矢野和男氏の予測不能の時代:データが明かす新たな生き方、企業、そして幸せの書評


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予測不能の時代:データが明かす新たな生き方、企業、そして幸せ
著者:矢野和男
出版社:草思社

本書の要約

フラット、インプロバイズド、ノンバーバル、イコールのFINEとホープ、エフィカシー、レジリエンス、オプティミズムのHEROの両方がある組織は幸せであることが明らかになりました。FINEとHEROを掛け合わせ、「FINE thanks,HERO within」を組織として強化すれば、企業は成長できるようになります。

職場の幸せが、変化に適応できる鍵

変化への適応を求めるときこそ、変わらないものを知ることが一層大事になる。それが「幸せ」である。(矢野和男)

私たちはVUCAの時代を生きていますが、これは予測不能の時代を生きていると言い換えることができます。いくらテクノロジーが進歩しても、未来を予測することは難しいものです。私たちは過去の延長線上から物事を考えがちで、未来を見誤ってしまうのです。

未来が予測不能な中、企業は絶えず変化に適応しなければ、やがて顧客からの支持を失ってしまいます。では、どうすれば、企業は変化に適応できるようになるのでしょうか?

本書の著者の矢野和男氏は『「幸せな職場」だけが、変化に対応できる』と述べています。矢野氏は今までに「組織を幸せに導く技術」の実証実験を何度も行なってきましたが、そこから幸せな職場が変化に適応できることを明らかにしました。

著者は大量のデータを収集し、解析することで、効果的に変化と闘い、適応している人や組織に共通するパターンを見つけました。変化に適応できる組織に見られるパターンがあれば、それは普遍的で、今後も変わらないはずです。本能的で無意識な人間行動や人間関係の客観データを活用すれば、「予測不能な変化にいかに向き合うべきか」を論ずることができると著者は考えたのです。

これからの時代の従業員は、未知の変化に対応するため、実験と学習を繰り返しつつ仕事のやり方を変えなければなりません。この「面倒なこと」が、今や生産性の高い重要な仕事になっています。面倒な仕事を続けるには、従業員の幸せが欠かせません。実際に、幸せな人は「面倒だが重要な仕事」に積極的であり、幸せな人が多い企業は生産性が高く、1株あたり利益も高いことが明らかになっています。

幸せな組織に必要なFINEとHEROの法則

幸せな組織や集団には、業種や業務を問わない普遍的な特徴がある。幸せな組織には以下のFINEな関係性がある。人と人とのつながりがフラットで特定の人に偏らず(フラット:均等)、気がついたときや必要なときにすぐに短い会話が開始でき(インプロバイズド:即興的)、会話中に身体が同調してよく動き(ノンバーバル:非言語的)、会議での発言権が平等に与えられる(イコール:平等)。これらはいずれも、共感や信頼を身体で表したものだ。人とのよい関係に感謝する意味を込めてこれを「FINE thanks(いいね、ありがとう)」と呼びたい。

幸せな組織には、普遍的な4つの特徴である「FINE」があることがわかりました。この4つの特徴がある組織では、幸せが周りに伝染していきます。

第1の特徴:フラット(Flat)=均等 人と人のつながりが特定の人に偏らず均等である
第2の特徴:インプロバイズド(Improvised)=即興的 5分から10分の短い会話が高頻度で行われている 第3の特徴:ノンバーバル(Non-verbal)=非言語的 会話中に身体が同調してよく動く
第4の特徴:イコール(Equal)=平等 発言権が平等である

よい組織とダメな組織の違いを見れば、FINEの重要性を理解できます。

著者はFINEが見られる幸せで生産的な組織にするには、以下の4つ条件が求められると言います。
第1の条件 組織図にとらわれずにつながりあう
第2の条件 予定表にとらわれないタイミングで会話しあう
第3の条件 立場の違いにとらわれずに会話を身体で盛り上げる
第4の条件 役職や権限にとらわれずに発言しあう
心理的安全性のある恐れのない組織をつくることで、幸せな人を増やせます。

