愛されるマーケ 嫌われるマーケの書評

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愛されるマーケ 嫌われるマーケ 日経BP 日本経済新聞出版

本書の要約

自社の商品やサービスが誰を喜ばせることができるのかを明らかにし、そのベネフィットを伝えることで、顧客との良好な関係を築けるようになります。企業やブランドの価値を支持してくれるファンを大切にし、事業価値を高めていくファンベースな経営を行うことで、企業の売上や利益がアップします。

ラバブルなコミュニケーションが必要な理由

マーケターが本来見るべきは数字ではなく、「人」です。どんな顧客にどんな価値を感じてもらい、どうやって喜んでもらうか。そんなラバブル(Lovable=愛されるべき存在)な活動が、マーケティングの本義であるはずです。(日経クロストレンド)

ステルスマーケティングやおとり広告などの悪質なマーケティング手法によって、顧客の企業に対する信頼が揺らいでいます。企業と顧客がよい関係を取り戻すためには、今こそマーケターが矜持を取り戻すべきです。

広告や商品のメッセージを盛ること(ちょい盛り表現)が、長年かけて築いてきたブランド価値を毀損してしまいます。キリンビバレッジはトロピカーナの景品表示法違反によって、一気に顧客の信頼を失いました。

吉野家のマーケターは「生娘シャブ漬け戦略」という舌禍事件によって、顧客の信頼だけでなく、従業員のプライドややる気を低下させました。両社のマーケターは顧客に喜んでもらうという姿勢を忘れ、売上や利益を重視することで、結局は顧客離れを起こしてしまったのです。

「マーケターは軍事用語をいつまで使うのか?」と日経クロストレンド編集部は疑問を呈します。私も広告会社で働いていた頃は、ターゲットやキャンペーンなどの軍事用語や顧客を「囲い込む」や「刈り取る」などの上から目線の言葉を使っていました。このような特殊な言葉を使いを続けていては、顧客との信頼関係など築けるわけがありません。顧客を一人ひとりの「人」と見ていれば、言葉使いも変わるはずです。最近では、私もできるだけ軍事用語や上から目線の言葉を使わないようにしています。

かつては、企業と生活者の間に情報の非対称という壁がありましたが、ネットからさまざまな情報が手に入ることで、上から目線からのコミュニケーションは通用しなくなっています。CX Ceative Studioの共同代表の田中信哉氏は、『現代のブランドは「ふさわしい人のそばで寄り添うもの」に変わりつつある』と指摘します。

マーケターは、上から目線のコミュニケーションではなく、気がつけば生活者の生活に溶け込んでいるような協調・共感型のコミュニケーションを心がけるべきです。顧客に喜んでもらえる「ラバブルな存在」になることで、結果、売上や利益がアップするのです。

顧客との関係を良好にするコミュニケーションとは?

マーケティングの歴史をひもとけば、売り手視点だった「4P(Product, Price, Place, Promotion)」のフレームワークは、顧客視点の「4C(Consumer Value, Cost, Convenience, Communication)」へとシフトしていきました。そうしたイメージで従来のマーケティング用語をずらしていくのも一つの考えだと思います。(小々馬篤)

産業能率大学経営学部マーケティング学科の小々馬篤氏は、顧客との良好な関係を築きたければ、4Pのフレームワークを4Cに変えるとよいと指摘します。マーケターが普段使う言葉を変え、4C起点で顧客に寄り添うことができれば、企業に対する信頼も高まります。

マーケターは人との人とのつながりを意識し、そのなかで企業と顧客の関係をご機嫌なものに変えていくようなコミュニケーヨンを考えるようにしましょう。生活者に愛着をもってもらえる商品やサービスを提供することで、LTVを高めることができます。そのために、企業は顧客に貢献すること、顧客の課題を発見し、それを解決する商品やサービスを開発しなければなりません。

顧客にその商品やサービスのベネフィットを理解してもらい、使ってもらうことから始まります。認知一辺倒のコミュニケーションではなく、顧客の課題を解決できるコミュニケーションを行うことで、顧客をファンに変えられます。熱狂的なファンが増えることで、口コミやSNSで応援してもらえるようになります。

マーケターの音部大輔氏は、「必要のない人にコミュニケーションの押し売りをしていることが問題だ」と言います。コミュニケーションを行う際には、次の2つを絞り込むべきだと述べています。
①自社の顧客は誰かを正しく認識すること。
②提供するベネフィットは何なのかをはっきりさせること。

自社の商品やサービスが誰を喜ばせることができるのかを明らかにし、そのベネフィットを伝えることで、顧客との良好な関係を築けるようになります。企業やブランドの価値を支持してくれるファンを大切にし、事業価値を高めていくファンベースな経営を行うことで、企業の売上や利益がアップします。

音部氏は顧客にパーセプションを変えてもらうための「パーセプションフローモデル」を明らかにしています。パーセプションフローモデルでは、消費者のバーセプション(認知)の変化を中心としたマーケティング活動の全体設計図をつくります。

「現状」→「(課題の)認知」→「興味」→「購入」→「試用」→「満足」→「再購入」→「発信(口コミ)」という8つのステップで顧客に行動を変容させてもらうのです。ブランド体験に満足してもらうことが、継続使用につながり、やがて顧客がファンとなり、企業を応援してくれえるようになります。顧客の満足から逆算することで、コミュニケーションのあるべき姿が見つかります。(音部大輔氏の関連記事

本書で紹介されているピエトロのファンベースのマーケティングやクラシコムのありがとうと言われる広告の作り方を読むことで、愛されるマーケターになるためのヒントをもらえます。

理解できる、共感できる、動機につながるコミュニケーションを心がけることで、顧客との関係を変えられます。上から目線のコミュニケーションをやめ、顧客起点のマーケティングを行うことの重要性を今回再確認できました。


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