トップコンサルタントの「戦略的」勉強法(横山信弘)の書評

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トップコンサルタントの「戦略的」勉強法
横山信弘
翔泳社

トップコンサルタントの「戦略的」勉強法(横山信弘)の要約

勉強は、知識やスキルを身につけるための手段であり、目的を達成して初めてその効果が発揮されます。「仕事中勉強法」は、業務をこなしつつ学びの要素を取り入れる方法で、目の前の仕事の質を高めると同時に、将来のキャリアアップにも役立ちます。現在の業務に全力を注ぎながら、新たな知識やスキルを身につけることで、自分の市場価値を高め、会社だけでなく、世の中への貢献度も向上します。

結果をだすための仕事中勉強法とは?

今でも効果的な勉強法を身に付けさえすれば、目の前の仕事のみならず、将来においても安定して成果が出せるビジネスパーソンに生まれ変われるだろう。(横山信弘)

日本のビジネスパーソンにおける勉強不足が指摘されています。総務省統計局の「社会生活基本調査」によると、2016年には社会人の勉強時間は1日平均6分であり、2022年でも13分にとどまっています。この間にわずか7分しか増えていないことは、学び直しの必要性が叫ばれる中でも、日本では十分にその重要性が浸透していない現状を示しています。

「リスキリング」という言葉が注目され始めたのは2020年以降で、世界経済フォーラムで提唱された「リスキリング革命」により、技術革新やビジネス環境の変化に対応するための新たな知識やスキルの習得が、国際的な課題として認識されるようになりました。それにもかかわらず、日本では多くのビジネスパーソンが勉強時間の確保に苦労しており、十分な学びを実現できていない状況です。

この背景にはいくつかの要因が考えられます。長時間労働や業務量の多さによる疲労感から、仕事終わりの時間を勉強に充てる余裕がないという声が多くあげられます。また、勉強の成果が短期間では見えにくいことも問題です。自己投資としての学びの重要性を理解していても、即効性が感じられずに意欲を失うケースもあります。

さらに、社会人向けの学習環境が十分に整っていないことも一因であり、オンライン学習や研修プログラムが増えているとはいえ、日常生活に組み込みやすい形の学び方がまだ不足しています。

しかし、テクノロジーが急速に進化する中では、現状のスキルセットだけでは仕事環境の変化に対応できなくなるリスクがあります。一方で、新たなスキルを習得することでキャリアの選択肢を増やし、雇用の安定を図ることが可能です。デジタルスキルやマネジメント能力は特に需要が高く、これらを学ぶことで、より多様な分野で活躍する道が広がります。

トップコンサルタントとして知られる横山信弘氏は、多忙なビジネスマンこそ「仕事中勉強法」を実践すべきだと提言しています。

自分に与えられた業務をしっかりとこなしつつ、そこに学び(勉強)の要素を取り入れていくという方法だ。 会社に貢献するためはもちろんのこと、将来の自分のためにも仕事をしながらしっかり勉強もするという形となり、一例を挙げると、 企画書を書きながら「ピラミッドストラクチャー」を学ぶ 。

例えば、企画書の作成時に「ピラミッドストラクチャー(結論・根拠・詳細)」という手法を学びながら活用することが仕事中勉強法になります。

この場合、まず「ピラミッドストラクチャー」が紹介されている書籍を「水平読書」によって複数参照し、基本的な知識を身につけます。その後、職場での会議やプレゼンテーションの中でこの手法を実践しながら徐々に習得していくのです。

さらに、プロジェクト進行中にロジックツリーやフェルミ推定、メタ思考などのツールを取り入れることで、業務の課題解決を学びのプロセスに変えることも可能です。

私自身もこれらのフレームワークを活用しており、学習のハードルを下げるだけでなく、業務を効率的に進められっるようになりました。こうした仕事中の勉強法を実践することで、業務を単なる作業として消化するのではなく、自分自身の成長を促す場に変えることができるのです。

業務中に得られるフィードバックを成長の糧として活用することは、日々の仕事をスキル向上の場へと変える重要なポイントです。この取り組みは、特に業種や職種を超えて活用できる「ポータブルスキル」の向上に役立ちます。ポータブルスキルとは、どの分野でも応用可能な普遍的な能力を指します。

