詭弁社会 日本を蝕む”怪物”の正体 (山崎雅弘)の書評

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詭弁社会 日本を蝕む”怪物”の正体
山崎雅弘
祥伝社

詭弁社会 日本を蝕む”怪物”の正体 (山崎雅弘)の要約

日本社会において、政治家の詭弁が常態化し、それに対してメディアが批判しなくなっている状況が見られます。しかし、詭弁が蔓延する社会は、やがて破綻する運命にあると言えます。健全な民主主義を保ち、次世代に希望に満ちた未来を引き継ぐために、今こそ私たち一人一人が声を上げ、行動を起こす時が来ているのです。

日本社会に蔓延する詭弁とは何か?

いま日本の社会で、二匹の怪物がうろついています。一匹は「ウソ」、もう一匹は「詭弁」です。(山崎雅弘)

戦史 ・紛争史研究家の山崎雅弘氏によれば、現代の日本社会には「ウソ」と「詭弁」という二匹の怪物がはびこっていると言います。これらは同じ親から生まれた兄弟のような関係にあり、時に協力し合いながら社会の理性や良識を破壊していきます。

特に政治の中枢にこれらの怪物が侵入すると、建設的な議論が成立しなくなります。最近の国会を見ると、詭弁だらけで、まともな議論が行われなくなっています。驚くべきことにこの怪物たちには、高い地位にある大人たちの態度を幼稚なものへと変えてしまう不思議な力があるのです。

本書では、安倍政権以降の政治家の詭弁の例がいくつも紹介されています。詭弁とは力のあるリーダーたちが、自分の地位を守るための道具です。詭弁によって、政治家たちは社会の中で強い立場を保ち続け、権力を維持し、国民を苦しめる政策を繰り返します。山崎氏は、この詭弁が日本社会で急速に広がっていることに警鐘を鳴らしています。

著者は読者に対し、情報を批判的に吟味する力を養うことの重要性を訴えかけています。詭弁社会という「怪物」の正体を暴き、その影響力から身を守るためには、常に警戒心を持ち、自分の頭で考える習慣が不可欠だと主張しています。 

誰かのウソを見抜くのは比較的簡単ですが、詭弁を見抜くためには、その論が本来あるべき「正しい筋」を頭の中で組み立てる「論理力」が必要とされるからです。 多様なパターンを持つ詭弁の種類と派生形をあらかじめ知っておくことで、うっかり詭弁にだまされる可能性は低くなります。

著者が特に問題視しているのは、政治家や官僚が用いる「お答えを控えさせていただく」という言葉です。この言い方は、丁寧そうに聞こえますが、実際には質問に答えないことを意味しています。このような表現は謙虚な印象を与えるかもしれませんが、実際には相手に対して断る意図があります。

野党や記者などは、「控える」という言葉を聞くと、相手が何かを気遣っていると誤解し、質問をやめてしまいますが、これでは真実は明らかになりません。真相を知るためには、遠慮なく説明を控える理由を尋ねるべきです。

また、安倍元首相らが頻繁に使用していた「丁寧に説明する」という表現も、実際の行動とは異なる印象を与える危険な策略だと著者は指摘します。

この言葉には二つの問題があると言います。まず、法案を先に通過させてから説明するという順序の問題があります。これは民主主義の原則に反するものであり、与党は度々強行採決を行ってきました。

さらに、約束された「丁寧な説明」がその後も実施されないことがあります。時間が経てば忘れ去られ、メディアも徐々に取り上げることをやめていきます。

詭弁が悪用され続けることで、野党の政権批判は「理解不足」と断じられ、政権に都合の良いイメージが浸透する可能性があります。加えて、メディアがこうした言葉をただ報道することで、現実と乖離した権力者の都合の良いイメージが広まる危険性が指摘されています。

山崎氏は、こうした策略が権力者にとって非常に都合の良い手段となっており、社会に重大な影響をもたらしていると警告しています。

政治家に騙されないために必要なこと

政治家は本来、政策上の意思決定とその理由について、主権者である国民に説明する責任(アカウンタビリティ)を負っていますが、第二次安倍政権以降、日本では政権与党が説明責任を果たさないことが常態化し、「アカウンタビリティ」という言葉もメデイアでぱったりと使われなくなりました。

日本の政治風土に根差す「説明責任の空洞化」が、民主主義の根幹を揺るがしています。特に懸念されるのは、重要な政策決定が閣議決定で行われ、国民には事後報告のみが行われるという独裁的な傾向です。本来、民主主義国家においては、政策決定のプロセスに国民の意見を反映させることが不可欠です。

さらに問題なのは、政治家たちが責任回避の手段として巧妙な言い回しを用いていることです。「誤解を与えたのならお詫びする」という表現は、一見謝罪のように見えて、実際には問題の原因を受け手側の理解力不足に転嫁する詭弁です。

また、「全く問題ない」「そのようなご批判は当たらない」といった断定的な答弁は、説明責任を放棄するものです。これらの表現は、政治家が自らの言動の適切さを判断する権限を独占しようとする姿勢の表れであり、本来国民にあるべきその判断権を奪うものです。

