ビジネスで失敗する人の10の法則(ドナルド R.キーオ)の書評

ビジネスで失敗する人の10の法則
ドナルド R.キーオ
日本経済新聞出版

本書の要約

ドナルド R.キーオはビジネスで失敗しない10の法則を明らかにしています。これらの失敗に陥っても危険な徴候を見つけ、手遅れにならないうちに行動すれば、失敗の罠から抜け出せます。彼らは失敗しても、決してあきらめずに、そこから抜け出す方法を見つけ出し、絶えず前進しているのです。

ビジネスで失敗しない10の法則プラス1

自分より優れた人物と付き合うようにたえず努力すべきだと私は考えている。そうすれば間違いなく、自分を高めることができる。(ウォーレン・バフェット)

ウォーレン・バフェットビル・ゲイツが本書をおすすめしていたので、遅まきながら読み始めましたが、これが実に面白く、経営のヒントを貰えます。著者のドナルド R.キーオは、コカ・コーラのCEOとして活躍しましたが、バフェットはコカ・コーラを代表する人物がこのキーオだと述べています。バフェットは自分より優れた人物であるキーオから学ぶことで、コカ・コーラへの投資を決めるだけでなく、失敗しない経営者を見極めていたのです。

キーオの60年の経験から導いた10の法則(実際には以下の11の法則)を本書で明らかにしていますが、このうちの一つでも当てはまれば、あなたの仕事は高確率で失敗すると言うのです。実際にキーオはいくつもの失敗をしていますが、すぐに間違いに気づき、修正することで、同社を持続的に成長させることに成功します。

法則1:リスクをとるのを止める(もっとも重要)
法則2:柔軟性をなくす
法則3:部下を遠ざける
法則4:自分は無謬だと考える
法則5:反則すれすれのところで戦う
法則6:考えるのに時間を使わない
法則7:専門家と外部コンサルタントを全面的に信頼する
法則8:官僚組織を愛する
法則9:一貫性のないメッセージを送る
法則10:将来を恐れる
法則11:仕事への熱意、人生への熱意を失う

著者はかなりの成功をおさめている時にこそリスクを取るべきだと述べています。ロシア人が言うように「ものごとがうまくいきすぎているのはよくないこと」なのです。

いつも同じことを聞いて申し訳ないが、何もかも好調なのはなぜか。いま心配しておけば、今後はその点を心配しなくてもよくなる部分はもっとないのか。(ドナルド R.キーオ)

成功し続ける人は絶えずリスクをとっています。逆に成功に安住し、リスクを取らなければ、他の競合に負けてしまいます。最近ではベンチャー企業が大企業をディスラプトしていますが、自社のマーケットを奪われないために、大企業の経営陣は変化に適応し、積極的にリスクを取りにいくべきです。

1970年代に強者だったゼロックスは、パーソナルコンピュター分野でリスクを取らなかったために、アップルやマイクロソフトに破れてしまいました。現状に満足せずにリスクを取ることを恐れないことが、勝利への道であることを過去のさまざまなケーススタディが教えてくれています。失敗の歴史を学ぶことで、経営者は強い企業をつくれるようになります。

経営者は自社のブランドに愛着を持とう!

状況がかわったときに頑固に、それまでの流儀を守り通す。そうしていれば、失敗する。

私が子供の頃のコカ・コーラは、ひと目でコカ・コーラとわかる190mlの「瓶」を販売していました。このオリジナリティのある瓶で大きなシェアをとっていたため、サイズ変更や他の容器の検討が遅れました。そんな中ライバルのペプシコーラ社は360ml入りの瓶で、同じ価格で量は倍とキャンペーンをはり、売上を一気に2倍に増やしました。コカ・コーラの売上はほぼ変わりませんでしたが、ペプシとの差が一気に縮まったことで、同社はようやく変化を受け入れることができたのです。

IBMもマーケットが変化し、パソコンがシェアを高める中、大型コンピュータにこだわることで、存在感を失っていきました。変化が激しい時代には柔軟性をなくすことが経営のリスクになるのです。

固定観念に囚われすぎ、柔軟性をなくすことで、企業は衰退していきます。順調にビジネスが推移している時にこそ、時代の変化に敏感になり、柔軟に対応すべきです。

失敗したいのであれば、将来を恐れるといい。成功したいのであれば、将来を楽観し熱意を持って将来に立ち向かうべき。

将来を慎重に警戒することと将来を恐れることは異なります。メディアは科学的なデータを使って、将来への恐怖感を煽っていますが、それを鵜呑みにすることは危険です。歴史を振り返れば、悲観論はいつの時代にもありましたが、その多くは実現しなかったのです。

将来に楽観的になり、新たな課題を定義し、イノベーションを起こすことで企業は成長できます。リーダーは悲観論者になるのをやめ、将来を楽観し、パッションを持って、チームを率いるべきです。

モノが売れない時代となり、顧客との感情的なつながりをつくることが、ますます重要になってきています。売上と利益を伸ばすためには、LTVを高めることが欠かせなくなっています。

自分の会社に対して、顧客が何を求め、何を期待し、何を望んでいるのかをいつも忘れないようにする。

著者は自分が売っているものに愛情を注いできたと言います。LTVを高めるために、自社を応援してくれるファンを増やし、彼らを味方にすることを日々考えるようにすべきです。

顧客がブランドを応援してくれるようブランドの価値を高めることが、経営者の大切な役割になっています。強力なブランドがあれば、既存顧客を維持し、新規顧客を獲得できるだけでなく、パートナーや投資家を惹きつけることができます。経営者はブランドへの情熱を決して失わずに、常に顧客のことを考えるようにすべきです。

危険な徴候を見つけ、手遅れにならないうちに行動すれば、失敗の罠から抜け出せます。偉大な企業や優れた個人は失敗しても、決してあきらめずに、そこから抜け出す方法を見つけ出し、絶えず前進しているのです。


この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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