その中でも、論理的思考力や仮説立案力、検証力は非常に重要です。 例えば、業務の課題に対して仮説を立て、それを検証するプロセスを繰り返すことで、これらのスキルを磨くことができます。このような取り組みを通じて、物事を俯瞰する視点を持つことが可能となり、全体像を把握しながら問題を解決する力が養われます。

さらに、仕事を通じて養うべきもう一つの重要な能力が「共感力」です。共感力には、大きく分けて「情動的共感」と「認知的共感」の2種類があります。 情動的共感とは、相手の感情を自分の感情として捉える力です。これは、相手の気持ちに寄り添い、「相手の感情を自分のものとして感じる」能力を指します。この力が高いと、相手の気持ちに立つことができ、感情面での繋がりを深めることが可能です。

一方で、認知的共感は、相手の感情を冷静に理解し、分析する力を指します。これは「相手の気持ちがどうしてそうなるのかを知る」能力であり、客観的な視点で状況を把握することを助けます。

仕事を通じて学びを深めるには、業務を単なる作業と捉えず、スキルアップの実践の場として活用する意識が求められます。自分の言葉で説明できるようになれば、学びの効果があったということです。仕事中に学びを積み重ねることで、個人としての価値を高めるだけでなく、キャリア全体をより安定し充実したものにすることが可能です。

勉強はあくまでも手段であり、目的ではない。知識やスキルを身に付けることが目的だ。その目的を果たすまでは勉強の効果が出ていないと覚えよう

著者の提唱する「仕事中勉強法」を実践することで、目の前の仕事にも、将来のキャリアアップにもつながります。

私は、本書で紹介されている多くのフレームワーク活用法を大学で教えていますが、これらのツールを使い倒すことで、学生のビジネス能力やスキルは確実に高まっています。

NLPの8フレームアウトカムを身に着けよう!

「8フレームアウトカム」は、目標達成に向けて必要なステップや要素を体系的に整理できる強力なフレームワークです。この8つの質問は、目標(アウトカム)を具体化し、実現の可能性を高めるために設計されています。それぞれの質問を順番に進めることで、目標達成に向けた計画が自然と明確になります。私もベンチャー企業の経営者にコンサルをするときに使っている鉄板のフレームワークです。

1,あなたのゴール(アウトカム)は何ですか?
最初に、具体的な目標を明確にすることから始めます。ここでのポイントは、目標を可能な限り具体的に、測定可能な形で言語化することです。「成功」といった曖昧な表現ではなく、「○○のプロジェクトを来月までに完了させる」といった形で表現すると良いでしょう。

2,ゴールが手に入ったらどのようにわかりますか?
目標が達成されたことを確認するための基準を設定します。成功の証拠や成果を具体的に定義することで、目標達成の状態をイメージしやすくなります。

3,ゴールはいつ、どこで、誰と手に入れますか?
目標達成の場面や状況を明確にします。この質問を通じて、目標を現実的で実行可能な形に落とし込みます。達成するタイミングや関わる人々について具体的に考えることで、実行計画がさらに練られます。

4,ゴールを手に入れたら、あなたの人間関係や周りの環境はどのように影響を受けますか?
目標達成が自分や周囲に与える影響を想像します。この問いにより、目標達成によるメリットや潜在的なリスクを認識でき、現実的な視点を持つことができます。

5,ゴールを手に入れるために、あなたが既に持っているリソースは?足りないリソースは?
目標達成に必要な要素を整理します。現在のリソース(スキル、経験、人脈など)と不足しているものをリストアップし、達成に向けて必要な準備を明確にします。

6,現在ゴールを手に入れるのを止めているものは何ですか?
障害となっている要因を特定します。この問いを考えることで、目標達成を妨げている具体的な課題や心理的なブロックに気づき、それを克服するための対策を見つけやすくなります。

7,ゴールを手に入れることは、あなたにとってどのような意味がありますか?
目標達成の意義や価値を深く考えます。この問いによって、目標が自身にとってどれほど重要で、なぜ達成したいのかを再確認することで、モチベーションを高めることができます。

