LIFE SHIFT2(アンドリュー・スコット, リンダ・グラットン)の―100年時代の行動戦略の書評


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LIFE SHIFT2―100年時代の行動戦略
アンドリュー・スコット, リンダ・グラットン
東洋経済新報社

本書の要約

人生100年時代に幸福な人生を送るためには、「物語る力」「探求(学習と変容)」「人間関係を構築する力」の3つの力が欠かせません。現在の自分の行動が将来の自分に返ってくると考え、学びと健康への投資を怠らないようにしましょう。

人生100年時代に必要な3つの力

今回のパンデミックで私たちが痛感させられたことのひとつは、健康の大切さだった。2020年、日本のGDP(国内総生産)は5%縮小した。これは、感染拡大を受けて人々の行動が変わり、政府が人命を救うための措置を講じた結果である。お金は確かに重要だが、人々はそれ以上に健康を重んじているのだ。その意味で、長寿化に関して日本が成し遂げた進歩は称賛すべきものと言える。(アンドリュー・スコット)

私の人生に大きな影響を及ぼした「ライフ・シフト」シリーズの新刊がリリースされたので、早速取り上げたいと思います。

今回のコロナ・パンデミックで、日本経済は停滞を余儀なくされました。しかし、日本人の健康意識が高かったために、欧米諸国に比べると死者を少なく抑えることに成功します。人々は健康の重要性に改めて気づき、自分の人生のあり方を考えるようになりました。寿命の長い日本人は、今後「長寿の配当」を手に入れることで、幸福度をアップできると著者は指摘します。

日本人は今こそ老後の常識を変え、新しい人生のあり方を構築するべきです。人々が長い人生を金銭面で支えられるようにするために、長期の職業人生を送れるようなシステムが求められています。また、健康な人生を生きるために、柔軟な働き方を選択したり、未病対策にお金を使うようにすべきです。

人々のスキルを錆びつかせず、アップデートする機会を用意することで、人生100年時代を楽しめるようになります。語らき方を変えることで、子どもと老親の世話をする時間を確保できるようになります。私たちはそのために新たな社会的な発明をする必要があります。

人類の歴史は、驚異的な進歩の歴史だった。そうした進歩を力強く牽引してきたのが人間の発明の能力だ。新型コロナの感染拡大により、その能力の真価が問われる状況が生まれている。いま私たちは、生き方と働き方に関して100年に1度と言ってもいいくらいの大変革を経験しつつある。これをきっかけにして、変化の激しい世界ですべての人が光り輝ける未来をつくり出そう。(アンドリュー・スコット, リンダ・グラットン)

政府と個人が長寿化の影響に対処するうえで、社会的発明が必要とされている領域は以下の3つになります。
①老後資金の確保
②医療の提供
③世代間の公平である

今後、経済成長の鈍化が懸念されているうえに、65歳以上の人口が増加することが確実な状況で、官民の年金制度にのしかかる負荷はきわめて大きくなります。そこで、社会的発明が非常に重要になると著者は指摘します。

「どのくらいの年齢まで働くか」「老いるとはどのようなことか」について新しい考え方を形づくり、企業が根深い固定観念を捨て、高齢の人たちの能力と意欲に関する思い込みを改める必要があります。

イギリスで1908年に公的年金制度が導入された際、受給開始年齢は70歳でした。このと き、1838年生まれのイギリス人(生きていれば1908年に70歳になる人たち)の平均寿命は45歳だったのです。年金を受給するようになった人も、ほとんどはその後あまり長く生きなかったために、この制度を維持できたのですが、長寿化によって年金制度は持たなくなっています。

年金や政府に頼れなくなった今、多くの先進国のミドル世代は、老後も働くことを覚悟しています。 それと同時に社会的発明を起こし、中年期のキャリアのあり方を刷新し、企業の制度を変えていく必要があります。 政府は医療費を抑えるために、予防医療重視に転換していかなければなりません。

