ぼくは古典を読み続ける~珠玉の5冊を堪能する(出口治明)の書評

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ぼくは古典を読み続ける~珠玉の5冊を堪能する
出口治明
光文社

本書の要約

出口治明氏は、古典を読むことによって以下の3つのメリットが得られると述べています。まず、古典を読むことで世界をより深く理解することができます。また、古典の世界に浸ることで楽しく充実した人生を送ることができるとしています。さらに、古典は世界中で読まれており、広い視野を持てるようになります。

古典から得られる3つのメリット

古典を読めば、世界がわかる。人間が過去に残してきた記録をしっかり読めば、世界で起きているいろんなことが理解できるというのが、古典を読む一番大きな理由です(出口治明)

立命館アジア太平洋大学(APU)の学長の出口治明氏は古典を読むことで、以下の3つのメリットを得られると述べています。
①世界がわかる。
②楽しい人生になる。
③古典は世界中で読まれています。

①世界がわかる。
未来において何が起こるかは予測できません。自然災害がいつ、どのような形で発生するかは、専門家ですら予知することができません。ただ、我々はそうした事態に備えることができます。これまでに生じた災害について研究し、そのとき生き残った人々がどのような行動を取ったかを知っておくことで、実際に災害が発生したときに生き残る可能性が高くなるのです。

これが古典を学ぶ意義の第一歩です。過去の人々が行った行動や思考を学ぶことで、今日の我々が役立てることができます。人間は過去の過ちを繰り返すことがあるため、過去を学ぶということは今後の未来をも生き延びるための必須条件です。

古典は、何百年、何千年も前に書かれたものですが、今もなお私たちに多くのことを教えてくれます。古典を読むことで、私たちは、人間の心の奥底にある普遍的な真理に触れることができます。また、古典を読むことで、私たちは、さまざまな時代や文化を学ぶことができます。古典を読むことで、私たちは、世界をより広く、深く理解することができます。

②楽しい人生になる。
人生は楽しいものですが、そのためには、良い材料を集めることが必要です。食事のように、人生やキャリアを築く上で、いい材料とは「知識」であることは間違いありません。

フランシス・ベーコンが言ったように、「知識は力です」。 しかし、良い人生を送るためには、単に知識を持っているだけでは不十分です。深い思考力も必要です。AI時代においては、人間が代替できない役割を果たすためには、深い思考力が求められます。

古典を読むことは、知識だけでなく、深い思考力を養うための重要な方法です。古典には、哲学的な深みや多面的な視点が含まれているため、古典を読むことで、自分自身の見識を広げ、深い思考力を養うことができます。古典を読みながら、歴史上の人物と対話しながら、思考能力を身につけることで、AIに代替されない人材になることができます。

③古典は世界中で読まれています。

古典は世界中で読まれています。つまりグローバルな世界における共通テキストになる。英語ができなくても、『種の起源』を愛読書にしている人とは、きっとコミュニケーションできるでしょう。ソクラテスやプラトンも共通の話題になります。人間のコミュニケーションは、シンプルに言えば、共通項の数で決まるんです。

世の中で最も一般的で広く共有されている話題は、古典であると著者は言います。古典を読むことで他者との関係を構築することができます。

古典とは、私たちの人生について、重要かつ必要不可欠な要素です。古典を読むことで、私たちは人間、世界、そして自己をより深く解釈することが可能になります。

出口氏は本書において、『種の起源』、『ソクラテスの弁明』、『地底旅行』、『市民政府論』および『歎異抄』の5冊を扱い、我々が得られる知見を緻密かつ明確に解説しています。仏教の歴史と親鸞の活躍を語った歎異抄の紹介も面白かったのですが、今日はダーウィンの「種の起源」から経営者が学べることを書きたいと思います。

ダーウィンの進化論から経営者が学べること

ダーウィンの進化論を理解していれば、いいものが売れるのではなく、売れたものがいいものだとわかります。テクノロジーはどんどん進化し、人々の意識や社会の風習も変わっていくのです。だけどどう変わるのかは予測できません。生き延びるためには、目の前で起きている変化に適応するほかないのです。160年も前に書かれたダーウィンの進化論は現代のビジネスにも生かせます。だからぼくは、古典を読み続けるのです。

ダーウィンの進化論は、生物種が環境の変化に対応して生き残り、繁栄する過程を示しています。この進化の理論は、企業活動にも適応可能で、現代のビジネス環境での生存競争を理解するための有用なフレームワークを提供します。 時代の変化が激しくなり、ビジネスランドスケープは日々変化しています。

AIやロボティクスなどの新しいテクノロジーが現れ、競合他社が市場に参入し、消費者の需要が変わるといった状況に、企業は順応していかなければなりません。このような変化に対応できない企業は、市場での生存を保証できません。

経営者はダーウィンの進化論から、変化への適応力の重要性を学ぶことができます。ダーウィンは、「生き残る種は最も強いものでも、最も知的なものでもなく、変化に最も適応したものである」と述べています。この進化論をビジネスに当てはめると、市場環境の変化に適応できる企業が生き残り、成長することができることを意味します。

