直観脳 脳科学がつきとめた「ひらめき」「判断力」の強化法 (岩立康男)の書評

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直観脳 脳科学がつきとめた「ひらめき」「判断力」の強化法
岩立康男
朝日新聞出版社

直観脳 (岩立康男)の要約

直観は無意識に蓄積された記憶や経験に基づいて形成され、しばしば的確な判断を下すための強力なツールとなります。直観を磨くためには過去の経験や知識を定期的に振り返り、再評価することが重要です。このような継続的な自己反省を通じて、より豊かで正確な直観が育まれ、精度の高い意思決定が可能になります。

決断力は直感を鍛えることが重要な理由。

「直観」とは、脳の広い範囲に蓄えられた記憶をもとにしたものであり、論理的思考を包含し、そのはるか上を行く脳の働きと言ってもいいものだ。 (岩立康男)

私たちは日々の選択において、「報酬」と「苦労・リスク」を天秤にかけて行動しています。報酬とは、物質的・経済的なものだけでなく、承認欲求の充足や他人からの感謝、自身の好奇心の満足など、多岐にわたります。

最近の研究で、長期的かつ社会的な視点からの「良い意思決定」を行う際には、前頭葉から後頭葉にかけての脳の広範囲が使用されていることが明らかになりました。特に、前頭前野眼窩面(前頭前野の底面)と帯状回後部が、このような意思決定において重要な役割を果たしています。実際、広範囲の脳を活用する人は経済的な報酬を最大化する能力も高いとされています。

意思決定において、個々の記憶や経験が大きな役割を果たします。目の前の情報を論理的に分析し、過去の記憶と照らし合わせて直観に基づいて判断することが求められます。私たちのほとんどの記憶は無意識の中にあり、これらが直観として瞬時に結びつく瞬間が、優れた意思決定や創造性につながります。

この直観は、過去の経験や学びを踏まえた上で自然に生まれるものであり、論理的思考と相互補完的な関係にあります。 効果的な直観と賢明な意思決定を行うためには、脳全体を活用することが不可欠です。左脳と右脳、意識と無意識が連携し、情報を総合的に判断することで、より良い結果を生み出すことが可能です。

直観の力を信じ、過去の経験を生かしながら、未知の状況にも臨機応変に対応することが、現代の複雑なビジネス環境で求められるリーダーシップの一環と言えるでしょう。

私たちの意思決定プロセスは、脳内の広範囲にわたる意味記憶の活用に依存しています。特に、前頭前野はこのプロセスで中心的な役割を果たし、長い神経線維を通じて他の多くの脳部位と連携しています。この脳領域は、未来の報酬とそれに伴うリスクを天秤にかけながら意思決定を行う「ハブ空港」のような存在です。

前頭前野は複雑な行動計画や未来予測、衝動の抑制など、高度な認知機能を担っており、人間の行動や人格に大きな影響を与えます。 意思決定においては、無意識の記憶をどれだけ活用できるかが鍵となります。前頭前野の底面部分は、私たちの「好き」という感情を形成し、近くの側坐核は「欲しい」と感じさせる部位です。これらの領域が連動し、喜びや欲求を形成しています。

意思決定の際には、目の前のデータだけでなく、脳に蓄積されたすべての記憶にアクセスし、それらを活用することが求められます。脳の全域を使い、記憶を統合的に活用することで、リスクを最小限に抑え、報酬を最大限に得られる「良い意思決定」を実現します。反対に、脳の特定の部分だけに依存すると、不安定な「悪い意思決定」を招くことになります。

例えば、大きな負債を抱えてさらにリスクを負うようなギャンブルは、短期的な視点からの判断であり、長期的な視点での良い意思決定とは言えません。全体の記憶や経験を総合的に考慮し、脳全体を活用することが重要です。

直観力を高めるために記憶のネットワークを強化しよう!

