ハーバード・ビジネススクールが教える 顧客サービス戦略(フランセス・フレイ, アン・モリス)の書評

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ハーバード・ビジネススクールが教える 顧客サービス戦略
フランセス・フレイ, アン・モリス
日経BP

本書の要約

顧客に寄り添い、顧客のペインを解決するソリューションを提供することで企業は飛躍的に成長します。顧客が必要とするサービスに特化し、不要なサービスは提供しないと割り切ることで、価格を適切にコントロールし、利益を上げることができます。企業と顧客がWin-Winの関係を築くためには、顧客との対話が欠かせません。

成功するサービスの4つの原則

質の高いサービスを実現し、利益をあげ、ビジネスを継続させ、さらに規模を拡大させていくためには、誰もが良質のサービスをおこなえるようにビジネスを設計する必要があるのだ。(フランセス・フレイ, アン・モリス)

企業が持続的に成長し続けるためには、利益という源泉が欠かせません。そのためには、企業は「最高のサービス」ではなく「儲かるサービス」を 目指すべきだというのが著者らの主張です。ハーバード・ビジネススクールの教授のフランセス・フレイとコンシア・リーダーシップ・インスティチュートのマネジング・ディレクターのアン・モリスは、「儲かるサービス」を実践するためには、顧客を納得させ、こころよくお金を払ってもらう仕組み(サービスモデル)を作る必要があると述べています。

成功するサービスには以下の4つの原則があります。
原則1 「すべてが最高」には無理がある   
必要なのは、質の高いサービスを提供するために、あえて質の悪いサービスを提供する覚悟です。このトレードオフによって、顧客が最も重んじる側面でサービスの質を高めることができるようになります。顧客を定義し、顧客に寄り添うことで正しい価値を提供できるようになります。

原則2 誰かがコストを負担しなくてはならない   
なんらかの形でコストをまかなえなければ、卓越したサービスは提供できません。価格戦略やコスト構造は、その企業が顧客とどういう関係を築いてきたかによって決まります。

原則3 悪いのはスタッフではない   
経営者はサービスモデルの設計を意識すべきです。平均レベルのスタッフがごく普通に行動するだけで良質なサービスを提供できる仕組みを築けるかどうかがカギを握ります。スタッフの「奉仕する能力」に頼るのではなく、顧客体験を高める仕組みづくりを優先すべきです。

原則4 顧客をマネジメントせよ   
顧客にサービスを消費させるだけでなく、サービスを生み出すプロセスの一翼を担わせることを考えましょう。スターバックスはトールやグランデなどのサイズ(スターバックス用語)を顧客に覚えてもらうことで、店頭のオペレーションをスムーズにしています。

企業文化の中にサービスモデルを根づかせ、つねに企業文化がサービスモデルを補強する仕組みを築くことを経営者は目指すべきです。企業文化をサービス中心に変えることで、顧客体験がアップし、顧客から支持されるようになるのです。

卓越したサービス=設計✕文化

卓越したサービス=設計✕文化という公式で表現できます。サービスモデルの設計と企業文化には同等の重みがあるあるのです。正しいサービス設計と企業文化によって顧客のマネージメント行えます。みんなが仲間という文化を構築することで、顧客は企業をサポートしてくれるようになります。

設計が弱い場合に強力な文化で埋め合わせ、逆に文化が弱い場合に強力な設計で埋め合わせることができますが、どちらかの要素がなければ、企業は失敗を犯します。ビジネスを成功させたければ、この方程式を確立することから始めるべきです。サービスモデルと企業文化をコントロールすることが、経営者の役割になります。

顧客が必要とするサービスに特化し、不要なサービスは提供しないと割り切ることで、価格を適切にコントロールし、利益を上げることができます。企業と顧客がWin-Winの関係を築くためには、顧客との対話が欠かせません。

顧客が重視する要素では最高水準のサービスを提供し、顧客が重視していない要素では最低水準のサービスを提供している。

成功した企業は、多くの面で上質なサービスを提供する一方、意外にも、いくつかの面で非常に質の低いサービスしか提供していないことが明らかになっています。価値のあるサービスでは質を高めることを優先し、不要な一部のサービスの質を落とすことに対して躊躇しないことです。意図的に弱点を作る勇気が、企業を強くしてくれます。

