ポジティブ・シフト
キャサリン・A・サンダーソン
ディスカヴァー・トゥエンティワン
本書の要約
ネガティブな出来事が起こったとき、その出来事を悲観的に解釈すると、それがストレスや不安を引き起こし、結果として私たちの幸せ感を奪うことになります。逆に、私たちがその出来事をポジティブな視点から解釈し、それが自己成長の機会であると捉えるならば、私たちの心の持ち方や行動が変わり、結果的には幸せ感を高めることにつながります。
ポジティブ・マインドが人生を豊かにしてくれる理由
時間をかけてポジティブ感情を自己生成するスキルを身につけることで、もっと健康で、より社会的で、回復力も高い自分になることができます。(バーバラ・フレデリクソン)
ポジティブ・シフト(キャサリン・A・サンダーソン)の書評を続けます。
ノースカロライナ大学チャペルヒル校の心理学者バーバラ・フレデリクソンは、マインドセットを変えることで、人生をより豊かにできると述べています。本書の著者のキャサリン・A・サンダーソンも同じように、ポジティブ・マインドセットを身につけることで、幸福度がアップすると指摘します。
私たちがネガティブな出来事を経験した時、不快な気持ちになるのは自然な反応です。人生での失望や困難は確かに、短期間でも長期間でも私たちの幸せ感に影響を及ぼします。しかし、本当に大切なのは、それらの出来事が私たちに与える影響ではなく、それらにどのように対処し、どう捉えるかという点にあります。
つまり、問題はその出来事自体ではなく、私たちがどのようにその出来事を解釈し、それに対する反応をどう決めるかということが重要なのです。 それぞれの出来事には異なる解釈や対応の仕方があり、それらが私たちの感じ方に大きな影響を与えます。
ネガティブな出来事が起こったとき、その出来事を悲観的に解釈すると、それがストレスや不安を引き起こし、結果として私たちの幸せ感を奪うことになります。逆に、私たちがその出来事をポジティブな視点から解釈し、それが自己成長の機会であると捉えるならば、私たちの心の持ち方や行動が変わり、結果的には幸せ感を高めることにつながります。
まったく同じ出来事を経験したとしても、その出来事に対するその人の反応や考え方が、その人の気持ちに大きな影響を与えます。 ポジティブな考え方で人生を生きている人は、ストレスに直面しても、それに対処することができます。
ポジティブ・マインドを身につけている人々は、やるべき事が多くて圧倒されそうな時でも、自分を落ち着かせて、一つひとつの事項に対して計画的に取り組む方法を見つけます。
もし同僚や友人との間で口論が起きた場合、彼らは冷静さを保って問題解決に向けた手段を模索します。このような問題に直面し、それに対処する行動は、問題を解消する、または少なくともその規模を縮小するのに有効であることが多いです。たとえば、タスクリストが整理されて小さくなったり、異なる視点による緊張が軽減したりすることでしょう。
楽観主義者が手術後の回復が早いという話を聞いたことがあるかもしれません。その理由の一つは、彼らが自身の状況について情報を積極的に求め、理解しようとする姿勢によるものです。楽観主義者は、事態がどのように展開するのかを知り、それに適切に対応するための情報を得ることに時間を費やします。これは、現状を理解し、それに基づいて最善の行動を取るという彼らの対応パターンの一部であり、これが楽観主義者が困難を乗り越え、早期回復を達成する一助となっています。
楽観主義者が人生をコントロールできる理由
わたしは根本的に楽観主義者だ。生まれつきなのか、育った環境のせいかは、なんとも言えない。楽観的であるということは、顔を常に太陽へ向け、足を常に前へ踏み出すことだ。人間性に対する忠誠を厳しい形で試されるつらい瞬間も数多くあったが、私は絶望に身を任せようとは思わなかったし、そうはできなかった。それは敗北と死に至る道だったからだ。(ネルソン・マンデラ)
ポジティブに生きる人は前進し、忍耐強くあり続けることができます。南アフリカの活動家だったネルソン・マンデラ元大統領も逆境を乗り越える力を持った人で、彼が楽観主義であったことが、南アフリカの人種問題を解決するきっかけを与えました
