「AIクソ上司」の脅威 2030年、日本企業の序列がひっくり返る
鈴木貴博
PHP出版
「AIクソ上司」の脅威 (鈴木貴博)の要約
2030年にはAIの進化により、効率性とコスト削減を重視する超少数精鋭の新勢力企業と、既存の大企業が争う2つの異なる世界があると著者は予測しています。新勢力は従来の企業を技術面で圧倒し、経営形態を超少数経営へと進化させる可能性があります。一方、既存の大企業は新技術の進化に対して法的な障壁などを設けて抵抗し、日本の業界がガラバゴス化する可能性があります。
AIクソ上司があなたの働き方を阻害する?
2020年代後半には〝AIクソ上司〟と呼ばれる人間たちがこの社会に大量に出現するでしょう。(鈴木貴博)
2030年には、AIが私たちの働き方を大きく変える、多くの仕事がなくなると言われています。経営戦略コンサルタントの鈴木貴博氏は、実際にはAIではなく、私たちの行く手を阻むのは「あなたの上司」だと主張しています。
テクノロジーの発展によって、私たちの仕事の多くは自動化される可能性があります。AIによって、繰り返しの作業やルーチン業務は効率的に処理され、時間と労力を節約することができます。
しかし、一方で、上司や組織の文化や制度が変わらない限り、働き方の変革は難しいでしょう。 現在の多くの組織では、ヒエラルキー構造が存在し、上司が従業員の業務を管理しています。上司は従業員の成果を評価し、報酬や昇進の機会を与える権限を持っています。しかし、このような体制では、従業員が自らのアイデアやスキルを活かすことが難しくなります。
その上司がAIを使って、パワーアップする未来が近づいていると鈴木氏は言います。
生成AIが登場すると、部下よりも上司の方がよりパワーアップします。ビジネスで必要な洞察力とは、ビジネス知識に裏付けられた分析力や予測力、判断力、ビジネスモデルの構想力、技術や業界に関する考察力などの総称です。そう捉えると実は、秀才レベルの洞察力は生成AIが学習できるアイテムばかりだということに気づかされます。つまり、統率力を強みとする上司にとって、AIアシスタントは強大なパワードスーツになりえるのです。
AIの発展によって、文系のビジネスエグゼクティブは自分の弱点である論理的思考や分析思考といった理系の能力を補うことができるようになります。
一方で、彼らは人を動かすコミュニケーション力ではAIツールよりも自身の方が優れていることを自覚しています。 このような限界からわかることは、未来において人工知能が人類を支配するのではなく、人間が人類を支配するということです。AIは私たちの仕事を効率化し、生活を便利にする一方で、人間の経験や感性、倫理的な判断力はAIが持ち得ない特徴です。
2030年の働き方の未来予測
凡庸な上司がAIの力でパワーアップするぐらいですから、元から優れていた上司や経営者たちは、AIの力でそれ以上にパワーアップします。以前よりも、より即断即決できるようになることで、少数経営企業から超少数経営企業へと生まれ変わります。
2030年の働き方は、生成AIの進化によって、2つの世界を著者は提示します。一方では、AIを駆使した超少数精鋭の新勢力企業が、その効率性、コスト削減、そしてスピードで従来の企業を技術面で圧倒するでしょう。これにより、従来の経営形態が少数経営からさらに超少数経営へと進化する可能性があります。
一方で、旧来の大企業などの既存勢力は、この新勢力に対して抵抗を試みます。これは、法律の改正や様々な障害を設けることで新しい技術の進化を妨げる形での対応が考えられます。業界団体がウーバーのような新興勢力の進出を拒むことが今後も続くことで、日本はガラバゴス化していきます。
このような状況下で、AIを用いた経営者や上司がさらに強力になる可能性があり、この進化を巡る戦いを著者は「イーロン・マスク軍団対AIクソ上司軍団によるラスボス同士の最終決戦」に例えます。これは、AIの発展がもたらす社会的な分断や競争を象徴するものとなるでしょう。
「イーロン・マスク軍団」という言葉は、世界中で台頭するであろう100社以上の超少数精鋭ユニコーン企業の、革新的なトップたちを象徴する代名詞です。これらの企業は、それぞれの業界において既存の大企業との対決構図を形成し、最終戦争のような競争の未来へと突入していくことになるのです。
一方の世界では、AIクソ上司軍団によって、社会は現在と大きく変わらない状態で運営され、イノベーションは起こりにくい状況が続きます。規制が強まることで、ブルシットジョブが増えていくため、ホワイトカラーの仕事は残ります。大企業は少ない利益をあげますが、長期的には衰退を余儀なくされます。
もう一方の世界では、技術と経済の新勢力が大きな活躍の場を与えられた別世界が展開されます。この世界では、新たな付加価値を生み出す無数のユニコーン企業が私たちの生活を根本から変えることになります。この変革は、超少数精鋭企業を率いる無数のイーロン・マスクのようなハードワーカーによってもたらさられると言うのです。
著者のデータや経験に基づいた未来予測は興味深く、考え方に幅を与えてくれます。著者の予測を鵜呑みにするのではなく、自分の頭でしっかりと考えることも必要です。
AIが急速に進化する現代において、AIをいかに活用し、自己の価値を高めるための行動を起こすべきか、という点が特に重要と思われます。AIの進化は止められないので、変化に適応すると同時に自分のパーパスを明らかにし、働き方を選択する必要があります。
AIクソ上司のもとで働くより、AIを使って自分自身のスキルや価値を高めることを選択することが、今後のキャリア形成において欠かせなくなりそうです。
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