マーケティングZEN
宍戸幹央,田中森士
日経BP 日本経済新聞出版
本書の要約
マーケティングZENは、自己探求を通じて自身の使命を見出し、環境や人間関係を大切にし、持続可能な未来を目指します。禅の思想を取り入れ、シンプルなアプローチで顧客との信頼関係を築き上げます。パーパスを明確化し、自社の顧客を明確することで、無駄な施策を排除し、持続的な関係を築くことを目指します。
マーケティングZENとは何か?
マーケティングZENでは、自分の内側の声に耳を傾け、自分のつとめを見つけていく。また、規模の拡大を追い求めずに、持続可能な環境・関係を意識する。これまでの成長ありきのマーケティング手法とは、一線を画すアプローチである。(宍戸幹央,田中森士)
テクノロジーが進化する中、マーケティング手法もデジタルにシフトし、顧客情報がクライアントに握られるようになっています。企業はデジタルマーケティングによって、顧客の囲い込みを図ろうとしていますが、そこに双方向の対話がなければ、顧客は企業に対して不信感やストレスをつのらせます。
メールマガジンにブログ、YouTubeなど企業はあらゆるコンテンツを消費者に届けています。しかし、似通ったコンテンツが量産されているため味のあるコンテンツが減り、無機質なコンテンツが増えています。マーケティングから人間性が失われていますが、それを取り戻すのがマーケティングZENの役割になります。
マーケティングZENの5つのステップ
①己を見つめる
ブランドの立ち位置を明確にする作業を意味する
②手放してビジネスモデルをスリムにする
肥大化、複雑化しがちなビジネスモデルのスリム化を指す。
③ビジネスの適切なサイズを探す
規模の拡大を目的とせず、持続可能なビジネスのサイズを探る。
④マーケティング施策を絞る
マーケティングの無駄を省き、特定の施策に注力する。
⑤顧客との関係性を整える
パーパスを共有できる関係性構築を目指す。
マーケティングZENでは禅の思想を取り入れ、シンプルを目指します。パーパスを明らかにし、顧客を定義し、不要な施策を手放していくことで、顧客との信頼関係を築いていきます。
マーケティングZENがLTVを高める理由
通常、マーケティング戦略を立てる場合、後述するペルソナ設定とカスタマージャーニーマップの作成が柱となる。しかし、マーケティングZENの場合、「自分たちが何者なのか」という問いから入る。また、あえてビジネスの柱を限定する。マーケティング施策の無駄打ちはせず、重要施策に注力する。
禅の精神は、慈悲・慈愛の心を育みます。マーケティングZENも禅の精神を取り入れ、パーパスを意識します。人や企業が存在している理由、意義を明らかにし、プロダクトやサービスを開発し、顧客の共感を得ながら、関係を構築します。
会社のパーパスは、メンバー個人のパーパスと調和し、仕事のやりがいをもたらします。従業員が経営陣と同じビジョンに向かって努力することで、顧客体験を向上させることができます。
また、リーダーが自社の目的を明確にすることで、情報に基づいた決定を行い、積極的に持続可能性や環境イニシアチブに取り組むことができます。企業は短期的な利益ではなく、全体的な幸福を追求するようになります。マーケティングZENのコンセプトを採用する企業が増えるほど、持続可能な環境を実現できるようになるのです。
企業が向き合うべき対象が世の中へと広がった結果、 存在意義が企業に求められるようになった。パーパスが重視されるようになった背景である。パーパスは、マーケティングZENとも密接に関わっている。企業は、顧客をはじめとするステークホルダーとパーパスを共有する。どう行動すべきか迷った時、パーパスは立ち返る場所となる。売上より大事なものともいえよう。
マーケティングZENでは、手放すことを重視します。スティーブ・ジョブズがアップルに復帰した際に、製品数を絞ったことが功を奏し、アップルは復活を果たしました。自社の強みとやるべきことを明確にしたことで、ジョブズはアップルを再び成長軌道にのせたのです。
パーパスを明確にすることでやるべきことが明確になり、ビジネスモデルをスリム化できます。無駄なことをやらなくなることで、支出をコントロールできるようになり、経営リスクが減り、安定経営につながります。
パーパスからマーケティング戦略を再考し、施策を絞ることで、顧客と向き合う時間が増え、結果、顧客満足度がアップします。空いた時間は顧客との対話に使うことで、顧客体験をアップでき、顧客から支持されるようになります。顧客がファンとなり、SNSやブログで応援してくれることでマーケティングコストも削減できます。
また、パーパスに共感した顧客はリピートする確率が高いため、LTV(ライフタイムバリュー=顧客生涯価値)にもポジティブな影響を及ぼします。
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