パートナーとのWin-Winの関係が商売繁盛の秘訣。倉本長治の商人学の書評

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店は客のためにあり 店員とともに栄え 店主とともに滅びる――倉本長治の商人学
笹井清範, 柳井正
プレジデント社

店は客のためにありの要約

倉本長治の教えは、商人としての真の姿勢や思考を私たちに示しています。それは、お客様だけでなく、取引先や従業員とも誠実に関わり、共に利益を追求することで、持続的な成功を目指すというものです。この考え方を現代のビジネスに適用することで、より強固な信頼関係を築き、継続的な成長を達成することが可能となるでしょう。

パートナーとのWin-Winの関係が商売繁盛の秘訣

仕入れるときに威張って買うから、売るときに頭を下げなければならない。(倉本長治)

「実の商人は先も立ち、我も立つことを思うなり」という石田梅岩の言葉は、商売の本質を示しています。彼の言う「先も立ち、我も立つ」とは、商いをする際には自分だけでなく、相手も満足させることが大切であるという意味です。これは、単に利益を追求するだけでなく、相手の立場や利益も考慮し、双方が満足する取引を目指すべきだという考え方を示しています。

同様に、近江商人の「三方よし」の考え方も、商いの原点を示しています。これは、商いをする際には、買い手、売り手、そして世間全体の三者が共に利益を得るような取引を心掛けるべきだという考え方です。この考え方は、単なる取引以上の価値を持ち、長期的な信頼関係の構築や、持続可能なビジネスの基盤となるものです。

倉本長治は、商いの中での関係性の重要性を強調しています。彼の考えによれば、お客様だけでなく、仕入れ先や取引先との関係も非常に大切であり、それらの関係を築き上げることが商いの成功の鍵となるのです。

彼の「仕入れるときに威張って買うから、売るときに頭を下げなければならない」という言葉は、ビジネスにおいて謙虚さやお客様の大切さを教えてくれます。自分の優位性や利益追求だけでなく、相手やお客様との関係性を大切にし、共に成長していくことが重要です。仕入れ先や取引先との良好な関係は、安定した商品の供給や情報の共有、信頼関係の構築など、ビジネスの多くの面での利点をもたらします。

また、倉本の考え方は、単に短期的な利益を追求するのではなく、長期的な視点でのビジネスの発展を重視しています。これは、取引先や仕入れ先との関係を大切にし、相互の利益を追求することで、持続的なビジネスの成長を目指すという考え方に基づいています。

現代のビジネス環境でも、このような考え方は非常に有効であり、多くの企業や経営者が取り入れています。特に、グローバル化が進む中での取引や、様々な業界での競争が激化する中で、相手との信頼関係の構築や長期的な視点でのビジネスの展開は、企業の成功の鍵となるでしょう。バリューチェーンの構築にはパートナーとのWin-Winの姿勢が欠かせません。

倉本の教えは、私たちに、真の商人としての姿勢や考え方を示してくれます。それは、相手を尊重し、相互の利益を追求することで、持続的な成功を目指すというものです。この教えを学び、現代のビジネスに取り入れることで、より良い商いや関係性を築くことが重要なのです。

従業員の姿勢が顧客体験を高める理由

店員は店主の分身である。

倉本長治とサム・ウォルトンは、異なる時代と地域で活躍した二人の偉大な商人ですが、彼らの考える経営哲学には共通点が多く見られます。特に、従業員を大切にするという考え方は、2人の経営の基軸になっています。 倉本は「店員は店主の分身である」と説き、従業員との絆の大切さを強調しています。彼の言葉には、従業員をただの労働力としてではなく、店の一部として、そして家族のような存在として大切にするという思いが込められています。

また、彼は「人を育てるには何の秘訣もいらない」とも語っており、人材育成の基本は愛情と理解にあるとの考えを示しています。

一方、サム・ウォルトンは「本当によく知っているのは現場の従業員だけである」と語り、従業員の声を大切にすることの重要性を強調しています。彼の「サムの10ヵ条」には、従業員に関する教えが多く含まれており、その中でも「従業員とともに喜び、ともに泣けることが繁盛の王道」という言葉は、従業員との深い絆の大切さを示しています。

「サムの10ヵ条」
・自分の仕事に夢中になろう
・利益をパートナーと分かち合おう
・ パートナーがやる気を出すようにしよう
・ できるかぎりすべての情報をパートナーと分かち合おう
・ よいと思ったら惜しみない賞賛を送ろう
・ 成功を喜び、失敗の中にユーモアを見出そう
・ すべての人の話を聞こう
・ お客さまの期待を超えよう
・競争相手よりうまく経費をコントロールしよう
・流れに逆らって泳ごう

現代のビジネス界でも、従業員を大切にすることの重要性は変わりません。従業員は企業の最も大切な資産であり、彼らの満足と成長が企業の成長に直結します。

 売る身になって買うお客様はいないから、買う身になって売らなければならない。

人の心を置いていました。商いとは、単に商品やサービスを提供するだけでなく、相手の心に寄り添い、その幸福を追求する営みであると彼は説きました。

「鳥の目と虫の目」の比喩は、商人が持つべき視点を示しています。鳥の目は広い視野で物事を俯瞰し、全体像を捉える視点を示しています。一方、虫の目は細部に焦点を当て、相手の心に深く寄り添う視点を示しています。この二つの視点を併せ持つことで、真の商人はお客様の本当のニーズや願望を理解し、それに応えることができるのです。

また、倉本は「店とは、そこで働く人そのもの」と語り、店の魅力や価値はそこで働く人々によって形成されるとの考えを示しています。心のあたたかい店、心の安らぐ店、心の明るくなる店…これらの店に共通するのは、そこで働く人々の心の持ちようです。お客様が店を訪れる理由は、商品やサービスだけでなく、そこでの人間関係や心の交流にもあるのです。

商いの本質は、利益を追求するだけでなく、社会に幸福をもたらすことにあります。

 店は幸福を育む樹だ。

商いの真髄は、単に商品やサービスを提供するだけではありません。それは、関わるすべての人々に幸福をもたらす営みであり、その中心には「人」が存在します。店主、従業員、お客様、取引先…すべての人々が互いに信頼し合い、感謝の気持ちを持つことで、商いは真の価値を持ちます。

お客様の持つさまざまな「不」、つまり不満や不快、不便などを解消することが私たちの使命です。それを解消し、お客様に安心や信頼、快適さを提供することで、真の価値が生まれるのです。そして、その価値を提供することで、私たちはお客様から「ありがとう」という言葉をもらい、真の利益を得ることができます。

不景気の時代でも、お客様の真のニーズに応えることができれば、商いは繁盛します。それは、商いが単に商品やサービスを提供するだけでなく、お客様との深い絆を築く営みであるからです。商いは、相思相愛の関係を築くことが最も重要であり、その中で互いに感謝の気持ちを持つことが大切です。

倉本は、商いの中に「やりがい」を見出していました。それは、知識や技術、勇気や忍耐を養い、真の価値を提供することにあります。また、信用というお金では測れない価値を大切にし、お客様に感動を提供することが、商いの本来の役割であると説いています。

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