ビジネスにおいて、変化を恐れずに新しい挑戦を受け入れる姿勢も非常に重要です。例えば、デジタル化が進んでいる現代においては、AIやロボティクスなど、従来のビジネスモデルに挑戦する新しいビジネスモデルが生まれています。これに対応できない企業は市場で敗退してしまう可能性が高いです。

変化への適応には、新しい情報へのアンテナを高く保つことが必要です。日々変化する市場環境に対応するためには、情報収集能力が求められます。また、組織が変化に対応可能な構造を持つことも重要です。組織の中で、情報共有や意見交換がスムーズに行われ、意思決定が迅速に行われる環境を整備することが必要です。

ビジネスにおける成功は、売れた物が良い物であることを示唆しています。自社の商品やサービスが市場で成功するためには、顧客ニーズの変化に常にアンテナを張り、製品やサービスの改善を積極的に行うことが必要です。ダーウィンの進化論から得られる洞察を活用し、適応能力を持つ組織を構築することが、ビジネス成功の鍵となるでしょう。

変化と適応がビジネス成功の鍵となる事を、GAFAMやテスラが証明しています。アップル、グーグル、アマゾンなどの企業は、常に新しい技術を導入し、変化に対応してきました。その結果、彼らは世界的な企業へと成長してきました。

一方、変化に適応できなかった企業も存在します。コダックや東芝などは、技術や市場の変化に対応できず、その結果、衰退を余儀なくされました。

これらの事例から、経営者はダーウィンの進化論の中心的な教え、すなわち「適者生存」の原則を深く理解し、それを経営戦略に反映させるこた必要性が明らかになります。企業がその環境を理解し、市場の変動に対応できる戦略を採用することで、新しいビジネスチャンスを掴むことができます。それは、新製品の開発、新しい市場への参入、あるいはオペレーションの最適化といった形で表れるでしょう。

ダーウィンが生きた時代は、科学技術が進歩したことから、市民の「知りたい」という欲望が強くなったんです。それまではずっと信仰が大事で、神様の決めたことに従っていたので、人間の好奇心は抑えられていました。ところが人間の力、つまり科学の力で何かが変わるということを経験すると、もっと探ろうとなります。

ダーウィンの時代には、科学技術の進歩と知識欲の高まりが人々に大きな影響を与えました。以前は人々は宗教に基づいた生活を送っていましたが、科学の力が発展することで好奇心が芽生えるようになりました。 この好奇心は、経営者としても重要な要素です。私たちは変化に対応するために将来を予測する必要性を感じるようになりました。

この視点は、ダーウィンの進化論からも学び取れます。生物は進化し適応するために、経験に基づく反応だけでなく、自ら環境を形成する必要があります。同じように、ビジネスの世界でも、企業は市場や業界の変化を先取りし、自社のビジネスを再構築する必要があります。

起業家として、私たちはダーウィンの時代と同様に、科学技術の進歩や社会の変化に対して好奇心を抱くべきです。常に新たな知識を追求し、環境の変化を見極める能力を持つことが成功の鍵となります。ビジネスの世界では、先を見越したアプローチや革新的な発想が求められます。自社の強みと環境のニーズを組み合わせ、自主的に市場を形成し、競争優位性を築くことが重要です。

ぼくがそうだったように、人間は、何が起こるかわからないということをつい忘れます。何が起こるかわからないということは、生き残るのは、目の前で起きていることに適応できたものだけだということ。だから思いついたことを全部やってみて、学生が喜んで、ワクワク、ドキドキしてくれたものを続ければいいんです。ダーウィンの考え方は、あらゆるビジネス、日常生活に役に立つことがわかっていただけるでしょうか。いくらAIが進化したところで、人間も生物ですから、ダーウィンの進化論は、この先もずっと役に立ちます。

人間も生物であるため、進化論はこれからも有効な理論として適用されると出口氏は指摘します。進化論は、生物が生き残るために必要な要素である「運」と「適応」が重要であることを明らかにしているのです。

運については、社会的な成功における「運」という概念も存在しますが、ダーウィンは生物学的な意味での運に焦点をあてました。一方、「適応」とは、環境に適応することができる生物が生き残り、適応できない生物が淘汰されるという考え方です。この適応力は、現代社会においても非常に重要なスキルとなっています。変化に適応できないものは生き残れないということは歴史が実証しているのですから、時代の変化に敏感になるべきです。

未来の出来事は予測できないと考えると、広い視野を持つことと自己管理が重要な要素となります。何が起こるかわからない状況でも対応できるよう、心身の健康管理をしっかりと行い、いつでもアクションを起こせるようにすべきです。

ビジネスの世界においても、変化に適応し、生き残る力を持つことが求められます。ダーウィンの進化論は、これからも社会において重要な考え方として活用され続けます。進化論という古典から、私たちは多くのことを学べます。

この記事を書いた人
徳本

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数
iU 情報経営イノベーション専門職大学 特任教授 

■著書
「最強Appleフレームワーク」(時事通信)
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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