8,まず何から始めますか?具体的な行動プランは?
最後に、目標に向けた具体的な第一歩を考えます。この問いは、行動を開始するための実際的な計画を立てるステップです。小さな行動でも良いので、具体的なアクションを設定することが重要です。

このフレームワークは、質問を順番に考えることで、目標達成のプロセスを包括的に整理するだけでなく、行動に結びつける実践的な道筋を提供します。クライアントやチームメンバーとのコーチングに活用するだけでなく、自分自身の目標設定や課題解決にも非常に役立ちます。ぜひ、この8つの質問を繰り返し練習し、実践に取り入れてみてください。

水平読書と垂直読書

「水平読書」とは、同じテーマの本を5~10冊ほど複数並べ、そのテーマの箇所だけ抜き取って読んでいく読書法である。

読書は自己投資として最も価値の高い行為の一つです。本から得られる知識や視点は、人生やキャリアに大きな影響を与えますが、ただ読むだけではその価値を十分に引き出せないこともあります。読書を情報収集にとどめず、知識を深め、視野を広げ、自己成長を実現する方法として、「水平読書」と「垂直読書」があります。

この2つの読書法にはそれぞれ異なる利点があり、効果的に活用することで読書体験の価値を飛躍的に高めることができます。

まず、「水平読書」とは、同じテーマに関する複数の本を並行して読み、それぞれの本からテーマに関連する部分を抜き出して学ぶ方法です。この読書法の大きな特徴は、同じテーマについて複数の視点を取り入れられる点にあります。一冊だけを読む場合、どうしても著者の考えに偏りがちです。

しかし、複数の本を読み比べることで、異なる切り口やアプローチが浮かび上がり、テーマに関する知識をより多角的に掘り下げることができます。例えば、同じ課題に対する異なる意見を分析することで、自分なりの理解を形成する材料となり、単なる情報の羅列ではない深い知識を得られます。

水平読書を実践するには、最初にテーマを明確にすることが重要です。そのテーマに関連する本を5~10冊程度選び、特に重要だと思う箇所を比較しながら読むことで、効率的に知識を深められます。

また、水平読書は知識を広げるだけでなく、著者ごとの主張の違いや共通点を見極めることで、テーマを体系的に理解する力を高めます。この方法は、ビジネススキルの向上や新しい分野の学習など、幅広い場面で効果を発揮します。私も何かを始める際には、水平読書によって、大量に知識をインプットし、自分を強化しています。

「垂直読書」とは、本のテーマとは関係なく、同じ著者の本を連続して読み、その著者の思考パターンを手に入れる読書法のことである。

「垂直読書」は、特定の著者の本をテーマに関係なく連続して読むことで、その著者の思考パターンや価値観を深く理解する方法です。この読書法の最大の魅力は、著者の思考プロセスを追体験できる点にあります。

1冊や2冊では見えなかった著者の信条や視点が、4~5冊と続けて読むうちに浮かび上がり、著者の世界観がより鮮明に理解できるようになります。その結果、著者の考え方が自分の中に染み込み、同じような視点で物事を捉えられるようになるのです。

また、垂直読書を通じて、著者がどのような困難を乗り越えたのか、その過程を学べるのも大きな利点です。例えば、著者が特定の状況でどのように決断を下し、どのように行動したのかを知ることで、自分では経験できない貴重な知見を得ることができます。

特にビジネス書の著者は現実の世界で活躍する人々であり、その成功や失敗の記録は、私たちが日常で直面する課題に対する具体的なヒントを与えてくれます。垂直読書を通じて、著者の思考をなぞることで、自分の視野が広がり、新たな視点を得られるのです。

これら2つのの読書法は、それぞれ異なる利点を持ちながらも、どちらも読書の価値を最大化する方法です。水平読書はテーマに対する多角的な理解を促し、垂直読書は著者の思考を深く追体験することを可能にします。両者をうまく組み合わせることで、単なる情報収集ではない、実践に活かせる知識や洞察を得ることができます。

読書は単なる趣味や情報収集を超え、自分自身を成長させるための最高の投資です。水平読書と垂直読書を活用することで、その価値はさらに高まります。ぜひこれらの方法を試してみてください。読書の持つ無限の可能性が、あなたの人生やキャリアに新たな変化をもたらしてくれます。

最強Appleフレームワーク
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