また、4つの特徴を持つ人や組織には、無意識の身体運動にも共通して現れる特徴があると言います。ウェアラブル端末のデータをチェックすることで、身体運動データの中にある「幸せの配列」が明らかになったのです。

「組織の幸せは、9割以上が人間関係の特徴で決まる」ということである。というのも、先の幸せな組織の4つの特徴FINEは、いずれも人間関係を表す特徴であり、これらを共通して代表する身体の動きのシークエンスが、組織の幸せと相関係数0.9以上の強い相関を持つからである。このため我々は、無意識の身体運動に表れるこの指標を「ハピネス関係度」と呼ぶこととした。

ハピネス関係度は周囲の人たちと自身を幸せにしている度合いを表しており、これを組織全体で集計することで、組織の幸せの総量がわかります。 ウェラブル端末による大量のデータ解析によって、周囲を元気にする人たちが多い組織が幸せで強いことがわかりました。

キリストや仏陀が説いた「利他の教え」が、データからも正しいことが明らかになったのです。

あなたが幸せになるためには、人を幸せにする集団の一員になることが必要だ。幸せな集団とは「周囲を元気にする人たち」であることが、科学的に示されたのである。 集団内で自分にもできることはある。自分が属する集団の幸せに、あなた自身も重要な影響を与えているからだ。あなたが、自ら周囲の人たちに幸せな影響を与え、元気を与えれば、属する集団をより幸せな状態にすることに貢献できる。

世の中には、「よい幸せ」と「悪い幸せ」のある組織がありますが、違いはどこにあるのでしょうか?
□よい幸せ→自分の幸せだけでなく「まわりの人を含む幸せの総量を増やす幸せ」
□悪い幸せ→まわりの人の幸せを犠牲にした悪い幸せ
著者は「まわりの人の幸せを犠牲にした悪い幸せ」を排除し、よい幸せを増やしたいと考えています。

職場の幸せは、職場を構成するメンバーのそれぞれが、周囲の人たちを元気にし、幸せを生んでいるかにより決まります。個人が「よい幸せ」で、関わる人たちを元気にし、幸せを生むことで自分も幸せになることが理想です。

著者は幸せを高めるスキルである心の資本=HEROを身につけることで、組織を幸せにできると言います。
□ホープ(Hope)自ら進む道を見つける力
□エフィカシー(Efficacy):現実を受け止めて行動を起こす力
□レジリエンス(Resilience):困難に立ち向かう力
□オプティミズム(Optimism):前向きな物語を生み出す力

ネブラスカ大学のフレッド・ルーサンス教授は「心の資本」によって、組織の生産性や創造性、従業員の幸せや満足度、健康、離職防止にポジティブな影響を与えると述べています。互いに相手の心の資本を高め合い、互いに相手をHEROにする組織を目指すことで、私たちは変化に適応できるようになります。個々のメンバーがFINEを意識し、行動することで、幸せな組織をつくれます。

本当に新事業が成功できるかは、外部環境を含めたさまざまな状況に影響を受けるであろう。しかし、新事業の創生を正しい方法で追求すれば、「心の資本」を高め、持続的な幸せを得る。それは、成功の可能性をより高めるのである。成功は誰も保証することはできない。しかし、「内なるHERO」を育むことで、持続的な幸せを得るのは確かで保証されているのだ。

新規事業を立ち上げるときにも、このHEROの考えを取り入れることが大切になります。うまくいかないのが当たり前の状況下では、持続的な幸せを得るようなマインドや行動が欠かせません。周りをHEROにし、自分をHEROにする人たちを増やすことで、変化に適応できる強い組織がつくれます。

FINEとHEROという2つを掛け合わせ、「FINE thanks,HERO within」を組織として強化すれば、多様な人が協力できる幸せな職場をデザインできるようになるのです

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この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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