クラウドファンディングで成功する方法

キックスターターのプロジェクトの7割は資金調達に失敗する。(アルバート=ラズロ・バラバシ)


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優先的選択がクラウドファンディングでは重要!

アルバート=ラズロ・バラバシザ・フォーミュラ 科学が解き明かした「成功の普遍的法則」の中に、キックスターター(クラウドファンディング)で成功する方法が紹介されました。本書の書評はこちらから

クラウドファンディングでの資金調達の確率は3割しかありません。オランダ生まれの実験社会学者アーノウト・ファン・デ・リートは、キックスターターの調査を行いました。ファン・デ・リートはまず、キックスターターでアイデアを公開したばかりのプロジェクトを、200件ランダムに選びました。達成額ゼロのプロジェクトのみを選び、それをふたつのグループに分けました。100件に少額の資金提供を約束し、残りの100件には何もせずに対照群とし、あとは状況を見守ったのです。

その結果、驚くことが起こりました。なんと彼が支援を約束したプロジェクトは、次の支援を引き寄せる可能性が2倍以上に高まったのです。つまり、ファン・デ・リートがランダムに支援を約束したプロジェクトは、支援を約束しなかったプロジェクトよりも、はるかに多くの資金を集めました。

ファン・デ・リートが目撃したのは、私たちの研究室が幅広い分野で繰り返し目撃してきた「成功が成功を生む」という現象だった。言い換えれば、「成功しているように見える者は、パフォーマンスに関係なく、ますます成功を引き寄せる」。その現象を専門的用語で「優先的選択」と呼ぶ。

世の中には、「金持ちはより金持ちに」という現象が存在します。この「マタイ効果(持っている人はさらに与えられて豊かになる)」は、物理学から経済学までの幅広い分野で目撃されてきました。この優先的選択によって、富める者はよりリッチな存在になれるのです。著者のアルバート=ラズロ・バラバシは優先的選択なしには、桁外れの影響力や報酬、知名度は手に入らないと指摘します。

ファン・デ・リートは、ウィキペディアを利用して別の実験を行ないました。ウィキペディアの記事は匿名の共同編集作業です。ウィキペディアの編集者は「バーンスター」と呼ぶ賞を、誰にでも贈ることができます。ファン・デ・リートはまず全編集者のなかから、積極的に活動する上位1パーセントの約2400人の編集者を特定しました。そして、その熱心な”ウィキオタク”のなかからランダムに200人を選んで、ふたつのグループに分けました。両グループのレベルを同じにするために、ウィキペディアに対する貢献度が同等の編集者で構成して、実験を開始したのです。ファン・デ・リートはいっぽうのグループが成功し、もういっぽうのグループとの間に差が現れるように設計しました。最初のグループの編集者全員にバーンスターをひとつずつ贈呈し、第2のグループには何も贈りませんでした。

ファン・デ・リートからバーンスターを受け取ったグループは、バーンスターを受け取らなかったグループと比べて、記事を編集する生産性が60パーセントも上がったのです。バーンスターを受け取ったグループのうちの12人が、その後3ヶ月のあいだに、ほかのウィキユーザーから、新たに1~3つのバーンスターを受け取りました。ファン・デ・リートがバーンスターを贈らなかった第2のグループのうち、新たにバーンスターを受け取った者はふたりしかいませんでした。この実験では、努力と才能を要因とする可能性を排除し、それらのパフォーマンスとは無関係に、報酬が報酬を生むことを実証したのです。ファン・デ・リートは、「成功が成功を生む」というシンプルなルールを明らかにしました。

 

成功が成功を生む!というシンプルなルールを信じよう!

一度賞を受け取った研究者は、次の賞にノミネートされやすくなる。受賞歴は、受賞者本人の自信を生むばかりか、その社会の自信にもつながる。受賞者の真価に対する疑いを打ち消し、次の賞を与える理由を正当化するからだ。「成功の第二の法則」が謳うように、パフォーマンスに上限があって競争者に優劣をつけるのが難しい時には、「受賞しやすさ」といった要因が、成功を掴めるかどうかを分ける。

音楽コンクールでは上位入賞者の実力にはほとんど差がありません。音楽エリザベート王妃国際音楽コンクールの優勝者は、若いうちに知名度が高まり、優勝と知名度というそのふたつによって、音楽家としての成功に弾みがつきました。一度成功すると、優先的選択が働いて成功の連鎖が始まるのです。

コンクールで高い得点を獲得した音楽家は、レコード契約を結びやすいだけでなく、音楽雑誌に取り上げられ、批評家からも高い評価を得やすくなります。最終的な順位を決めるのは、ずばり「運」と審査員の「バイアス」でしかないのですが、優勝者は、優先的選択のおかげで長きにわたって大きな利益を享受できるようになるのです。

