キーエンス 高付加価値経営の論理 顧客利益最大化のイノベーション(延岡健太郎)の書評

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キーエンス 高付加価値経営の論理 顧客利益最大化のイノベーション
延岡健太郎
日経BP 日本経済新聞出版

本書の要約

キーエンスは組織全体で、クライアントの経営効率を高める商品とソリューションを提供しています。同社は日々イノベーションを起こすことで、顧客の利益改善という価値を創出し、自社の利益を高めています。顧客価値の経済的価値を目指すキーエンスの経営スタイルから、私たちは多くのことを学べます。

キーエンスの付加価値経営とは何か?

キーエンスでは、全社の戦略から、日々の業務まで、すべての活動において顧客企業の経済的価値向上を目標にしている。トップマネジメントはもちろん、商品開発や営業・マーケティングも同じで、全社のベクトルの方向性が一致している。(延岡健太郎)

高成長を続けるキーエンス。その強みは、一体どこにあるのでしょうか?

創業以来、キーエンスは、顧客企業の経済的価値向上を目標に活動してきました。キーエンスは顧客起点でコンサルティングを行い、クライアントの利益・生産性向上に組織全体で日々取り組んでいます。

クライアントは自社の利益増加をしてくれるキーエンスの提案を受け入れ、その付加価値を評価し、その費用対効果に応じて、大きな対価を支払ってくれます。これがそれが、キーエンスの最大の強みであり、高業績・高付加価値の源泉になっています。

キーエンスは、過去何十年間にわたり、クライアントの製造現場や開発プロセスに関する知識・情報を蓄積してきたと言います。結果、顧客企業の利益の最大化を目標として設定し、それを実現することで、高付加価値経営を社員全員で行っているのです。

キーエンスはメディアでの露出が少ないため、自社の利益のみを追求する企業ではないのかと誤解されることが多いと著者は指摘します。しかし、その実態は異なります。同社は生産性向上で、顧客の経営改善に多大な貢献をすることで莫大な利益を生み出し、潤沢な雇用や莫大な納税を行うことで、社会貢献を行っているのです。

2022年3月期の財務諸表によると、「法人税等」の支払いが約1,320億円になっています。これは社員一人あたりにすると1,500万円近い法人税を支払っていることになります。従業員の年収も高いので、そこから支払う所得税も多くなります。キーエンスのような高付加価値のイノベーション企業が、実は国や自治体の財政を支えています。

大きな売上総利益を実現することで、研究開発やソリューション営業部隊などへの戦略的な投資が可能になります。この投資に効果が出れば、より大きな売上総利益に結びつきます。戦略的な投資と売上総利益の間で、好循環を生み出すことでキーエンスは高い成長率を誇っているのです

キーエンスでは高付加価値経営を実現するために、社員全員が常に顧客企業の利益増加を実現する方法を考えています。顧客に寄り添い、クライアントの課題を発見することで、優れた新商品開発とソリューション営業を行えいます。営業だけでなく商品開発担当者も現場の状況を知り尽くすことで、スピーディに商品+ソリューションを提案できます。その際、多くの現場で使える提案をすることで、より大きな売上と利益を実現しているのです。このマス・カスタマイゼーションが同社の強みになっています。

キーエンスの高付加価値経営から学べる6つの果実

最重要な強みの神髄は、新商品開発とソリューション営業の両者がうまく統合されて、それらの相乗効果によって、大きな顧客価値を創出している点だ。  

キーエンスは徹底的に直販にこだわることで、以下の3つの果実を得ています。
□顧客へのソリューション提供
キーエンスの社員は顧客企業の現場で、業務のやり方を観察・学習しつつ、商品とともに、設置場所、効果を高める活用方法、機器の使い方なども併せて、生産性向上やコスト削減、品質向上などのソリューションを提供します。

□イノベーション・新商品開発
顧客からの情報を吸い上げることで、新商品開発のための情報も集まります。キーエンスの事業部内の新商品企画・開発セクションやマネジメント層へも、営業部隊が集めた顧客知識が迅速に届きます。結果、事業部としてのイノベーション能力が強化されます。コスト削減効果を数字で明確に示し、導入のサポートを行うことで、クライアントの効率が高まり、利益改善がはかれます。

□自社の経営改善
営業が現場で集めた情報が、会社経営にも最大限に活用され、キーエンスの成長が加速されます。

顧客企業の生産性(利益)向上を最大の目標として、それを実現するための方法を全員で考え抜く。個人の主観的判断ではなく、多くの顧客企業の現場と明確な価値向上の論理に裏づけされた合理性が重視される。そのため、基本的なルールとして、正しい論理や判断であれば、組織上の役職は関係なく、新入社員の発言でも、それが採用される。

キーエンスでは、市場原理・経済原則などの原理原則が主軸になるため、心理的安全性が確保され、アイデアが生まれやすくなっています。すべての戦略立案や意思決定は、正しいロジックと事実に即しているため、忖度がなく、的を得たソリューションが提供されます。

キーエンスでは、正しい営業プロセスを継続・発展させることで、成功確率を高めています。キーエンスのイノベーションを求めている適切な企業を選び、営業活動を効果的に行うことで、正しい解決策が提案されます。現場を知るキーエンス商品とソリューション力が結びつくことで、多くのクライアントの生産性・品質向上を実現しているのです。

私たちはキーエンスの高付加価値経営から以下の6つのことを学べます。
①イノベーション 顧客企業の利益増加が社会貢献

②強固な専門集団による顧客ニーズを超えたソリューション提案(商品販売より顧客の利益増加)

③顧客を深く・広く学習する仕組み 
多くの顧客現場を深く知り、社員が相互に学ぶことで、マス・カスタマイゼーションを実現しています。それと同時に、コンサルタント能力をアップさせる仕組みができあがっています。

④技術革新とソリューションの相乗効果

⑤市場の規模と成長ではなく顧客価値での参入

⑥ビジョンと目標の実現を徹底して目指す経営 言い訳の排除
キーエンスにはチーム・組織重視で、全員で高い目標に向けて取り組む組織文化が築かれています。

キーエンスは組織全体で、クライアントの経営効率を高める商品とソリューションを提供しています。同社は日々イノベーションを起こすことで、顧客の利益改善という価値を創出し、自社の利益を高めています。顧客価値の経済的価値を目指すキーエンスの経営スタイルから、私たちは多くのことを学べます。


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