事例で学ぶ BtoBマーケティングの戦略と実践
栗原康太
すばる舎
本書の要約
さまざまなプロモーション施策から、すぐにお問い合わせ獲得や商談獲得を目指すのではなく、Web上で見込み顧客とのコミュニケーションを段階的に行うようにします。見込み顧客との関係をしっかりと築いた上で、お問い合わせや商談を増やすようにすることで受注の確率が高まります。商談前に顧客が買いたいと思う状況をつくることが、Webマーケティングの成功を左右します。
顧客の「4つの不」を解消しよう!
課題解決の方法は、いまや営業パーソンではなく、顧客自らが決めています。(栗原康太)
インターネットの普及によって、顧客が自ら課題解決や商品を探し始めています。商談前にほぼ発注先が決まると言われる中で、Webマーケティングを行うことが当たり前になっています。BtoB企業もマーケティングの手法を見直す必要があり、多くの企業がアウトバウンドからインバウンド・マーケティングにシフトしています。
しかし、Webマーケティングの壁は厚く、顧客獲得のハードルが高くなっています。マーケッターは顧客の「4つの不」を解決するコンテンツを用意することで、顧客との関係が改善でき、受注の確率を高められます。
・不信の壁:「お宅は信用できない」という壁
顧客が営業マンや営業トークに不信感を抱くと、商品やサービスの購入にはつながりません。自社のWebで信頼できる会社であることを発信する必要があります。
・不要の壁:「それは私には必要ない」という壁
不要なものは買ってもらえないので、自社の商品やサービスが、顧客のどのような課題を解決できるのかを明らかにする必要があります。顧客の悩みやペインを解消できることを伝えなければなりません。
・不適の壁:「それは私には適切ではない」という壁
「自分には合わない」「自分には使えない」と思われないようにすべきです。顧客にフィットしている、使いやすいと思ってもらうことを意識すべきです。同業界・類似業界での成功事例を用意し、導入効果を認識してもらうようにします。
・不急の壁:「今すぐ買う必要がない」という壁
「今は必要ない」と思っている人は、商品やサービスを買うことはありません。導入に際し、早期に準備しておくことのメリットを整理し、提案することは効果があります。また、低予算でスタートできるプランや無料トライアルを提示することで、相手がすぐにアクションを起こせるようになります。
BtoBにおいては4つの不が解消できるとき(買わない理由がなくなったとき)に受注ができるようになります。「売上や利益を上げる」「コストを下げる」など、顧客の業務上の課題解決を目的としたマーケティングを行うことで、顧客の行動を変えられるようになります。
BtoBマーケティングはナーチャリングが鍵。
購入企業側は事前の情報が少ない中で意思決定をする必要があるため、BtoBでの購買行動はまだまだ情報の非対称性が大きい領域であると言えます。そのためWeb上にコンテンツを大量に掲載し、検討・意思決定にあたっての顧客の不安を少しでも取り除くことができれば、顧客の意思決定におけるハードルを下げることができます。
BtoBの場合は、原則として複数人、複数職種、複数役職の人たちが購買の意思決定に関与します。 BtoBマーケティングでは顧客社内の確認・調整・稟議があることを前提にして、発信するメッセージやコンテンツ、全体のコミュニケーションシナリオを設計する必要があるのです。
その製品やサービスを導入することで、会社の売上・利益がどれくらい上がるのか、コストが下がるのかを決裁者に伝えなければ、購入のハードルを下げることはできません。
Webサイトや営業資料、広告のクリエイティブで打ち出すメッセージやコンテンツは、企業の課題解決にいかに寄与するかを訴求することが重要になります。
BtoBマーケティングにおいては、「LTV一平均購買単価×平均購買頻度or継続購買期間」が重要な指数になります。マーケターは、平均購買単価、平均購買頻度、継続購買期間の3つの要素を意識し、この数字をアップさせるべきです。
多くのBtoB事業においては、営業が介在するためCAC(Customer Acquisition Cost=顧客獲得コスト)が一定以下には下がりにくいという特性があります。そのため一顧客あたりの取引価値をアップし、LTVを高めなければ、事業は赤字になってしまいます。顧客のチャーン(離脱)を防ぐこともマーケティングの重要な指標になります。
BtoBマーケティングを成功に導くうえでは、CV(コンバージョン)ポイントの設計が一番インパクトが大きい。こう言い切ったら、驚かれる方も多いでしょう。もちろん広告の改善や、WebサイトのABテスト、インサイドセールスのスクリプト(台本)を改善することなども売上向上に貢献します。しかし、売上・利益といった経営指数に一番インパクトがあるのは、営業・マーケティング上の階段設計を見直し、見込み客とのコミュニケーションプロセスを変えることなのです。
顧客に知ってもらってから、受注に至るまでの階段をしっかりとつくる作業こそが、BtoBマーケターの仕事なのです。自社の顧客を定義し、その顧客がどのようなコミュニケーションを望んでいるか、という結果のイメージから逆算して、ナーチャリングの設計を行うことが重要なのです。
お問い合わせからいきなり商談を移るのではなく、セミナーや少人数勉強会、製品・サービスの説明会、事例紹介、定期的なメールマガジンなど、見込み顧客との関係を築くための施策を段階的に設計します。
さまざまなプロモーション施策から、すぐにお問い合わせ獲得や商談獲得を目指すのではなく、Web上で見込み顧客とのコミュニケーションを段階的に行うようにします。見込み顧客との関係をしっかりと築いた上で、お問い合わせや商談を増やすようにすることで受注の確率が高まります。商談前に顧客が買いたいと思う状況をつくることが、Webマーケティングの成功を左右します。
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