能性や関係の不安定さというリスクを冒したくないのです。

現代の若者は、以前のように社会組織に強制された鬱陶しい人間関係から解放されることを願うのではなく、むしろ制度的な束縛が緩んで関係が不安定化した現代社会において、安全に関係に包摂されることを望んでいます。

現代社会では、人間関係の流動性が高まり、「ぼっち」と呼ばれる状態を避けることが求められます。しかし、これは制度的な枠組みの拘束力が失われた結果であり、同時に関係の不安定性も伴っています。個性的であることが忌避され、関係に恵まれていることが人間的魅力の指標となっています。

また、一人でいることを軽蔑される一方で、一人で生きていくことが困難な時代となっています。 この現象は、現代社会における人間関係の複雑さと、個人の安定と包摂のニーズの両立の難しさを反映しています。しかし、若者たちが個性的であることを恐れ、周囲から浮くことを避けるのは、自分を守るための自然な反応です。彼らは周囲の承認を求め、自己有用感を強く求めています。

イノベーションには多様性と若い力が欠かせません。経営者は、彼らの特性を理解し、創造力を発揮させる環境を整えることが重要です。 以下の施策を取り入れることで、若い人たちの力を引き出せます。
・チームメンバーの個性を尊重し、多様性を受け入れる文化を醸成すること。
・チームメンバーが自分の意見やアイデアを自由に発言できる場を設けること。
・チームメンバーが自分の能力を発揮できるような、やりがいのある仕事を任せること。
・チームメンバーの成長やキャリアアップを支援すること。

このような取り組みをすることで、若者たちが安心して個性を伸ばし、創造力を発揮できる職場環境を整えることができます。実際、多くの日本発コンテンツがクールジャパンとして世界に誇られていますが、これらは若者たちがチームを組んで共同作業で生み出したものです。ゆとり世代やZ世代の若者たちとの関わり方には、彼らの心情を理解しつつ接することが重要です。

経営者は若者のマインドを理解し、彼らの関係性に配慮し、関係の安定を支援する仕組みを構築すべきです。彼らは重要な役割を果たす存在であると認めることで、多様性や創造力を活かせ、組織や社会の発展に貢献します。若者の成長と成功を支えるために、彼らの意見を尊重し、柔軟なコミュニケーションを重視し、チームワークを促進しましょう。

経営者として、若者と共に未来を築くために彼らの可能性を信じ、敬意と信頼を持ちながら協力する組織をつくるべきです。その際、以下の点に注意を払うべきです。大学で授業を行う中で、気づいた4つの施策を書いておきます。

①オープンなコミュニケーション: 若者たちは自由な意見やアイデアを出しやすい環境を求めています。経営者は彼らが発言しやすいオープンなコミュニケーションの場を提供し、若い世代の意見や提案を引き出すようにしましょう。

②フレキシブルな働き方: 若者たちはワークライフバランスを重視し、自身のライフスタイルに合わせた柔軟な働き方を求めています。経営者はフレックスタイムやリモートワークなどの働き方の選択肢を提供し、働く環境の柔軟性を高めることで、若者たちのモチベーションや生産性を向上させることができます。

③成長機会の提供: 若者たちは成長に意欲を持っており、スキルや知識を磨きたいと考えています。経営者は継続的な学習プログラムやキャリア開発の機会を提供し、若者たちの成長を支援することが重要です。また、フィードバックやメンタリングなどのサポートも積極的に行いましょう。

④多様性と包摂: 若者たちは多様なバックグラウンドや意見を持っています。経営者は多様性を尊重し、包摂的な組織文化を築くことで、若者たちが自身のアイデンティティを尊重されながら活躍できる場を提供しましょう。

若者たちは経営において新たな展望やイノベーションをもたらす重要な存在です。彼らの才能と情熱を最大限に引き出し、若者たちは経営において新たな展望やイノベーションをもたらす重要な存在です。彼らの才能と情熱を最大限に引き出し、企業の成長と発展に活かすことが経営者の役割です。

この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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