脳を広く使っているということは、より多くの意味記憶にアクセスしていることの現れでもある。また同時に、目の前の多くのデータを公平に評価することにつながっている。記憶は過去のものであり、データも過去のものであるが、それを目にした時には現在のインプットとなる。それによって過去の記憶を補正して、より確かな未来予想に役立てることができるわけだ。

脳の中では、無意識のうちに意味記憶のつなぎ換えと試行錯誤が何度も行われていると考えられます。無意識の中での数え切れないほどの失敗を繰り返した後に、「これだ」という新しい結びつきがひらめくのです。この時、最適なつながり方をした記憶のネットワークが「直観」として我々の意識下に現れます。

この記憶のネットワークを豊かにするための重要なポイントは、「喜びを感じるかどうか」です。喜びを感じることは、好奇心や創造力を刺激し、さらにそれが新たな学びや発見につながります。自分が心から楽しいと感じる活動が見つかった場合、積極的にその活動を取り入れることがおすすめです。

好きな食べ物を食べたり、好きな音楽を聴いたり、趣味や運動に時間を使うようにしましょう。家族や友人とのコミュニケーションも効果的だと言います。

五感からの知覚刺激が豊富に入ってくることは、脳の多くの部位が同時に活動する機会を増やします。これによって、分散系の長い神経線維が活動を促進し、脳の複数部位が同時に発火するチャンスが増えます。結果として、記憶の点同士がつながる可能性が高まります。

日常生活で多様な感覚的経験を積極的に取り入れることが、記憶と思考の豊かなつながりを促すことにつながるのです。このような経験が積み重なることで、記憶のネットワークはさらに充実し、豊かな思考やアイデアが生まれやすくなります。自分にとっての「楽しい」を見つけ、それを日常に取り入れることが、記憶と創造性を育てる鍵となるでしょう。

直観は根拠のない気分によってたまたま生じるものではなく、その人の生きてきた人生そのものを反映したものなのです。

直観を形成する素材が過去の記憶であるならば、より良い直観を生み出すためには、記憶のブラッシュアップが重要です。これは、過去の経験や学んだ知識を定期的に思い出し、再評価することで、より豊かで正確な直観を育てることができるということです。この過程を通じて、私たちの直観は磨かれ、より精度の高い意思決定が可能となります。

直観は、個々の人間が培ってきた経験や知識が集約されたものであり、その形成には多様な要素が関わっています。例えば、教育環境や職業経験、文化的背景などが直観に影響を与えることがあります。したがって、異なるバックグラウンドを持つ人々が同じ状況に直面しても、直観の形成過程は異なることが考えられます。

しかし、直観は常に進化しており、新たな情報や経験を取り入れることで、より洗練されたものになる可能性があります。このように、直観は個々の人間の独自性や多様性を反映した重要な心のメカニズムであると言えます。

日常生活の中で常に「問い」を持ち、その答えを経験から探っていく習慣を身につけることが、予期せぬ直観へとつながる可能性があります。このプロセスでは、心の中で様々な疑問を持ち続けることが重要です。日々の経験から得た知見を積極的に利用し、新たな発見や洞察に繋げていくことで、新しいアイデアや解決策が浮かぶことがあります。直観力を高めるためには、常に自らに問いかける習慣を身につけることが欠かせません。

集中している時は、それに関わる脳部位だけをまさに「集中的に」使っており、効率的に脳を広く使うことを妨げてしまうからだ。

集中力が高まると、脳はその活動を行う脳部位に集中して働きます。この状態では、他の部位を使うことが抑制されるため、脳全体を効率的に活用することが難しくなります。

直観を得るためには、意識の「集中」ではなく「分散」が必要です。直観とは、日常の何気ない瞬間にふと浮かぶアイデアや答えであり、この直観を得るためには意識を広範囲にわたって活用することが重要です。脳の分散系は、集中することによって特定の領域だけが活性化されるのではなく、脳全体を均等に活性化させるシステムです。

特定の作業に集中すると、その部分の脳が活性化され、他の部分は抑制される傾向があります。これが、「脳を広く使うには集中しすぎない方が良い」という考えにつながります。特に、散歩中や入浴中などリラックスした状態では、脳の分散系が活動し、ぼーっと景色を眺めているときなどに良いアイデアが浮かびやすくなります。

このことから、日常生活で意識的に意識を分散させることが、創造性を引き出し脳を全体的に活性化させる鍵となります。集中とリラックスをバランスよく組み合わせることで、効率と創造性の両方が高まることが期待されます。 また、意思決定においては、論理的思考と直観のバランスを取ることで、的確な判断が行えます。

脳全体のリソースを活用することが成功への道を開くため、過去の記憶や経験を活かしつつ、客観的な情報も適切に分析し、直観にも耳を傾けることで、より賢明な意思決定が可能になります。


この記事を書いた人
徳本

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数
iU 情報経営イノベーション専門職大学 特任教授 

■著書
「最強Appleフレームワーク」(時事通信)
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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