どの製品を買うかから、どの運動に署名するかまで、ほとんどの選択の根底には優先的選択が隠れている。ソーシャルメディアで友だちから、請願書に署名してほしいと頼まれた時もそうだ。複数の友だちに頼まれた時には、署名する可能性が高くなる。その請願書に署名するよう4度も5度も頼まれ、たくさんの友だちが署名しているとわかれば、価値のある運動だと考える。きっと重要な運動に違いない。たくさんの友だちにとって重要な請願なのだから。クリックするだけでキャンペーンを立ち上げて署名を集められる。

「チェンジ・ドット・オーグ」というオンライン・プラットフォームでは、地方レベルからグローバルなレベルまで、日常的な問題から緊急の課題まで、これまでに3000万を超える署名運動を支援してきました。署名することで、近所の青少年センターに対する財政支援を要請したり、選挙人団を派遣して公正な選挙の実施を要求したりできます。

世界的な問題や世間を騒がせる事件のキャンペーンでは、数百万の署名を集めることもあるが、ほとんどの場合は少数の署名しか集まりません。ファン・デ・リートはこのサイトで再び実験を行ないました。立ち上がったばかりのキャンペーンを200個選び出して、100個ずつ、ランダムにふたつのグループに分け、いっぽうのキャンペーンにそれぞれ12回ずつ署名したのだです。優先的選択は、イデオロギーにも当てはまりました。

ファン・デ・リートがランダムに支援したキャンペーンは、署名しなかったキャンペーンよりも、その後、署名をより多く集めました。政治的、倫理的な重要性を孕むような”公平性”にまつわる問題の場合にも、”不公平な”メカニズムが働くのです。

最初の段階の見えないひと押しは驚くほど重要な役割を果たし、新しいプロジェクトのその後の成功を左右する。

ファン・デ・リートはキックスタータで改めて実験を行ない、特定のプロジェクトに複数回ランダムに資金提供を約束した場合の影響を確かめました。ファン・デ・リートが支援ボタンを押さなかった場合、プロジエクトの68パーセントがその後、資金を集められませんでした。いっぽう、支援ボタンを押した場合には、74パーセントが続いて支援を得られました。支援ボタンを4回押した場合には、その数字は87パーセントに跳ね上がりました。つまり、支援を約束する回数が増えれば増えるほど、次の支援を引き寄せやすくなるのです。

しかし、ここに落とし穴がありました。支援ボタンを続けて押すと、第三者からの支援が減ってしまうのです。たとえばファン・デ・リートが、そのプロジェクトにとって最初となる資金提供を約束すると、第三者の支援が平均4.3回続きます。しかし、その後、ファン・デ・リートが3回続けて支援ボタンを押すと、第三者による支援の約束は、1回につき平均1.7回に減ってしまいました。金額で見た場合、ファン・デ・リートの最初の出資額は平均して24.52ドルで、第3者から平均191ドルの資金提供を得られました。一方、ファン・デ・リートが3回続けて支援ボタンを押すと、1回につき出資額が89.57ドルに半減してしまったのです。

最初の支援提供の約束は、その後の支援提供の約束よりも、はるかに大きな効果があるのです。何度か続けて支援ボタンを押しても、その後に続く回数と金額は減ってしまうのです。

プロジェクトに最初に支援ボタンを押す人は、ただプロジェクトの目標に出資しているだけではない。優先的選択を始動させ、プロジエクトを成功の軌道へと送り出しているのだ。だからこそ、「最初に評価する」という行為が非常に重要になる。立ち上げたばかりの事業、売れないアーティスト、思ったように増えない読者層、資金調達プロジェクトのどれにとっても、その後の運命を分けるのは最初の評価や承認だ。優先的選択の利益を望む者は、そのことを肝に銘じておいたほうがいい。

ファン・デ・リートが行なったクラウドファンディングの実験も、「成功のためには確かに成功が必要だが、どんな桁外れの成功も、たったひとつの小さな成功から始まる」ことを教えてくれます。人生が不公平なのは、この優先的選択が働くからなのです。

人生を公平なものにするためには、早いうちに才能を認めて評価し、その才能を支援する方法を見つけ出し、成功が雪だるま式に膨らむスイッチを入れなければならないのです。成功とは集団的な現象で、みなが一緒になって成功をつくり出すのです。

まとめ

成功するためには、最初の小さな成功が欠かせません。成功しているように見える者は、パフォーマンスに関係なく、ますます成功を引き寄せます(優先的選択)。この優先的選択によって、桁外れの影響力や報酬、知名度を得られます。キックスターターで資金を得たければ、まずは最初の支援を受け、その支援を広げる必要があります。

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この記事を書いた人
徳本

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数
iU 情報経営イノベーション専門職大学 特任教授 

■著書
「最強Appleフレームワーク」(時事通信)
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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