上質な顧客体験から逆算し、自社が何を優先するかを設計します。すべてのことを優先すれば、コストが跳ね上がり、利益を上げることができなくなります。コマースバンクは顧客体験を高めるために、銀行の利用時間を長くし、接客態度の優れたフレンドリー社員を雇いました。金融商品の説明コストを軽減するために、商品ラインナップをたった一つに絞ったのです。接客に優位性をもたせることで、コマースバンクはサービスを重視した顧客の獲得に成功します。

サウスウエスト航空は低価格とフレンドリーな接客を重視し、機内サービス、航空路線網の充実などのサービスの質を落としたことで新たなマーケットを開拓し、成功を手に入れたのです。

ハーバード・ビジネススクールのジャン・リブキンが考案した属性マップを使い、顧客が重視する点を意識し、サービス開発を行うことで、競合との差別化を実現できます。どのサービスで競合に優位性を発揮し、どこで負けるかを明らかにしながら、最高のサービスモデルを構築するのです。

・属性マップの縦軸→サービスのさまざまな要素を並べます。顧客が最も重視している要素をいちばん上に、二番目に重視している要素をその次に……という具合にプロットしていきます。顧客にとっての重要度を基準に順位づけをおこなうようにうようにします。

・属性マップの横軸→それぞれの要素でどの程度のレベルのサービスを提供できているかをプロットします。
両軸とも顧客の視点からサービスの位置づけから判断します。競合のサービスを同時にプロットすることで、どこを優先するかを決められるようになります。

顧客と直接対話し、彼らからフィードバックを得ることで、サービスの重要な要素に気づけます。できるだけさまざまな顧客を無作為で抽出し、顧客との対話を重ねることで、最高のサービスを生み出せるようになります。顧客視点で自社のSWOTを行うことで、独りよがりのサービスから脱却できるのです。

重要なのは、顧客の声に耳を傾け、カスタマイゼーションをおこなうべきかどうかを戦略的に判断することだ。本当の価値を生み出し、それにふさわしい料金を受け取ることができて、しかも事業運営に過大な負担をかけないのであれば、カスタマイゼーションをおこなえばいい。しかし、多くの従業員、株主、そして大多数の顧客を犠牲にしてまで、一握りの顧客だけを満足させるようなサービスを提供すべきではない。

顧客の声にこたえて必要以上のサービスを提供することで、自社の利益を圧迫します。顧客は必要以上のサービスを求めますが、それにすべて答えていては利益が犠牲となります。結果、新規投資が疎かになり、イノベーションを起こせなくなるのです。

顧客の声に耳を傾けすぎることで、過剰なサービスを提供しないようにすべきです。正しい顧客に適切なサービスを届けることが大切なのです。自社の顧客のペインを明らかにし、最高なサービスを提供しましょう。

素晴らしいサービスを提供している会社には以下の3つの共通点があると著者らは指摘します。
①競争力を磨くためにどういう文化を築くべきかについて、きわめて明確に理解している(=明確性)。
②その文化に基づいた規範と価値観を力強く発信している(=伝達)。
③組織の戦略や構造、実際の活動が望ましい文化的価値観と矛盾しないように、真剣に努力している(=一貫性)。

顧客を一人の人間として見ることを考え、実際にそれを行う企業文化を持つことが強い会社をつくります。現状の企業文化で顧客体験を下げるポイントが見つかったら、それを改善するようにすべきです。好ましい人たちが顧客の声を無視するような不適切な行動をしないように、リーダーは企業文化を構築すべきです。好ましい人々の思考を変えることが、彼らの行動を変え、顧客体験を高めることにつながります。

顧客の声に耳を傾け、顧客に質の高いサービスを提供すれば、その顧客が感謝してくれるようになります。顧客が熱狂的なファンになることでSNSなどでシェアされ、より広い顧客にサービスがリーチし、新たな顧客を獲得できるようになります。


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