脳を味方につけて独自性と創造性を発揮する技術 脳マネジメント(秋間早苗)の書評

a blue sculpture with a brain on top of it

脳を味方につけて独自性と創造性を発揮する技術 脳マネジメント
秋間早苗
クロスメディア・パブリッシング(インプレス)

脳を味方につけて独自性と創造性を発揮する技術 脳マネジメントの要約

脳マネジメントは、自分の脳を味方につけ、主体的に生きるための技術です。「気づく」「働きかける」「体現する」の3ステップを通じ、無意識の反応を理解し、意識的に行動を選択できるようになります。言葉や姿勢、呼吸を変えることで脳を整え、自分ならではの力(オーセンティック・パワー)を発揮。主体的な思考と行動を習慣化し、不確実な時代を乗り越える力を育みます。

VUCAの時代には脳マネージメントが効果を発揮する!

現代社会は目まぐるしく変化し、将来の予測が困難な状況が続いています。このような環境では、多くの人が漠然とした不安や閉塞感を抱え、ストレスを感じることが増えています。情報の洪水の中で判断を迫られ、何が正解かわからないまま決断を下さなければならない場面も少なくありません。

こうした不確実な時代を生き抜くためには、自分の思考や感情を整理し、冷静に判断を下せる力が求められます。そのために重要なのが、「脳をうまく使いこなす」ことです。

株式会社La torcheの代表の秋間早苗氏は、こうした課題を解決するために「脳マネジメント」という手法を提案しています。これは、簡単に言えば「自分の脳を味方につけ、最大限に活用する技術」です。私たちの思考や行動は、すべて脳の働きによって左右されています。

しかし、多くの人は自分の脳がどのように機能しているのかを深く理解することなく、無意識のうちに脳に振り回されてしまっています。結果として、不安や焦りに飲み込まれ、望ましくない行動をとってしまうことがあるのです。 脳マネジメントの考え方を理解するために、脳を「馬」にたとえるとわかりやすいでしょう。

馬に乗るとき、騎手は手綱をしっかり握り、馬をコントロールしながら目的地へと向かいます。しかし、脳の場合、多くの人が手綱を握ることなく、馬に振り回されるように行動してしまっているのです。

例えば、不安や焦りが生じたとき、その感情に流されて適切な判断ができなくなるのは、まさに脳の手綱を手放している状態だと言えます。脳マネジメントを実践することで、自分自身の脳の手綱をしっかりと握り、意識的に活用することが可能になります。

本書では、単なる「脳ハック」や「効率化のテクニック」ではなく、現代のような変化の激しい時代において、自分の脳を主体的に使いこなすための実践的な方法が紹介されています。特に、VUCA(変動性・不確実性・複雑性・曖昧性)の時代においては、過去の成功体験や固定観念に頼るだけでは、もはや適応できません。

従来の考え方にとらわれず、柔軟に思考し、適切に判断することが求められます。そのためには、まず自分自身の脳の特性を理解し、その癖や傾向を認識することが重要です。脳マネジメントは、無自覚に脳の反応に流される状態から脱却し、意識的に脳を味方につけるための手法なのです。

実践的な方法として、本書では「エネルギーチャージ」のアプローチが紹介されています。これは、日常生活の中で意識的に脳を活性化させ、創造性や判断力を高めるための工夫を指します。例えば、良質な睡眠や適度な運動、適切な食事などの習慣は、脳のパフォーマンスを大きく左右します。

また、ポジティブな感情を持つことや、好きなことに没頭する時間を作ることも、脳の活性化につながります。これらの取り組みを通じて、脳を常にベストな状態に保つことが、脳マネジメントの実践において重要なポイントになります。

脳マネジメントの本質は、「無自覚なメカニックビュー」から「自覚的なホリスティックビュー」へと視点を変えることにあります。メカニックビューとは、物事を機械的・論理的に捉える見方であり、効率化や仕組み作りに役立ちます。

一方、ホリスティックビューは、物事を包括的に捉え、状況に応じて柔軟に対応するための視点です。どちらか一方に偏るのではなく、それぞれの特性を理解し、場面に応じて適切に使い分けることが大切です。

