新 失敗学 正解をつくる技術(畑村洋太郎)の書評

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新 失敗学 正解をつくる技術
畑村洋太郎
講談社

本書の要約

現代のようなVUCAの時代には、今までのような常識が通用しなくなり、自ら考え、行動しなければなりません。「正解がない時代」=「正解がいくつもある時代」には、自分たちで正解をつくっていく必要があります。自分たちで正解をつくるとは失敗を恐れずに、仮説ー実行ー検証を回していくことにほかなりません。

失敗する勇気を持とう!

現状が良いのだからこのままがいちばんだと何も変えずに生きられれば、それは幸せなことかもしれません。しかしその間、徐々に私たちの社会が衰退を続けて、若者世代が未来への希望を失い続けているとしたら、それこそが、私も含めて日本社会をつくってきた大人たちのいちばんの失敗です。この状況を変えていき、希望のある社会を次世代に手渡すことは、大人の役割だと思います。(畑村洋太郎)

東京大学名誉教授で「失敗学のススメ」で有名な畑村洋太郎氏の新刊「新 失敗学 正解をつくる技術」が面白い。「決められた正解を素早く出す」ことが優秀な人が、この数十年大きな失敗を繰り返しています。みずほ銀行のシステムトラブルやコロナ禍の日本政府の失敗を見ていると、前例主義にとらわれてしまい、新たなことへのチャレンジを避けています。優秀な人たちは失敗を恐れるあまり、冒険心を失っているのです。

畑村氏は、私たちが失敗に学ぶ意味は大きく2つあると言います。
①同じような原因、シナリオで起こる失敗を繰り返さないためです。学ばずにそのまま放置していると、繰り返されるのが失敗です。しかもそのときの被害は以前より大きくなりがちなので、取り返しのつかない、致命的な失敗を起こさないためには、過去の失敗に真摯に学ぶことが大切になります。

②未知のことに挑戦したり、新しいものやサービスなど新しい価値を創造する際には失敗がついて回ります。私たちは人類は新たなことにチャレンジする中で、失敗を繰り返し、そこから学ぶことで進歩してきました。

優秀なエリートたちが偉くなる日本という組織からは、成長に欠かせないチャレンジマインドが失われています。失敗を避けるのは、「新たな価値の創造のタネ」や「人の成長のタネ」を放棄することと同義です。現代のようなVUCAの時代には、正解がなくなりつつあり、今までの常識が通用しなくなっています。新たなことにチャレンジし、失敗から正解を見つける勇気がなければ、やがて社会は衰退してしまいます。

失敗することを恐れない空気をつくることで、若者はチャレンジできるようになります。現代の日本は閉塞感に包まれていますが、これを打破するためにも畑村氏の「失敗学」を広める必要があります。

正解がいくつもある時代には、失敗が欠かせない!

私はいまの時代を「正解がない時代」というより、唯一解のない「正解がいくつもある時代」と捉えています。 そんな時代に必要なのは、やはり自分なりの正解を出していく思考法です。

問題を解決するためには、正しく問題を定義し、「自分で考えて実行し、その結果を検証する」サイクルを続けることが必要です。

「考える」と「実行する」壁は実は大きく、実際にやってみないとわからないことがたくさんあります。頭の中で作った仮説を行動に移すことで、失敗という経験値が手に入ります。行動することで、思いもかけない結果が引き起こされたり、全く別のアイデアが見つかるようになります。

仮説と実行を繰り返すつまり試行錯誤することは、クリエイティブな作業を行うときには欠かせない作業です。実際にやってみると、だいたい自分の仮説通りにいかないですし、一度で満足のいくものができることもほとんどありません。しかしその原因を考える中で、足りないもの、思い違いをしていたものなどいろいろなことが見えてきます。そうして得たものをもとに、新たな仮説を立てて実行することができるし、場合によっては別の創造のタネにすることだってできます。

いくらよいプランを考えても、頭で考えた通りには進まないものです。そのプランを実行に移し、何度か失敗するうちに正しいルートが見つかります。そのルートを進み、いくつかの難所を乗り越えることで、正しい答えが見つかるようになるのです。結果、自信が生まれ、失敗することが怖くなくなります。

新たなことにチャレンジする際には、「失敗は当たり前のように起こるものだ」と言うマインドセットを身につけることが重要です。失敗を恐れず、自分で考え、行動することをルールにすることで、自分の中に勇気が養われていきます。

環境が大きく変わっているときには、それまで回っていたものが、ある日突然立ち行かなくなることがふつうに起こります。いまはそうした危機が確実に迫っている時代なので、自分たちの身を守るために挑戦したほうがいいのです。

テクノロジーが進化することで、世の中は日々大きく変化しています。この変化に適応するためには、新たなことへのチャレンジが欠かせません。チャレンジには失敗がつきものだと考え、失敗の特性を知ったうえで上手に付き合いましょう。よい失敗を重ねることで、自分の成長を加速できるようになります。



この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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