マッキンゼー流 最高の社風のつくり方
ニール・ドシ
日経BP
マッキンゼー流 最高の社風のつくり方(ニール・ドシ)の要約
高業績をあげる組織は、ToMo(Total Motivation)が高くなるという共通点があります。非難バイアスを排除し、ピグマリオン効果を最大限に活用し、社員のモチベーションを高めましょう。柔軟性と適応性を企業文化に取り入れることが、組織の持続的な成功の鍵であり、リーダーの重要な役割になっています。
ピグマリオン効果が結果を左右する!
ピグマリオン効果は非難バイアスの裏返しだ。非難が消えると、期待が増す。期待が増すと、指導者は自ずとToMoの原則を活用するようになり、必然的に、指導される側のパフォーマンスが上がる。(ニール・ドシ)
テルアビブ大学のドブ・エデン教授が行った実験は、指導者の期待がどれほど強力に結果に影響するかを示しています。この実験では、イスラエル国防軍の将校と兵士を対象に、彼らの指揮能力を示すCP値という指標を使いました。しかし、このCP値は実際にはでたらめで、兵士たちの実際の能力とは関係ありませんでした。
驚くべきことに、CP値が高いとされた兵士たちは、実際に高い成績を収めました。一方、CP値が平均的とされた兵士たちは、期待通りの中途半端な成績となりました。この結果は、「ピグマリオン効果」として知られています。これは、人々の期待が実際の結果に影響を与えるというものです。
エデン教授はさらに、全員が優秀だと伝えられたチームが、実際に全員が高い成績を収めることを確認しました。これは、指導者の期待が、個人だけでなく、グループ全体の成果にも影響を与えることを示しています。 この実験から学べることは、指導者の期待や態度が、部下やチームのパフォーマンスに大きな影響を与えるということです。
期待が高ければ、その期待に応えようとする動機が生まれ、結果的に高い成果を上げることができます。しかし、逆に期待が低ければ、その低い期待に合わせてしまう可能性もあります。 この知識を持って、指導者や教育者は、部下や生徒に対する期待を高く持ち、それを伝えることで、より良い結果を引き出すことができるでしょう。期待は、人々の行動や成果に大きな影響を与える強力なツールとなり得るのです。
ToMo(Total Motivation)の原則は、人々の動機付けに関する考え方で、特に仕事の文脈でのモチベーションを理解するためのフレームワークとして提唱されています。(ToMoの関連記事はこちらから)
ToMoは、人々の行動の背後にある動機付けの要因を分析し、それがどのようにパフォーマンスやクリエイティビティに影響を与えるかを考察するものです。
ToMoの原則に基づくと、動機付けは以下の3つのポジティブな要因と3つのネガティブな要因に分けられます。
1、ポジティブな動機付けの要因
・楽しさ
自分自身のために行動する喜びや興奮。好奇心や探求心からくる動機。
・目的
行動が大きな意味や目的を持っていると感じること。
・可能性
行動が将来的に自分自身や他者にとっての利益や成果をもたらすと感じること。
2、ネガティブな動機付けの要因
・感情的圧力
恐れや義務感、他者の期待など、外部からの圧力によって行動すること。
・経済的圧力
報酬や罰、インセンティブなど、具体的な報酬や損失を避けるために行動すること。
・惰性
特定の理由なく、単に習慣や慣れから行動すること。
ToMoの原則によれば、ポジティブな動機付けの要因が高いほど、人々のクリエイティビティや生産性が向上し、逆にネガティブな動機付けの要因が高いと、パフォーマンスが低下するとされています。
フィードバックのREAPとは?フィードバックの文化が組織を強くする理由
あなたがリーダーとして、高業績を導く社風を構築したいのであれば、周囲の人々の非難バイアスだけでなく、自らのそれも正さなければならない。その一番簡単な方法は、フィードバックの方法を学ぶことだ。
リーダーとしての成功の鍵は、非難バイアスを克服し、効果的なフィードバックを提供することです。非難バイアスは、他者の行動を批判的に見る傾向を指します。これを乗り越えるための方法として、「フィードバックのREAP(REMEMBER、EXPLAIN、ASK、PLAN)モデル」が提案されています。
・思い出す (REMEMBER)
問題が発生した際、相手に悪意はないと自分に言い聞かせる。
・説明する (EXPLAIN)
相手の行動の背後にある可能性のある理由を考える。例:デビッドが集中できなかったのは、新しい提案について考えていたからかもしれない。
・尋ねる(ASK)
相手の視点や感じていることを直接尋ねる。例:「デビッド、先日の会議で何か気になることがあったの?」
・計画する (PLAN):問題の原因を共に特定し、改善策を立てる。
このREAPモデルを使用することで、非難の代わりに建設的なフィードバックを提供することができます。特に、リーダーがフィードバックの受け手となる場面では、自己改善の機会として受け入れることが大切です。効果的なフィードバックは、チームの信頼と協力を深め、全体の業績を向上させる力があります。
高業績を目指す組織の鍵は「適応性」です。適応性を持つ組織は、変化に柔軟に対応し、新しい環境や課題に適切に反応することができます。そのためには、創造的で問題解決能力が高く、粘り強い人材が必要です。このような人材は、ToMoが高いと言われ、彼らは自らの内発的な動機から行動します。
ToMoが高いとは、人が自分の仕事や役割に対して持つ内発的な動機が強い状態を指します。この動機は、外部からの報酬や評価ではなく、自分自身の成長や達成感からくるものです。ToMoが高い人は、困難な状況でも前向きに取り組み、組織の適応性を高める要因となります。
また、組織は「戦略的パフォーマンス」と「適応的パフォーマンス」のバランスを取る必要があります。戦略的パフォーマンスは、計画や目標に基づく成果を追求すること。一方、適応的パフォーマンスは、変化や不確実性に柔軟に対応することを意味します。この二つのバランスを保つことで、組織は持続的な高業績を実現できます。組織を硬直させずに、柔軟に運営すること、適応力を高めることがリーダーの役割です。
高業績をあげる組織は、適応性を中心にした文化を築いています。ToMoの高い人材を育成し、非難バイアスを排除することで、組織全体の適応性を高め、持続的な成功を追求できるようになるのです。
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