例えば、細かいルールに従って作業を進めることが求められる場面ではメカニックビューが有効ですが、創造的な発想が必要な場面ではホリスティックビューが求められます。このように、視点を柔軟に切り替えることができるようになることが、脳マネジメントの目的の一つなのです。

脳マネジメントの3つのステップ

脳マネジメントを実践するためには、3つのステップを踏むことが重要です。「気づく」「働きかける」「体現する」というプロセスを通じて、自分自身の脳を味方につけ、主体的に生きる力を育んでいきます。

ステップ1 気づく – 無意識のクセを理解する
まず最初に、自分の脳がどのようなクセを持ち、どのような反応をしているのかを理解することが大切です。これを「無自覚の自覚」と呼び、自分の内面をよりクリアに見つめるアプローチが必要になります。そのために、以下の4つのフレームワークを活用します。

・刺激と反応
私たちは、出来事(刺激)が起こると、それに対して何らかの反応を示します。しかし、多くの場合、その反応は無意識のうちに決まってしまいがちです。まずは、自分がどのように反応しているのかを観察し、その背後にある刺激を見極めることで、新しい選択肢を持つことが可能になります。自分の反応を意識的に選べるようになると、人生そのものをより主体的にコントロールできるようになります。

・ABC理論
人生で起こる出来事(A)に対して、どのような結果(C)が生まれるかは、私たちの「捉え方や解釈」(B)によって変わります。同じ出来事が起こっても、それをどう捉えるかによって結果は大きく異なるのです。この理論を理解することで、感情や行動のコントロールがしやすくなります。

・ジャーナリング
頭の中にある考えや感情をノートに書き出すことで、自分の思考を整理し、客観的に見ることができます。これにより、自分の思考パターンに気づき、行動を改善するヒントを得ることが可能になります。特に「事実」と「解釈」を分けて考えることで、余計な思い込みや先入観から解放される効果があります。

私は毎朝「感謝日記」を書くことを習慣化したところ、素晴らしい変化を実感しています。日々の中で感じる感謝の気持ちを言葉にして記録することで、頭の中が整理され、クリアな思考状態を作り出せるようになりました。

この習慣を続けるうちに、一日のスタートが前向きなエネルギーで満たされるようになり、モチベーションが大きく向上しました。感謝の気持ちを意識的に探し、それを言語化するというシンプルな行為が、心の状態を整え、日々の活動への取り組み姿勢を前向きに変えてくれています。

朝の時間に感謝を意識することで、一日の残りの時間もポジティブな視点で過ごせるようになり、思考の質そのものが変化していくのを感じています。感謝日記は単なる記録以上の価値があり、心と脳のコンディションを整える効果的なツールになっています。

・4方向モデル
自分の状態を「前のめり」「後ずさり」「アップ」「ダウン」の4つの視点で見直すことで、今の自分がどんな状況にあるのかを把握しやすくなります。これにより、冷静に自己分析を行い、適切な行動を選択できるようになります。

この「気づく」ステップにおいて最も大切なのは、「ノンジャッジメンタル(判断しすぎない姿勢)」です。「こうあるべき」「こうしなければならない」といった固定観念にとらわれるのではなく、自分の状態をそのまま受け止めることで、新しい可能性を広げることができます。

ステップ2 働きかける – 脳の状態をコントロールする
自分の脳のクセを理解したら、次にその状態をより望ましい方向へと導く「働きかけ」を行います。このステップでは、以下の5つの要素を意識的に変えることが重要です。

・言葉遣いを変える
自分が普段使っている言葉は、脳の働き方に大きな影響を与えます。ネガティブな言葉を減らし、ポジティブな表現を増やすだけでも、思考や感情が前向きになりやすくなります。

・姿勢を変える
体の姿勢と心の状態は密接に関係しています。背筋を伸ばし、堂々とした姿勢をとることで、自信や落ち着きを取り戻しやすくなります。

・呼吸を変える
深くゆっくりとした呼吸を意識することで、脳のリラックスモード(副交感神経)が活性化し、ストレスが軽減されます。逆に、浅い呼吸は不安を増幅させるため、呼吸の仕方を整えることは非常に重要です。

・表情を変える
笑顔を作ることで、脳が「楽しい」と感じるホルモンを分泌し、気分をポジティブに変えることができます。鏡の前で笑顔を作るだけでも、脳の状態が切り替わるのです。

