なぜ、それは儲かるのか:〈フリー+ソーシャル+価格差別〉×〈データ〉が最強な理由(山口真一)の書評

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なぜ、それは儲かるのか:〈フリー+ソーシャル+価格差別〉×〈データ〉が最強な理由
山口真一
草思社

本書の要約

テクノロジーの進化や、決済手段の発達、消費者の支払い意思額に応じた価格設定によって、上位顧客に多額のお金を払ってもらえるようになり、1%の顧客が売上の多くを占めるという現象も起こり始めています。上位1%の顧客のみを狙うのではなく、無料のユーザーを増やし、全体のパイを大きくすることが重要になります。

上位1%の法則とは何か?

上位1%の法則は、情報社会の進展とともに顕在化し、一般的な法則になりつつある。そしてそれと同時に、IT技術の進展はその1%から適切に稼ぐことを可能にした。決済手段の充実は、それぞれの消費者の支払い意思額に応じた課金(価格設定)を可能にした。通信網の発達は、多段階の課金額に応じて差別化されたサービスを提供することを可能にした。データ分析技術の発達は、上位1%の人がどのようにすればサービスに満足するのか分析したうえで、適切なサービスを提供することを可能にした。 つまり、上位1%の法則は普遍的であることが明らかになり、それを収益に結びつける機会も手段も整ってきているといえる。(山口真一)

マーケティングの置いて、パレートの法則(2:8の法則)が有名です。 顧客全体の2割である優良顧客が売上の8割をあげているなど、上位20%が全体の売上に大きく貢献することが明らかになっています。

しかし、最近では上位1%が収益を上げている事例が増えています。テクノロジーの進化や、決済手段の発達、消費者の支払い意思額に応じた価格設定によって、上位顧客に多額のお金を払ってもらえるようになり、ゲーム業界では上位1%の顧客が売上の多くを占めるという現象も起こっています。

多くの人が無料でモバイルゲームを楽しむ一方、物凄く熱中している人はそのゲームに数十万円を支払うと言います。デジタル財課金により価格差別の段階を無限大にした「多段階価格差別」を採用することで、顧客の熱狂度により、支払う金額が変わるのです。

多段階価格差別は需要曲線の内側全てを収益にし、消費者の支払い意思額を無駄なく回収することができます。実際の需要曲線は「べき乗側」に従うことが多く、需要曲線を直線と仮定するよりもさらに収益は高くなります。

あるモバイルゲームの事例では、多段階価格差別の収益を100%とした時、一律500円とした時の収益はわずか13%だったと言います。いかに上位層の支払いが多いことがわかります。更にこのようなパターンでは上位1%の法則が成り立ち、あるモバイルゲームでは上位1%が収益の57%を占めていることがわかっています。

上位1%の法則で成功するための3つのルール

上位1%の法則が収益を上げると言う話を聞くと、その上位1%にフォーカスしてビジネスをしたくなりますが、実際には多くの潜在ユーザーを確保する必要があります。決済手段の充実や差別化されたサービスの提供が可能になったことにより、消費者は自らの支払い意思額に応じて柔軟に支払うことができるようになったのです。

こういった場合、顧客がいつ上位顧客になるかわからないのですから、下位99%を維持し、裾野を広げておくことが重要になります。下位層から移行する潜在的な有料ユーザを確保することが、上位1%の顧客を育てることにもつながります。

上位1%の法則施成功するためには、以下の3つを実践すべきです。
①少額の有料ユーザや無料ユーザも含めてユーザ数を多くする、裾野を広げる努力をする。
上位1%から多くの収益を上げるためには全体の顧客数を増やし、その1%の人数を増やす必要があります。上位1%というのは、100人の消費者の中ではたったの1名ですが、100万人の消費者の中では1万人も存在します。 そのように裾野を広げるために、基本無料にして参入障壁を下げたり、広告を打つことがポイントになります。短期的には上位1%以外のユーザを増やしますが、中長期的には、やがてそこから新たな良客である1%の顧客が生まれます。

②無料ユーザも満足感を得られる設計にする。
「F=フリー」「S=ソーシャル」「P=価格差別」「D=データ」、これら4つを用いてビジネス戦略を立て、最大限の利益を目指すのが「FSP-D」モデルです。FSPーDモデルにおいて、ネットワーク効果が働くことで、製品やサービスの内容が同じでも、ユーザ数が増えれば効用は増大します。

無料ユーザの増加はサービス全体の価値を高めることにつながります。ユーザが増えれば増えるほどユーザー人当たりの効用が増加するという特性上、無料ユーザもサービスの魅力を上げる重要な資源になるのです。無料ユーザーの99%を軽視するのではなく、むしろ継続的に顧客になってもらうための努力を続けることで、結果、上位1%のユーザの支払い意思額を増加させたり、継続利用させたりといったことにつながります。

③支払価格に応じた明確な差別化ポイントをサービスの中に用意しておく。
無料と有料で明確な差別化を設けることで、上位1%への移行がスムーズに行われます。多段階価格差別を採用するのであれば、低い金額を支払っている消費者と、高い金額を支払っている消費者の間でも、差別化されている必要があります。

どんなに裾野を広げても、全ユーザが無料ユーザのままであったら、高収益は達成できません。無料ユーザに対して良いサービスを提供しつつ、上位1%が支払いを維持したくなるような差別化ポイントをつねに用意しておく必要があります。


この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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