個人は、できるだけ健康で幸せな人生を送るために、物語、探索、関係の3つの要素に焦点を当てるべきです。
■物語
自分の人生のストーリーを紡ぎ、そのストーリーの道筋を歩むこと。人生に意味を与え、人生でさまざまな選択をおこなう際の手引きになるような物語を作るべきです。
「私はどのような仕事に就くのか」
「そのために、どのようなスキルが必要になるのか」
「どのようなキャリアを築くのか」
「老いるとはどのような経験なのか」という質問に答え、自分の物語を紡ぎましょう。

私たちの人生のストーリーにリズムと秩序をもたらしているのは、暦の上での時間の経過だ。しかし、長寿化の進展に合わせて年齢に対する考え方を変えるためには、まず時間と年齢を単純に結びつける発想に終止符を打たなくてはならない。具体的には、年齢を可変性があるものと考える必要がある。平均寿命が長くなり、健康寿命も延びれば、40歳、60歳、80歳といった年齢のもつ意味は大きく変わる。そうした年齢の可変性を前提に、人生のステージのあり方を変えていけばいい。

現在の長寿化は年齢のインフレをもたらしていますが、それを計算に入れるなら、78歳以上を「高齢者」の基準に変えていけばよいのです。長寿化の恩恵を満喫したければ、年齢の可変性を前提に行動すべきです。

いまあなたがどのような行動を取るかは、あなたの未来と結びついていて、その未来に影響を及ぼします。未来のために大きな投資をし、新しいスキルを学び、新しい人間関係を築き、健康を維持するために努力をすることで。素晴らしい人生を送れるようになります。 複利効果を得るために、早くから学びと健康への投資を始めましょう。

■探索
学習と変身を重ねることにより、人生で避けて通れない移行のプロセスを成功させることが重要になります。

そして、テクノロジーの進歩と長寿化の進展に伴い、人生で経験する移行の回数は必然的に多くなる。しかも、単に移行の回数が増えるだけではない。人生のさまざまなステージで新しいタイプの移行を経験しなくてはならないのだ。 人生のすべてのステージで学習に大きな投資をすれば、あなたが検討している人生の計画がうまくいく可能性が高まる。 

「長寿化によりキャリアの選択肢が広がるなか、どのように選択肢を検討するのか」
「そのために必要なスキルは、どのようにして身につけるのか」
「どのような変化を試みて、これまでより多くの移行を経験する人生をどうやって歩んでいくのか」という質問を重ね、探索を繰り返しましょう。

■関係
深い絆をはぐくみ、有意義な人間関係を構築して維持しましょう。
「家族のあり方が変わりつつある状況に、どのように対処するのか」
「子どもの数が減り、高齢者の数が多くなる世界は、どのようなものになるのか」
「世代間の調和を実現するために、私やほかの人たちには何ができるのか」 という質問を繰り返し、周りの人とのよりよい関係を構築するのです。

人は、愛し、愛されるとき、自分が幸せで、大切にされていて、尊重され、理解されていると感じられる。逆に、ほかの人との関係を築けない場合は、拒絶されたように感じ、他人に対する信頼も弱まる。その結果、孤独と寂しさを感じ、不安が高まる。

精神科医のジョージ・ヴァイラントを中心とするハーバード大学の研究チームがおこなった長期の追跡調査によると、人生の幸福感と満足感に大きな好影響を及ぼすのが、深くて豊かで長期間にわたる友情だということが明らかになったのです。人は他人との関係を通じて、帰属意識をいだき、自分が評価されているという感覚を味わえます。

人生のさまざまなステージを通じて、ほかの人たちを支援したり、持続可能性の高い地域社会を築いたりするなど、コミュニティに投資するための時間を十分に取るようにしましょう。周囲の人たちと関わる時間を増やすための習慣を生活の中に、組み込むのです。

ほかの年齢層の人たちと接する機会を増やすことで幸福度をアップできます。今、私は58歳ですが、20代から80代までの幅広い人間関係を構築しています。今年から大学の客員教授になることで、10代の若者と話す機会も増えています。彼らの新しい生き方やアイデアに触れることで、刺激を受けています。