・見立てと設定を変える
物事の捉え方を変えることで、新たな可能性を見出すことができます。「失敗」を「学びのチャンス」と捉えるだけで、気持ちが前向きになり、行動の幅が広がります。 このステップで最も大切なのは、「どんな小さなことでも自分にできることがある」と感じることです。自分で自分を変えられるという感覚(効力感)を持つことで、主体的に行動できるようになります。

ステップ3 体現する – 自分らしさを発揮する
最後のステップは、学んだことを実生活で実践し、現実を創造していく段階です。ここでは、「オーセンティシティ(自分ならではの力)」を発揮することを目指します。

以下の3つの要素が重要になります。
・自分の大切にしたいことを自覚する
自分にとって何が本当に大切なのかを明確にし、その価値観を軸に行動することで、ブレない生き方ができるようになります。

・意図を持った選択を重ねる
日々の選択を「なんとなく」ではなく、「自分が望む方向に進むための意図」を持って行うことが大切です。小さな選択の積み重ねが、大きな変化を生み出します。

・自分ならではの力を表現する
身体(行動)、言葉(コミュニケーション)、心(価値観)が一貫性を持つことで、周囲に影響を与える力を持つことができます。この力を「オーセンティック・パワー」と呼び、脳マネジメントの最終的な目標とも言えます。

脳マネジメントは、一度学べば終わりではなく、日々の生活の中で何度も気づき、働きかけ、体現し続けるプロセスです。一度「これが自分にとって大切なことだ!」と旗を掲げても、現実との対峙の中で新たな気づきが生まれ、さらなる成長が求められます。

しかし、この姿勢を持ち続けることで、突破口を見つけ、自分だけの創造性を発揮することができるのです。そして、一人の人がこの「オーセンティック・パワー」を持ち始めると、その影響は周囲にも広がり、人々の意識を変えていきます。脳マネジメントとは、自分自身の可能性を最大限に引き出し、人生をより豊かにするための技術なのです。

チームでも活用できる脳マネージメント

一人だけではない「私たちの」脳マネジメントを始めると、しなやかな関係性(少なくとも消耗し合わない、フラットな関係)から、イキイキとした関係性(相互傾聴・相互理解から価値創造、想定を超えた違いを活かし合うコミュニケーション)へと向かつことのダイナミクスさを味わうことができるはずです。

さらに、脳マネジメントは個人だけでなく、チームや組織のレベルでも活用することができます。組織においては、メンバー一人ひとりが自分の脳を主体的に使いこなし、互いに協力しながら目標に向かうことが理想的です。

そのためには、単に業務の効率化を図るだけではなく、個々のメンバーが自発的に考え、行動できる環境を整えることが大切です。例えば、心理的安全性の高い職場を作ることで、メンバーが自由に意見を言いやすくなり、創造的なアイデアが生まれやすくなります。

脳マネジメントの考え方を組織全体で共有することで、個々のメンバーが持つ力を最大限に発揮し、より大きな成果を生み出すことが可能になるのです。

チーム・組織における脳マネジメント チームや組織における脳マネジメントを著者は次の3つのPHASEに分類します。

PHASE1 対人コミュニケーション・声がけ
他者(周囲)を理解し、他者(周囲)のRAS(網様体賦活系)を柔らかくするためのアプローチです。

PHASE2 場づくり・チームビルディング
対話やファシリテーション、プロジェクト協働など、関係の質を高めて創発的な環境を構築するためのアプローチです。

PHASE3 組織の価値創造や変革
数字や表立った言動ではなく、内発的動機や組織文化など、「見えないもの」を効果的に扱い、組織の独自性と創造性を高めるためのアプローチです。 VUCAの時代において、脳マネジメントを通じて自分自身の脳を味方につけ、独自性と創造性を発揮していくことは、個人にとっても組織にとっても大きな力となるでしょう。

本書では、脳を意識的に活用し、日々の生活や仕事に役立てるための具体的な方法が詳しく解説されています。変化の激しい時代を生き抜くためには、単に情報を詰め込むのではなく、自らの思考と行動をコントロールし、主体的に未来を切り開いていく力が求められます。脳マネジメントを実践することで、不安や迷いに流されることなく、自分らしく生きるための指針を手に入れることができます。

最強Appleフレームワーク


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