未来は決まっており、自分の意志など存在しない。~心理学的決定論~ (妹尾武治)の書評

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未来は決まっており、自分の意志など存在しない。~心理学的決定論~
妹尾武治
光文社

未来は決まっており、自分の意志など存在しない。 (妹尾武治)の要約

妹尾武治氏は、「人間には自由意志がなく、全ては事前に決定されている」という「心理学的決定論」を提唱しています。 たとえ、外部環境に影響され、未来が決まっているとしても、自分の価値を高め、他者に貢献する道を選ぶことで幸福度はアップするはずです。

心理学的決定論とはなにか?

この世は全て事前に確定しており、自分の意志は幻影だ。 私はこの仮説を「心理学的決定論」と呼び、広く皆さんに紹介したい。(妹尾武治)

本書は、心理学者の妹尾武治氏の視点による、未来と意志の存在について探求した一冊になります。この本では、私たちの意識や行動は予め決まっており、自分の意志や選択によって変えることはできないと主張しています。

著者の妹尾氏は、心理学、生理学、脳科学、量子論、人工知能、仏教、哲学、アート、文学、サブカルなど、さまざまな分野の知識を横断しながら、人間の行動や意識の仕組みを解明しようとしています。彼は、人間の行動や意識は遺伝子や環境、脳の働きなどによって制約されており、自由意志や選択は存在しないと主張しています。

あなたが自分自身で行っていると思っている判断も、実際には先行する外界からの刺激によって縛られているのだ。

心理学では「プライミング」と呼ばれる現象があります。この現象は、私たちが自分自身で行っていると思っている判断や行動が、実際には先行する外界からの刺激によって影響を受けているというものです。 プライミング効果は、ある刺激(プライム)が与えられることで、その後の判断や行動が変化する現象です。

例えば、ある商品の広告を見た後にその商品を購入する確率が高まるといったような効果があります。 このプライミング効果は、私たちが意識していない部分で働いています。つまり、私たちは自分自身の判断や行動が自由であると思っているかもしれませんが、実際には外界からの刺激によって縛られているのです。

「心理学的決定論」によれば、人間の行動は環境との相互作用によって自動的に決定され、意志は単なる幻想に過ぎないとされます。意識や意志は、人間特有のものではなく、物理世界の始まりから存在する自然法則の一部とされているのです。

これは意識が単純な二元論(1か0か)であるのではなく、レベルにグラデーションがあるということを意味し、万物がある程度の意識を持っているという考えを含みます。しかしながら、この理論では未来は変化せず、全てがすでに定められているとされているため、人間の努力は意味のないものにも見えます。

未来が決まっているとしても行動すべき理由

意識とは情報であり、生命とはその情報を増やすために配置された「なにがしか」(存在)である。この世界の本質は情報なのだ。

21世紀の新しい人類の価値観として、「意識とは情報の変動に過ぎず、自然法則に従う。自由意志はなく、全ての情報の変動(つまり行動)は環境との相互作用によって事前に決まっていることである」という思想の正しさの妥当性、「らしさ」が大いに高まっていると著者は言います。

この思想は、知覚心理学を正しく理解し、ベクション的発想の転換で主客を入れ替えることで到達したものです。ベクションとは、自分が動いているのか、それとも世界が動いているのかという両義的な状況を示します。これは、自分の行動が自分の選択によるものなのか、それとも外部環境によって決定されているのかという疑問につながります。ベクションは、世界の中で「自分」が本当に主人公であるかどうかという根本的な疑問を提起します。

私たちは自分で行動を選んでいると思っていても、実際には環境との相互作用により行動や選択が必然的になされている可能性があります。 この視点からは、人生の行動を選ぶと思っていても、実際には外部環境によって引き起こされていると考えられます。

このベクション的発想とは、通常の思考や視点を逆転させることで、新しい理解や洞察を得るアプローチです。主体と客体の関係を入れ替えたり、因果関係の方向性を変えることで、従来の理解を超えた新しい視点を得ることができます。

意識とは情報の変動に過ぎず、自然法則に従うという考え方は、科学的な視点から見たときに合理的であり、現代の知見とも一致しています。

意識とは情報であり、生命はその情報を増やすために存在するとされています。心理学、生理学、脳科学、仏教、マルクス・ガブリエルなどの哲学、アート、村上春樹の小説など、多様な分野からのアプローチによっても、たどり着く結論は心理学的決定論と一致していると妹尾氏は述べています。

これは、異なる分野でも真理が同じであるため、類似した結果に至ることを意味しています。 この理論によると、私たちの自由意志は錯覚に過ぎず、実際には私たちの行動は全て事前に決定されています。これは、環境と自己との相互作用によって必然的に生じる結果であり、脳が我々の行動を制御しているとされています。したがって、我々が感じる自由意志は、実際には外部環境に大きく影響されている必然的な反応なのです。

心理学的決定論が正しいならば、我々は環境との相互作用に全自動的に反応し、行動を取っていく。事前に全てのことは決まっている。しかし、だからといって人生が輝かない訳ではないし、一生懸命に生きることはやはり美しいし、楽しい。このことはくれぐれも誤解なきようにお願いしたい。

この本は、一部の人々にとってはトンデモ本とされるかもしれませんが、その内容を信じるか信じないかは読者次第です。著者は、本書を通じて我々の命運が決まっているという衝撃的なメッセージを伝えていますが、この考えを信じるにしても、行動することで自分を幸せにできるのです。

妹尾氏との書籍上での対話で私は少し混乱しましたが、たとえ、未来が決まっているとしても、自分の価値を高め、他者に貢献する道を今後も続けたいと思った次第です。


 

この記事を書いた人
徳本

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数
iU 情報経営イノベーション専門職大学 特任教授 

■著書
「最強Appleフレームワーク」(時事通信)
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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