フランス・ヨハンソンのアイデアは交差点から生まれる イノベーションを量産する「メディチ・エフェクト」の起こし方の書評


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アイデアは交差点から生まれる イノベーションを量産する「メディチ・エフェクト」の起こし方
著者: フランス・ヨハンソン
出版社:CCCメディアハウス

本書の要約

異なる専門分野や文化が出合う交差点に積極的に足を踏み入れ、偶然の力を活用し、アイデアを生み出すようにしましょう。人にバカにされることを恐れず、一見、何の関係もなさそうな分野同士を関連づけ、結合させるようにしましょう。

アイデアは交差点から生まれる!

大部分の人にとって、イノベーションの最良のチャンスは交差点にある。そこでは単にすばらしいアイデアの組み合わせが見つかるだけでなく、より多くの組み合わせが見つかるのだ。(フランス・ヨハンソン)

アイデアはある分野の中だけで発展する「方向的アイデア」と異なる分野を組み合わせ、交差させて生まれる「交差的アイデア」の2つに分類されます。 方向的イノベーションは、企業が既存のプロセスを合理化して効率化を図るようなもので、目的は既存のアイデアに改良や調整を加えて発展させることにあります。この交差的イノベーションが人類を進歩させ、私たちの生活の利便性を向上させてきました。

ハーバード大学MBAなどを経て複数の企業を設立し、現在ではコンサルタントとして活躍しているフランス・ヨハンソンは、創造性、イノベーションなどの分野における研究を行う中で、アイデアは交差点から生まれるという考えに至りました。幅広い分野の文化人や芸術家の手によって創造性が開花するのを助けた、15世紀イタリアのフィレンツェで繁栄したメディチ家にちなんで、この交差点の効果を「メディチ・エフェクト」と名付けました。もし、あなたが創造的なアイデアを生み出したければ、交差点に身をおけばよいのです。

交差点とは、通常では考えられないような組み合わせや結びつきが起きるチャンスが大幅に増える場所になります。ルネッサンス期のフィレンツェでは、目覚ましいアイデアが爆発的に生み出されていました。異なる専門分野や文化が交差する場には、イノベーションを行うチャンスが数多くあるのです。

アイデアの交差点には3つの力が必要になります。
■第1の力 人の移動 グローバリゼーション フュージョン
■第2の力 科学における相互乗り入れ
■第3の力 コンピュータ技術の飛躍的向上

人の移動、科学の相互乗り入れ、コンピュータの飛躍的進歩によって、交差点はかつてない勢いで増えつづけています。

人の脳は、物事に秩序を見出したり、概念を分類してグループ化したり、周囲の環境に構造を見つけたりすることを好見ます。連想のバリアが高い人は、問題に直面したとき物事を集中して考えられるため、迅速に結論を出すことができます。同じ問題が過去に生じたとき、それをどのように処理したか、あるいは似たような状況に置かれた他人が、どのようにその問題を解決したかを思い起こすことで、解決策を短時間で見つけます。

これに対して連想バリアの低い人は、過去の経験とはほとんど関係のないアイデアや概念を結びつけたり、論理的に飛躍のある連想をしています。連想バリアの高い人(あるいはチーム)と低い人(チーム)とでは、同様の機会を与えられたときのアプローチのしかたがまるで違いますが、イノベーションを起こす人たちは、常識という連想バリアを破壊し、脳の中で様々な要素を組み合わせていたのです。

チャールズ・ダーウィンは軍艦ビーグル号に乗って5年間にわたる世界一周の航海に参加し、その際立ち寄ったガラパゴス諸島からたくさんの鳥の標本を持ち帰りました。普段は几帳面に記録を取るダーウィンでしたが、この鳥の標本に関してはほとんど記録をつけていませんでした。なぜなら、彼の当初の目的は地質学の調査だったからです。

航海を終えてロンドンに戻ったダーウィンは、その鳥の標本をフィンチやミソサザイ、ツグミなどが混在したものだと説明し、当時有名だった動物学者のジョン・グールドに託しました。6日後、グールドからの返事にダーウィンは驚きます。鳥達は特異なフィンチ類であり、種の数は全部で13種にのぼるというものでした。この13という種の数は、ガラパゴス諸島の島の数に一致していました。

ほどなくグールドから、ダーウィンをさらに驚かせる知らせが届きました。ダーウィンはガラパゴス諸島でマネシツグミの標本も集めていましたが、彼はそれらの標本が同じ種に属する亜種だと思っていました。ところがグールドによれば、それらはすべて独立した種で、それぞれ別々の島に生息するものであることがわかったのです。

グールドはこのあと何もしませんでしたが、ダーウィンは「もともとひとつの種だった鳥が別々の島で孤立して生活しているうちに、複数の種に分かれたのではないか?」という画期的な仮説を思いつきます。これがやがて、現代のもっとも重要な科学革命のひとつともいうべき進化論の基礎になったのです。

グールドは十分な専門知識 をもったその分野の指導的人物であり、あらゆる情報を手に入れることができました。しかし、グールドは、自分の目で見たことをすべて分類学という分野のルールに即して解釈するタイプの人間であり、ダーウィンの持ち帰った鳥の標本をそのルールに当てはめようとしただけでした。他方、ダーウィンの洞察力は、そもそも分類学という分野がなぜ存在するかを説明しています。彼がその洞察力を持ちえたのは、連想のバリアを壊すことができたからだったのです。

連想のバリアを壊す方法

伝統的な文化とのつながりを断ち切られた人や、複数の文化に徹底してさらされた人は、幅広い仮説について考慮できるという強みをもち、それによって創造的イノベーションを行う回数も多くなると考えられる(ドナルド・キャンベル)

