スマートフォンとソーシャルメディアが孤独を加速させる理由

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THE LONELY CENTURY なぜ私たちは「孤独」なのか
著者:ノリーナ・ハーツ
出版社:ダイヤモンド社

本書の要約

目の前の人との悪影響を及ぼすスマホを使いすぎることで、現代人がお互いを理解し合い、つながり合ううえで重要な働きをする共感力を損なわせます。スマホやソーシャルメディアは依存症を引き起こします。孤独に陥らずに、幸福度を高めるためには、スマホやソーシャルメディアと距離をおくべきです。

スマートフォンとソーシャルメディアが孤独を加速させる?

221回。これは現代人が1日にスマートフォンをチェックする回数だ。平均的な1日の使用時間は3時間15分、年間でほぼ1200時間にもなる。ティーンエイジャーの約半分が「ほぼ常に」オンラインの状態だ。地球上の成人の3分の1が、朝起きてから5分以内にスマートフォンをチェックする。多くは真夜中に目が覚めたときもチェックする。

ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン名誉教授のノリーナ・ハーツTHE LONELY CENTURY なぜ私たちは「孤独」なのか書評を続けます。私たちはテクノロジーの発達で孤独を感じるようになりました。 スマートフォンとソーシャルメディアは、孤独危機の原因の代表的な原因になっています。

デジタル・ディストラクション(情報機器によって集中力を削がれること)は極めて深刻な問題 となり、シドニーやテルアビブやソウルなど、スマートフォンがとくに広く使われている街では、都市計画にまで影響を及ぼしています。最近では、歩行者が顔を上げなくても安全を確認できるように、「止まれ/進め」の信号を歩道に埋め込んだ街もあるそうです。結果、ソウルでは、5年間で歩行者の負傷事故が20%、死亡事故が40%も減ったと言います。

一部の人にとって、スマートフォンに表示されるコンテンツは、車にぶつからないよう注意することよりも、ずっと抗いがたい誘惑になっています。東京でもスマホを見たまま自転車を運転する人が多く、事故が続いています。

現代のスマートフォンと、かつてのコミュニケーション技術の間には根本的な違いが ある。簡単に言うと、人をクギづけにするレベルが違う。かつて私たちが電話を取ったのは、1日に数回程度だったのではないか。だがスマートフォンは、もはや着けていることを忘れたメガネのように、私たちの一部になった。

AppleやFacebookなどの巨大テクノロジー企業が、 スマートフォンとソーシャルメディアへの半永久的な接続状態を画策することで、現代人はかつてないほどの孤独危機に晒されています。スマートフォンを持ち歩いているだけで、私たちの行動や、周囲の世界との関わり方は変わってしまいます。

最近の研究では、スマートフォンを持っている人は、お互いに微笑みを交わすことが著しく減ることがわかりました。スマホの画面に集中することで、友人や家族とのコミュニケーションも変わっています。私たちはデバイスを開いている時間じゅう、私たちの心は友達や同僚、恋人、子どもとは別の場所にいます。誰かと一緒にいても、一人でいる時間が、 どんどん増えています。

親がスマートフォンばかり見ているせいで、子どものコミュニケーション能力が低下することが明らかになっています。それだけでなく、最近の研究では、親がいつもスマートフォンに気を取られていると、子どもは食べ物の好き嫌いが激しくなったり、食べ過ぎたり、運動能力の発達が遅れる可能性が高いこともわかってきました。

親がスマートフォンに気を取られている子は、言葉ではなく態度で感情を表現したり、怒りなどの強い感情をコントロールすることに苦労したり、自分の要求が満たされないと、ふてくされた行動を取ったりする可能性が高くなります。こうした情緒面での影響は、幼少期を過ぎても続きます。

たとえば、親がデジタルデバイスに気を取られていると感じるティーンエイジャーは、親に「温かみ」があまりないと答え、不安や鬱を患う可能性が高くなります。

スマートフォンは現代人の愛人であり恋人だ。みな自分の周囲にいる人に対して、白昼堂々と「浮気」を働いているにもかかわらず、なぜかその不倫は社会的に許容される。私たちはそこにいるけれど、いない。一緒にいるけれど、一人ぼっちなのだ。

目の前の人との悪影響を及ぼすスマホを使いすぎることで、現代人がお互いを理解し合い、つながり合ううえで重要な働きをする共感力を損なわせます。

ソーシャルメディアという依存症から抜け出そう!