このような状況が常態化している背景には、メディアの機能不全も大きく関わっています。本来、報道機関は権力を監視し、政府の説明責任を果たさせる重要な役割を担っています。しかし、現状では政治記者たちが政府の詭弁を見抜けず、批判的な質問を行わないことで、政治家の無責任な発言を許容してしまっています。 健全な民主主義社会を維持するためには、権力者と報道機関の間に適切な緊張関係が必要不可欠です。

しかし、日本社会に根強い「波風を立てない」文化が、この緊張関係の構築を阻害しています。政治家の詭弁を指摘することを避ける傾向は、結果的に政治の透明性を損ない、国民の政治参加意識を低下させることにつながっています。 この状況を改善し、真の民主主義を実現するためには、社会全体で誰弁を見抜く力を養う必要があります。

メディアはもちろんのこと、一般市民も論理的思考力と批判的思考力を磨き、権力者の言葉の裏に潜む真意を読み取る能力を身につけることが求められます。 詭弁を見抜く批判的思考は、単に政治の場面だけでなく、社会の倫理的崩壊を防ぐためにも必要な能力です。

政治家の言葉を鵜呑みにせず、その真意を見極め、適切に批判する力を持つことで、初めて国民は政治家に対して説明責任を果たすよう要求することができます。 民主主義の健全な発展のためには、国民一人ひとりが政治に対する関心と批判的な目を持ち続けることが不可欠です。

政治家の言葉の裏にある真意を読み取り、必要に応じて説明を求めなければ、政治家の思う壺です。政治家の説明が不十分であれば、さらなる説明を要求することで、政治家の暴走を止められます。

詭弁との戦いが重要な理由

詭弁とは「強い立場の者」が今後も永続的に「強い立場」で居続けることを既成事実化する、非常に強力な権力システムの「武器」として機能するのです。

近年、日本の政治的言説において詭弁が常態化し、これが民主主義の根幹を揺らがす深刻な問題として注目を集めています。山崎氏の指摘によれば、特に安倍政権以降、この傾向が顕著になってきました。

詭弁は単なる言葉遊びではなく、権力者が自らの立場を永続的に維持するための強力な武器として機能しており、その影響は社会全体に及んでいます。 人間の思考は本来、主観と客観のバランスの上に成り立っています。しかし、詭弁はこの繊細なバランスを崩し、自己中心的な思考へと人々を導きます。

歴史を振り返ると、1937年から1945年の大日本帝国時代が、この思考の歪みがもたらす悲惨な結果の典型例として挙げられます。当時、言葉や論理を軽視し、現実と真摯に向き合わないリーダーたちが戦争を指導した結果、多くの人々に不幸と破壊をもたらしました。 懸念すべきは、現代の日本社会が当時と似た傾向を示していることです。

長年にわたる先生に対する服従教育の影響で、日本の人々は上位者に対して過度に従順になっています。政府の問題ある政策に対しても、多くの国民は声を上げることなく黙って受け入れる傾向があります。この態度は、健全な民主主義社会の発展を阻害する大きな要因となっています。

さらに、権力者の責任感の欠如も詭弁を蔓延させる一因となっています。これは新たな問題を生み出す悪循環を引き起こし、社会全体の信頼性を低下させています。ウソや詭弁は事実そのものを変えることはできませんが、それらを大量に流布することで、多くの人々の目から事実を隠蔽する効果があります。見えなくなった事実は、たとえ存在していても、社会的には無いも同然となってしまうのです。

この危機的状況を改善するためには、ウソと詭弁という二つの怪物と真剣に向き合い、戦う必要があります。現在の大人世代がこの戦いから逃げ続ければ、次世代の未来はさらに厳しいものになることが予想されます。私たちには今、勇気と覚悟を持ってこの問題に立ち向かう責任があります。

世の中を良くするためには、詭弁を見抜く力を身につけ、批判的思考を育むことが不可欠です。それがなければ、政治家や官僚によって操作されてしまいます。そして同時に、メディアや教育機関も、この問題についての認識を高め、社会全体で詭弁に対抗する土壌を築くことが必要とされています。

健全な民主主義社会を構築するためには、権力者の言動をいつも監視し、必要に応じて批判する勇気が欠かせません。この道のりは簡単ではありませんが、私たち一人一人が意識を変え、行動を起こすことで、より透明性の高い、誠実な社会を実現することが可能です。

最近では政治報道も大幅に減少し、その質も劣化し、メディアが権力者に迎合することが当たり前になっています。報道機関が政治家に忖度する中で、個々人がSNSなどで声を上げなければ、政治家や官僚、そして一部の企業だけが利を得る不公正な社会が定着してしまいます。

私たちは過去の歴史から学び、同じ過ちを繰り返さないよう努める必要があります。詭弁が広まる社会は、最終的には破綻する運命にあると言えます。健全な民主主義を保ち、次世代に希望ある未来を引き継ぐために、今こそ私たち一人一人が声を上げ、行動を起こす時期なのです。

戦前に回帰させないためにも、これ以上政治家の暴走を許さないようにしたいものです。現代の日本が生きづらい世の中になりつつあると考え、批判的精神で詭弁を許さないようにすることが一人一人の日本人に求められています。

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この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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