AX(アジャイル・トランスフォーメーション)戦略―次世代型現場力の創造の書評

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AX(アジャイル・トランスフォーメーション)戦略―次世代型現場力の創造
著者:ダレル・リグビー, サラ・エルク,スティーブ・ベレズ
出版社:東洋経済新報社

本書の要約

「アジャイル」はアマゾンやグーグルといった急激に成長してきたテクノロジー企業が、製品・サービス開発に用いている手法であり、短期間でトライアンドエラーを高速回転で繰り返しながら完成度を高めていくものです。アジャイル経営を導入することで、企業は短期間で結果を出せるようになります。

AX(アジャイルトランスフォーメーション)とは何か?

アジャイル企業の業務モデルは、絶妙なバランスの上に成り立っている。アジャイル手法を活用することで企業は(1)伝統的な業務を正確かつ効率的に行い、(2)予期せぬビジネスチャンスに遭遇すればうまくそれを取り込み、しかも(3)この2つの行動をうまく両立させることができる。

「アジャイル」はアマゾンやグーグルといった急激に成長してきたテクノロジー企業が、製品・サービス開発に用いている手法であり、短期間でトライアンドエラーを高速回転で繰り返しながら完成度を高めていくものです。アジャイル経営を導入することで、企業は短期間で結果を出せるようになりますが、組織をつくる際には、リーダーは注意を払う必要があります。

アジャイルのイノベーションチームはアジャイル企業の核心ですが、それに関係するのは一般的に全従業員の10~50%にすぎません。アジャイルな体制における仕事の大半、人間の多くはオペレーション、サポート、管理といった通常業務の運営に携わっています。

リーダーたちはアジャイル拡大そのものをアジャイルの取り組みだと見なしています。経営幹部たちはーつのアジャイルチームとして企業変革を取り仕切り、そうした変革を目標や完成日時が予測可能な単独プロジェクトではなく、継続的な改良を加えていく取り組みだと理解しているのです。

経営陣は従業員を部下や抵抗勢力として見るのではなく、成功に不可欠となる積極的な関与やフィードバックを提供してくれる、むしろ顧客のような存在と捉えています。

経営陣が、優先順位を定め、顧客体験を改善しその満足度を高めるための機会の順番を決めていきます。リーダーは問題の解決や障害の排除を部下任せにするのではなく、自らが率先してその任務に当たらなければなりません。

アジャイル企業とは機能横断的チームで、チームはサプライチェーンの仕組み、人事戦略、顧客サービス対応などについても厳しく精査する必要があります。開発だけがイノベーションを起こすのではなく、業務プロセス、人材、ファイナンスなど様々な分野において、企業はイノベーションを必要としていることを忘れてはなりません。

アジャイル企業のリーダーは業務を確実に効率的にこなす一方で、予想外のビジネスチャンスに遭遇した場合にはビジネスのやり方を変えて、それを取り込み、しかもその両方の動きをうまく両立させていく必要があります。

通常の業務とイノベーションは補完的、相互依存的な活動であって、企業が成功するためにはその両方が必要になります。相互の緊張関係、相互牽制、バランスは、企業が健全な業務運営を行う上で不可欠なのです。

「アジャイルであること」は生存の必要条件となっており、顧客の変化に対応し自らも柔軟に変化し続ける企業が勝者として生き残り、そうでない企業の淘汰が進んでいきます。以下の表を見ながら、正しいアジャイルとは何かを考えてみましょう。

アジャイル企業になるための4つのステップ

明確で広く共有されている企業目的への一体感が強いほど、微細なことに口出しをする必要がなくなり、自律的チームからなる組織に仕事を任せることができます。なぜなら、計画の背景にある目的の実現に向かって全員が真剣に取り組んでおり、予期せぬ事態にも適切に対応できるからです。企業がパーパスを明確にすることで、メンバー全員が積極的に動けるようになります。

ワービー・パーカーは、企業目的を「革命的な価格でデザイナーズメガネを提供し、社会を意識したビジネスの先駆者になること」としています。パーパスがわかりやすく表現されることで、ワービー・パーカーの社員は大きな自由裁量を持って、アジャイルに仕事ができるようになります。

アマゾンの使命は「地球上で最も顧客中心主義の企業」になることですが、それを実現するために、アマゾンの社員は以下の強力な運営上の原則を定め実行しています。
■オーナーシップ(会社全体のために長期的な視点で考える)
■発明とシンプリシティ(新しいアイデアのためなら徹底的に調べる)
■優れた見識(幅広い視野に基づく揺るぎない判断力を培う)
■学習と好奇心(着実な改善を図る)
■ベストな人材を採用して能力を伸ばす(採用や昇進ごとに判断基準を引き上げる)
■最高水準をいつも目指す(他人から見て不当に高すぎるとしても)
■大きく考える(大胆な目標について意見を交わす)
■人とは違う行動(スピードが重要だ)
■節約する(最小の費用で最大の効果をあげる)
■信頼を得る(声に出して自己批判をする)
■深く潜る(細部に執着する)
■意地を張る(敬意を持って挑戦し妥協を拒む)
■結果を出す多く

アマゾンはこれらの原則に基づいて社員を採用し、社員は自ら考え、動くことで企業を成長させます。アマゾンの正真正銘の顧客第一主義は、アジリティの強力な基盤となっていて、社員全員がその実現を真剣に目指し、日々変化しているのです。

アジャイル企業になるために、次の4つのステップを踏む必要があります。
①アジャイルチームを好きになり、自分自身のチームを創設する
学習を歓迎し、祝福することで、幸せなチームを作れます。

②アジャイルを拡大する
アジャイルの拡大によって検証や学習の精神が企業全体に浸透し、従業員はどのような些細なことでも改善の機会を見逃さなくなります。アジャイルを組織に拡大し、イノベーターと官僚機構の調和を図り、優れた成果を生み出しましょう。

③アジャイルのイノベーションを活用して目的を達成する
顧客のために革新的な問題解決手法を生み出しましょう。

アジャイルシステムは、企業理念、企業業績、顧客満足、従業員モラルなどの目標を実現するためのものだ。リーダーが組織の機能不全を乗り越えるためには、複雑な問題を対応可能な細かなステップにまで分解し、その問題解決に向けて組織的な取り組みをする必要がある。リーダーは課題を部下に丸投げするのではなく、自らが率先して問題解決に当たり障害を取り除く努力をすべきである。

結果を出したいなら、結果を生み出すプロセスとシステムを改善しなければなりません。

④アジャイルを楽しむ

アジャイルとは、チームワークによる優れた働き方を見つけ出すことだ。それによって、人々は幸せになり、チャレンジ精神が旺盛になり、大きな成功を手にすることができる。

信頼できる研究によると、幸福感やイノベーションは密接に絡み合っています。幸福感かイノベーションのうちのどれか1つを改善できれば、両方が連携して継続的に改善に向かうサイクルが始まります。このルールを信じて、行動すれば、成功が習慣化します。

学習することに無駄なことは何一つない。アジャイルリーダーの仕事は、チームができるだけ多くの成功体験を積めるように支援し、前進を妨げている障害を取り除くことだ。リーダーの責任は、そうしたチームの成功を大きく取り上げて賞賛し、さらなる奮起を促すことだ。そうすることで、チームのモチベーションやイノベーション能力は改善する。

「アジャイルを楽しむ方法の1つは、成功体験を積み重ねて、みんなで祝福することである」という著者たちの言葉を信じて、リーダーはアジャイル経営を拡大させましょう。

 

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