21世紀の新しいデジタル・コミュニケーションは、感情的エンゲージメントや共感や理解を伝えるうえで、重大な欠陥と欠点があり、対話の質や人間関係の質を低下させるようだ。それらは、私たちが大切に思っている人と対面で話をしたり、一緒に時間を過ごしたりすることと比べると、質の低い代替手段であり、現代人の関係断絶に大きく寄与している。

スマホの画面のさまざまな情報に注意を削がれると、目の前にいる人に注目したり、思いやりを向けたり、相手の視点で物事を見ることはほぼ不可能になります。 この現象はスマートフォンを使っていないときも起こります。

ワシントンのカフェで100組のカップルを観察した研究によると、テーブルに1台のスマートフォンが置かれているだけで、または、どちらかがスマートフォンを持っているだけで、カップルのお互いに対する親近感や共感が低下することがわかりました。二人の関係が親密であるほど、スマートフォンが共感に与えるダメージは大きくなり、相手に理解されているとか、サポートされている、大切にされているという感覚は低下します。

スタンフォード大学のジャミル・ザキ教授は、「交流の幅が縮小すると、共感するのは難しくなる」と語っています。この10年で、交流の幅は縮小する一方です。特にコロナ禍の中、リアルのコミュニケーションの機会が劇的に減っています。

2018年の米国、英国、ドイツ、フランス、オーストラリア、日本の18~34歳の4000人を調査したところ、電話よりも文章でコミュニケーションを取るほうがいいと答えた人が75%に達しました。しかし文章といっても、そのやり取りは技術的な制約を受けます。スマートフォンでの文字入力は、オートコレクトや入力予測といった機能はあるものの、比較的困難なためメッセージは短くなりがちです。

ツイッターの文字数制限は、声高で、簡潔で、断定的な表現を要求します。フェイスブックでは、短い投稿のほうがコメントがつきやすい(投稿が80字以下だと「交流」が起こる可能性は66%高まる)ため、ユーザーに自己編集を促します。そもそも、「いいね」を押せば意見表明ができるのですから、きちんとした文章を書くモチベーションを下がります。メールやチャットは誤解を生みやすいこともわかっています。2016年のミネソタ大学の研究によると、同じ絵文字を見た人が、異なる解釈をする確率は25%を超えると言います。

ボストン大学のケリー・クローニン教授は、学期中に誰かを対面でデートに誘ったら、追加単位を与えることにしました。追加の単位をもらうためには、22のルールを遵守する必要があります。
■デートアプリやソーシャルメディアなどのデジタルツールを使わないこと。
■対面で相手をデートに誘い、実際にデートをすること。
■もし合わないと思っても、ゴースティング(突然連絡を一切断つこと)は禁止。
■デートの場所は映画館はダメ。
■アルコールを伴うことも、フレンドリーなハグ以上の身体的接触もNG。

本物のコミュニケーションを避けたり、暗い劇場に隠れたり、酒の勢いを借りたり、誘うだけで会話をしないと単位を取れません。追加単位を取るためには、実際に誰かに話しかけて、気まずい思いをしたり、緊張したり、そわそわしたりする経験を伴わなくてはいけないのです。

クローニンは学生たちに、会話の助けとなる質問やトピックを事前に2~3個用意しておくことを勧めました。また、会話が途切れるのは自然なことだと言い聞かせたそうです。ソーシャルメディアで、次から次へとコミュニケーションや娯楽が流れてくることに慣れた世代には、現実の世界には沈黙もあることを説明する必要があったのだです。

計算機が人間の暗算能力を奪ったように、デジタル・コミュニケーション革命は、私たちが対面できちんとコミュニケーションを取る能力を低下させる恐れがある。

2012年に米国の幼稚園から高校までの教員600人以上に聞いた調査では、メディアの使用量は、生徒たちの行動や態度に影響を与えることが明らかになりました。(テレビ番組、ビデオゲーム、テキストメッセージ、iPod、携帯電話のゲーム、ソーシャルネットワーキングサイト、アプリ、コンピュータプログラム、オンライン動画、そして学生たちが楽しみのために使うウェブサイトがメディアとして定義)。

