2050年の世界 見えない未来の考え方
ヘイミシュ・マクレイ
日本経済新聞社
本書の要約
2050年の経済の規模は相対的に小さくなっているものの、日本は依然として世界の経済大国としての位置を保持しています。アメリカとの強固な同盟関係、製造業の高い能力、世界各地における資産の保有、そして日本文化の影響力は続いていきます。また、日本は高齢化社会の先駆けとして、他国の参考モデルとなるでしょう。
2050年の未来とは?
2050年には人口がどれくらいになっているかはもうだいたいわかるし、人びとがどこで暮らしているかも、ある程度わかる。世界の国・地域のうち、どこが急成長しそうか、どこが失速しそうかも判断がつく。これから経済を発展させていく原動力になるテクノロジーの輪郭も見える。(ヘイミシュ・マクレイ)
英国の著名ジャーナリストのヘイミシュ・マクレイが、その鋭い洞察と膨大な知識を武器に、今後30年後の未来を大胆に展望します。彼は経済学、地政学、歴史の3つの視点から、これまでの世界の変遷を解析し、私たちの未来をポジティブに予測します。
20世紀の社会構造や冷戦後の世界秩序の終焉を背景に、これから訪れるであろう大変革を読み解きます。 私たちが生きてきた時代の流れは、静かにしかし確実に変わりつつあります。その変化を先読みし、未来に備えるためには、マクレイの深い分析に耳を傾けることが不可欠です。
マクレイの分析の特徴は、根拠に基づく明るく前向きな未来像を描くことにあります。彼は、世界の主要な地域やグローバルなテーマを的確に捉え、それらの歴史や現状を明瞭に整理。読者には多角的な視点を提供しつつ、その中で彼独特の予測を織り交ぜています。
今後、世界の国際情勢は大きく変動すると予測されています。特にアジアの大国、中国は、その経済成長と力を持続するのが難しくなるかもしれません。中国の人口高齢化とともに減少が見込まれるため、国としての活気や力が衰え、国際的な対立よりも協力的な立場をとる国へと変わる可能性があります。
中国の経済や政治の後退は2050年までに鮮明になることが予測されています。その背景には、人口減少とともに中間層の国としての位置を強化する動きがあります。この変化は21世紀後半にも影響を及ぼすでしょう。 グローバルな視点でこのシナリオを考察すると、2040年代以降、中国の地位が後退する一方で、アメリカはその支配的な立場を維持します。この結果、中国とアメリカの関係は、2020年代よりも大きく改善する可能性が高まります。
一方、広大な国土を持つロシアもまた、困難な局面を迎えると言われています。既に進行中の人口の収縮は、国土の維持や経済の継続的な発展を難しくしています。その結果、内外の圧力により状況がさらに厳しくなる可能性が考えられます。
これらの国際的な変化の中で、日本はどのような役割を果たすべきなのでしょうか。日本は、自国の経済や社会の安定を維持しつつ、世界への貢献を考える必要があります。
2050年の世界に視野を広げてみよう。日本はそこでどのような位置にあるのだろう。中国のあり方は変わると考えられ、日本にとっては非常に大きな機会が生まれる。中国では、おそらく2030年代に政治体制になんらかの変化が起きて、いまの強権的な中央集権体制は、国民の要求や欲望を第一に考える体制にとってかわられると、わたしは考えている。
2050年の世界で、中国の政治体制と経済は大きな変化を経験し、その影響で日本には新たな機会が生まれると予想されます。2030年代に中国で政治の変動が起き、2050年までには経済と政治の後退が顕著になると考えられます。
この変化は、アメリカと中国の関係をより良好にし、アジア地域では日本が経済・政治のリーダーシップをとる可能性が高まるでしょう。一方で、全世界的には繁栄と健康、教育の向上が期待されますが、環境の課題も残ると予測されます。
2050年の変化を予測する10の要因
著者は2050年の変化を10の要因から予測します。
1、中間層の世界
2050年までに、世界の人口の約3分の2が中間層または富裕層に達すると予測されています。これは人類史上初の現象です。この大中間層は適切な医療や教育の受益者であり、良質な食事や多様な労働機会を持っています。さらに、通信革命のおかげで世界中の知識へのアクセスが容易になりました。産業革命が経済を変えたように、この中間層の台頭も人類に大きな影響を与えるでしょう。
2 、アメリカはいまよりも穏やかになり、居心地がよくなり、自信を深める。
アメリカの人口は増加し続けるため、先進国の中で最も若い国であり続ける見込みです。アメリカは引き続き成長し、多くの才能を引き寄せるでしょう。
3 、アングロ圏の台頭
2050年には英語を話す経済圏が拡大します。ナイジェリアやインドなどの英語を話す富裕層が増え、アメリカ、オーストラリア、イギリスなどのアングロ経済圏が世界の4割を占めるようになります。
4、中国世界最大の経済国は攻撃から協調へと転じる
2030年代に、高齢化と経済の鈍化が進む中国は、政治体制の大きな変化を迎える可能性が高まります。政府は民主主義に転換するか、現状を保ちながら価値観の変化に適応するかの選択を迫られるでしょう。適応を選ぶ場合、中国は世界との協調へと転じます。
5、EUは中核国と周辺国に分かれる
ドイツやフランスなどの経済が強い国と弱い周辺国の力の差が大きくなり、徐々に影響力が弱くなります。
6、インドとインド亜大陸明るい未来は手の届くところにある
インド亜大陸の重要性が増し、世界の未来を形づくる力をもつようになります。
7、世界におけるアフリカの重要性が高まる
アフリカの世界経済における役割が大きくなります。ナイジェリアが成功し、各国の教育レベルが高まれば、アフリカの多くの課題がかいけるされるはずです。
8、グローバル化は、モノの移動からアイデアと資金の移動へと方向転換する。
過去において、グローバル化は主にモノの移動に焦点を当てていました。国境を越えた貿易や物流の発展により、商品やサービスが世界中に広がり、経済的な結びつきが深まっていきました。しかし、今後はその範囲がさらに広がり、アイデアや資金の移動がその中心になっていきます。
9、テクノロジーが社会課題を解決する
テクノロジーは、私たちの生活をより便利で快適にしてくれる一方で、私たちの考え方や生き方を大きく変える可能性を秘めています。私たちは、テクノロジーの進歩を受け入れながらも、そのリスクを理解し、適切に利用していく必要があります。
10、人類と地球のより調和の取れた関係
高齢化が進み、富が増え、環境への意識が変わることやテクノロジーの進化により、地球への負荷を軽減することができるでしょう。これにより、持続可能な社会を実現することが可能になります。
著者は日本の未来も予測します。日本は独自の道を進む国として、特徴や文化をさらに強化していくでしょう。過去30年で内向きの傾向が強まってきましたが、世界はさまざまな分野で日本への期待を高めています。
経済の規模は相対的に小さくなっているものの、日本は依然として世界の経済大国としての位置を保持しています。アメリカとの強固な同盟関係、製造業の高い能力、世界各地における資産の保有、そして日本文化の影響力は続いていきます。また、日本は高齢化社会の先駆けとして、他国の参考モデルとなるでしょう。
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