ネガティブな思考を持つ人は、困難な状況に遭遇すると、よくない結果を予想しやすく、すぐにあきらめてしまう傾向があります。このような人は、問題を無視し、解決をただ願うばかりで、タスクのリストが単に増え続け、議論が長引く結果を招きます。
このような「頭でっかち」なアプローチでは、状況を改善する可能性のある具体的な情報を得ることが難しいです。さらに、常に何も改善しないという固定観念は、実際に行動を起こすことを妨げてしまいます。 ネガティブな思考を改善するには、まず自分の思考パターンを認識することが重要です。自分の思考パターンを認識したら、ネガティブな思考をポジティブな思考に変えるための方法を探しましょう。
ネガティブな思考をポジティブな思考に変えるために、いくつかの方法があります。たとえば、自分の思考を書き留めて、客観的に分析する方法があります。また、自分の思考を他の人と共有して、フィードバックをもらう方法もあります。
ポジティブな思考は、ストレスの多い時期に前進するための強力なツールです。ポジティブな思考をする人は、多くの友人や強い人間関係など、強力な社会的な支援のネットワークをもっていることが一因だと考えられます。これは、いつも陰気でネガティブな顔をしている人よりも、幸せそうで楽観的な人のそばで過ごすことを私たちが好むことを思えば、驚くことではないでしょう。
このような良好な社会的なネットワークは、日常生活に おけるストレスの悪影響を緩和するのに役立ちます。悪いことが起こったとき、友人や家族から良いサポートを受けている人は、愛する人に助けを求めることができることを知っています。その結果、これらの出来事はストレスとして感じられなくなります。
癌の診断や自然災害など、とても深刻な出来事に直面した場合でも、高レベルのサポートがあれば、人は対処することができるのです。
ポジティブな思考は、コントロールできることに集中することでも役立ちます。ネガティブな思考をする人は、コントロールできないことばかりに気をとられ、ストレスを感じやすくなります。しかし、ポジティブな思考をする人は、コントロールできることに集中することで、ストレスを軽減することができます。たとえば、仕事で失敗してしまったとしても、失敗を学び、次に活かすことに集中することで、ストレスを感じにくくなります。
日常生活で直面する問題を、悪い面ではなく、良い面に注目し、幸福感を高めることができます。例えば、交通事故による渋滞に遭遇した際には、自身が事故に巻き込まれておらず、安全で健康な状態にいることを再確認することが有効です。
幸福感は、周りにいる人々によって影響を受けることが明らかになっています。複数の研究から、幸せそうな人に囲まれていると、時間が経過するにつれて自身の幸福感が向上することが示されています。例えば、1マイル圏内にハッピーな友人がいる場合、幸福感は25%上昇するという結果が出ています。
また、幸せな配偶者、幸せな隣人、幸せな兄弟姉妹も同様に幸福感の増加に関係していました。 更に、驚くべきことに、幸福感は社会的なネットワーク内の広範な関係によっても間接的に呼び起こされます。
例えば、幸せそうな友人をもっている場合、幸福感は約15%増加します。また、自身に直接的な影響を及ぼす友人がいなくても、他の友人が幸せそうである場合でも、何らかの効果があることがわかっています。この場合、幸福感の増加率は10%に近いとの研究結果が報告されています。更に、遥かに遠い関係であった場合でも同様の効果があることが報告されています。
良好な人間関係は、人生への幸福感や健康に良い影響を与えることが多くの研究で示されています。しかし、人間関係の質は個人ごとに異なるため、ポジティブな人たちとの付き合いを強化し、ネガティブな人との時間を減らすことが効果的だということは、重要なポイントです。実際、ポジティブな人たちとのコミュニケーションを増やし、共通の趣味や興味を持つ人たちを見つけることで、ストレスを軽減し、幸福度を高めることができます。
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