2019年に1~4歳の子ども251人を調査したカナダの研究では、スクリーンタイムが長い子どもほど、他者の感情を理解する能力が低く、ほかの子を助けず、破壊的であることが わかりました。

スクリーンを遠ざけると、子どもたちの共感力が高まることを示す証拠もあります。UCLAの研究チームは、デジタル機器(スマートフォン、テレビ、インターネット)のない自然環境で、5日間キャンプに参加した10~11歳の子どもたちを調べました。

結果、たった5日間スクリーンを見なかっただけで、子どもたちが他者の表情やボディランゲージといった非言語的な感情のサインを読み取り、写真や動画に登場する人の気持ちを理解する能力は大 幅に高まりました。その能力は、キャンプに行かず、いつもどおりデジタル機器を使っていた子どもたちと比べても高かったのです。

以下の4つの質問で2つがイエスなら、依存症の可能性を疑いましょう。
1,スマートフォンを見ている時間を減らすべきだと感じたことがある。
2,周囲の人にスマートフォンの使用時間が長いと言われて腹を立てたことがある。
3,スマートフォンを使っていて罪悪感を覚えたことがある。
4,朝起きたとき、まずスマートフォンに手を伸ばす。

フェイスブックの元社長であるショーン・パーカーは、「我々のつくったものに依存性があることはわかっていた」と述べています。ソーシャルメディアの使用と孤独の間に明確なつながりがあることは、この10年間に無数の研究で明らかにされています。ある研究では、ソーシャルメディアの使用量が多い青少年は、そうでない青少年よりも孤独と答える可能性が高かったのです。

別の研究では、ソーシャルメディアでネガティブな経験が10%増えるごとに、大学生が感じる孤独のレベルは13%上昇することがわかっています。2010年代に米国の青少年が対面で交流する時間は、1980年代よりも1日平均4時間も減ったことを明らかにした研究もあります。

約3000人を対象にした調査結果を見ると、ソーシャルメディアの問題点が明らかになりました。半数の人には2カ月間フェイスブックを通常通り使用してもらい、残りの半数(「治療」グループ)には、フェイスブックのアカウントを完全に停止してもらいました。すると、治療グループでは、それまでフェイスブックに充てていた時間を、ほかのソーシャルメディアに充てるのではなく、インターネットの使用時間そのものが減り、友達や家族と対面で交流する時間が増えました。

気持ちの面でも、幸福感が増し、人生に対する満足感が高まり、不安が低下し、控えめだが十分なレベルで孤独感も低下したのです。主観的なウェルビーイングを高めるという意味では、フェイスブックのアカウント停止は、セラピーに通うことで得られる効果の最大40%をもたらしました。

ソーシャルメディアの有害な影響に対し、私たちは何ができるのでしょうか?
当然ながら、まずは利用時間を減らすことが重要です。パソコンやスマートフォンに触らない「デジタルフリーの日」をつくることで、デジタルギアと距離を置けるようになります。アプリのアイコンを不便な場所に置いたり、スマートフォンから削除するなど、ソーシャルメディアを見る衝動を抑える「ナッジ」 を駆使することも大切です。

ソーシャルメディアにもタバコと同じくら い危険な依存性があることを考えると、タバコ並みの警告表示を義務化するべきだと著者は指摘します。ソーシャルメディアを使おうとするたびに、その有害性を思い出すよう促される必要があると言うのです。

ソーシャルメメディアを私も使いますが、必要以上に見るのを避けるため、読書を優先するようにしています。実際、Kindleアプリを一番目立つ場所におき、TwitterやFacebookのアイコンを目出せないようにすることで、私の読書時間は増加しています。ソーシャルメディアを全く使うことは難しいですが、使用時間を減らすことは可能です。時間の使い方を自問することで、本当にやるべきことが見えてきます。

ブロガー・ビジネスプロデューサーの徳本昌大の5冊目のiPhoneアプリ習慣術がKindle Unlimitedで読み放題です!ぜひ、ご一読ください。

 

 

 

 

 

 

この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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