連想のバリアを壊した人には共通点があると著者は言います。
●さまざまな文化にふれた経験
●既成の教育にはない学び方
●思い込みを逆転する
●違う視点に立って物事を見る

連想のバリアを破壊できる人は、ある問題に対するアプローチが複数存在することを知っています。彼らはどんな状況にあっても多様な観点からそれをとらえようとします。 異なる文化のもとで暮らしたり、働いたりした体験と、そのことの意味を吟味できる十分な時間をもつことによって、人は連想のバリアを低くできるようになります。

交差点でイノベーションをなし遂げる人には2つの特徴があるとポール・マイダーは指摘します。
1、独学で専門知識を身につけている。
2、幅広い知識をもっていること。

連想のバリアを壊すためには、ある問題や状況について通常とは違う道筋で考えることが必要になります。そのためにもっとも効果的な方法のひとつは、思い込みを逆転させることです。思考を逆転させることで、ある状況をまったく違う観点からとらえることが可能になり、交差点への道が開けます。

創造性開発の専門家のマイケル・マハルコは連想のバリアを壊す方法を説明しています。
①今取り組んでいる問題に関連する状況や商品、コンセプトを思い浮かべ、そこから連想される事柄を文章にします
②連想した事柄を紙に書き、次にそれを逆転します。
③逆転したほうの内容をどうやったら実現できるか考えます。

イノベーションを起こす方法

「職の多様化」「多様な構成のグループ」「交差点ハンティング」の3つを組み合わせることでイノベーションを起こせるようになると著者は言います。時間をかけて異なる様々プロジェクトに関わること、専門分野だけでなく、多様な能力を持つ人を集めることが重要になります。その際、文化、民族、地理的背景、性別、年齢の異なる人をメンバーに加えるようにしましょう。交差点アイデアを生み出したければ、自分とは異質な人間とチームを組み、働くべきなのです。

そして、交差的アイデアを生み出すためには、偶発的な組み合わせが起こるチャンスを増やす必要があります。私たちは交差点ハンティングというメソッドを取り入れることで、結果を変えられるようになります。

交差点ハンティングとは、結びつきがありそうもない場所にそれを探し、見つかった結びつきが何をもたらすかを明らかにすることである。

作家のエドガー・アラン・ボーは次の作品のための新しい筋書きを考える際、辞書から無作為に2、3個の言葉を選び出し、その言葉をどうやったら結びつけられるか考えたそうです。うまくいけば執筆にとりかかり、うまくいかないときはまた新たに2、3個の言葉を選んで再度やってみたと言います。

マイケル・マハルコは、「思考の散歩」という交差点ハンティングの方法を提案しています。ある問題に取り組んだり、あるアイデアが形をなしはじめたとき、思考の散歩をすることで偶発的な組み合わせのチャンスを増やすことができるようになります。

思考の散歩をするときには、オフィスのなかでも、駐車場でも、通りでも、好きな場所をぶらぶら歩き、目についたもの(たとえば釣り竿でも、冷水タンクでも、香水の瓶でも、ドアの蝶番でも、スイセンの花でも、何でも)を手に取るか、借りるか、買うか、メモします。その際、意識的にその問題やアイデアに関連すると思うものを選んではいけません。それでは偶発的な概念の組み合わせにはならないからです。目的とは何の関連もなさそうなものを選び、それを組み合わせるようにしましょう。

思考の散歩から戻ったら、自分が選んだ物や言葉の特徴を書き出していきます。散歩で見つけた特徴と今取り組んでいる問題とを無理にでも結びつけていきます。

交差点ハンティングにおいては、どんな偶発的なインスピレーションの源泉も格好の対象となる。今やっていることをしばし中断し、メモ用紙を手に、一見無関係な物と目の前の問題との間に結びつきをつくろうとしてみるのだ。時間と運さえあれば、意外性に満ちた斬新な洞察の引き金となる概念を、見つけることができるかもしれない。

優秀な人たちは、交差点ハンティングによって、アイデアを見つけるチャンスを最大限に増やそうとします。

また、彼らはアイデアの質だけでなく、アイデアの量に徹底的にこだわります。創造的な活動が行われているどんな分野をとっても、平均するとすべての革新の約半分が1割のクリエーターによって生み出されていることがわかっています。ある個人やチームが他の人びとの10倍、100倍、あるいは1000倍ものアイデアを考案しています。また、もっとも多くのイノベーションを起こした人たちが、もっとも画期的なイノベーションを起こしていたのです。

パブロ・ピカソはおよそ2万点の作品を創作し、アインシュタインは240本の論文を書き、バッハは毎週カンタータを作曲し、トーマス・エジソンは1039件という記録的な数の特許を申請していました。

著者は交差点に身をおき、大量なアイデアを作るべきだと言います。

異なる文化や領域、専門分野間の交差点が、異なるアイデアの組み合わせを生じさせることはたしかだが、それと同時に交差点は、そうした組み合わせを大量に生じさせもする。つまり交差点に身を置く人は、多くのアイデアのなかから、もっとも望ましいものを探し出すことができるのだ。

異なる専門分野や文化が出合う交差点に積極的に足を踏み入れ、偶然の力を活用し、アイデアを生み出すようにしましょう。人にバカにされることを恐れず、一見、何の関係もなさそうな分野同士を関連づけ、結合させるようにしましょう。大量にアイデアを作るうちに、飛び抜けたアイデアを生み出せるようになります。

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この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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