学びと健康への投資が欠かせない理由

3ステージの人生では、有給の仕事と無給の余暇がはっきり二分されていた。しかし、柔軟性の高いマルチステージの人生では、個人が自分の未来に責任をもち、主体的に選択をおこなうようになって、「仕事」の概念も拡大するのである。 マルチステージの人生の各ステージで、幸福を高めるために必要な資源をどのようにはぐくむべきかを考える必要がある。この点を軽んじてはならない。

あるステージではぐくんだスキルや資源は、あとのステージに持ち越されます。長い人生を生きるうえでは金銭面の安定も重要ですが、お金と時間を未来の自分のために再投資することも重要です。

私は以下の3つのことを意識しています。この3つを人生に取り入れることで、私は他者に価値を提供できるようになりました。
■大量読書と大量アウトプット
■移動を厭わない(街には様々なヒントがある)
■経営者や士業、コンサルタントなど多様な人と過ごす時間

テクノロジーの進化は、企業の業務プロセスを大きく様変わりさせ、仕事のあり方を根本から変えようとしています。一方、長寿化の進展は、仕事と時間の関係についての考え方と、人々の仕事観を変容させつつあります。

人生のあり方が変わり、仕事の世界も変わりつつある。既存の教育システムのままでは、人生と仕事への準備が十分とは言えなくなる。そこで、教育のあり方を大きく変えるべきだ。平均寿命が延び、職業人生も長くなれば、人生で必要とされる教育の量は多くなる。しかも、人生の序盤にすべての教育を済ませるのではなく、人生のさまざまな段階で学ぶことが望ましい。また、生涯にわたって学び続けることを考えると、人生の序盤で受ける教育では、特定のスキルや知識を身につけることよりも、ずっと学び続けるための土台づくりに重点を置いたほうがいい。

当然、企業側も従業員のキャリアアップをサポートすべきです。キャリアの途中で休業できるようにしたり、社外の研修を受講する費用を会社で負担したり、仕事に注ぐエネルギーを時期によって増減できるようにすることを年金の一部と捉えることで、従業員の満足度も高まります。

政府も人々の学びの機会を増やし、働き方の変革をサポートすべきです。テクノロジーの変化によって影響を受ける人たちがスキルを高めたり、新しいスキルを学んだりするのを支援すべきです。その結果、人間の労働者を代替するテクノロジーではなく、補完するテクノロジーに投資するように、企業に促すことができます。

今後の政府は人々が新しいストーリーを紡ぎ上げることを助け、そのストーリーを強化する必要があります。 いま、すべての人が人生と社会のあり方を設計し直すことが求められています。さまざまな世代が協力し合い、これまでよりも人間的な未来を形づくる必要があります。

私たちは以下の5つの行動を取ることが重要になります。
■先手を打つ。
■将来を見据える
■「ありうる自己像」を意識する
■可変性と再起性を意識する

あなたがどのように年齢を重ね、どのように人生を構成し、どのように時間を割り振るかは、画一的に決まったものではなくなる。このように人生の可変性が高まることで、あなたがいま取る行動は再帰性を帯びるようになる。つまり、現在の自分の行動が将来の自分に返ってくるのだ。あなたがどのように老い、どのような将来の選択肢を手にするかは、いまあなたがどのように行動するかによって決まる。

■移行を受け入れる

変化は容易でなく、技術的発明に社会的発明が追いついていないために、さまざまなリスクが生まれることは間違いありません。しかし、私たちはこれまでになく長く生きられるようになり、様々なチャレンジができるようになっています。このチャンスを見逃さないために、今すぐ自己投資をスタートしましょう。

私たちが個人のレベルと社会のレベルで賢明な選択をすれば、より健康に、より長く、より充実した人生を送れる可能性が出てくる。既存の社会規範が崩壊しはじめたことにより、新しい長寿時代がもつ可能性を思い描くという胸躍る機会が生まれている。

「物語る力」「探求(学習と変容)」「人間関係を構築する力」を身につけることで、私たちは長寿社会の勝者になれるのです。3つの力を取り入れることで、人生の選択肢を広げることができます。幸福な人生を過ごすために、学びと健康への投資を怠らないようにしましょう。

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この記事を書いた人
徳本

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数
iU 情報経営イノベーション専門職大学 特任教授 

■著書
「最強Appleフレームワーク」(時事通信)
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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