帰納の落とし穴に陥らない方法 賢い人の秘密 (クレイグ・アダムス)の書評

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賢い人の秘密 天才アリストテレスが史上最も偉大な王に教えた「6つの知恵」
クレイグ・アダムス
文響社

賢い人の秘密の要約

帰納法は、個別の観察から一般的な原則や法則を導き出す推論方法です。しかし、この方法にはいくつかの落とし穴が存在するので、注意を払う必要があります。安易にパターンを見出し、結論を急ぐことで、私たちはしばしば物事を誤解します。そんな時にはアリストテレスのルールを思い出し、正しい答えを導くようにしましょう。

帰納の落とし穴とは?

帰納とはシンプルに言えば、個別事例のしるしから、普遍的な法則を生み出すことなのだ。(クレイグ・アダムス)

紀元前に活躍したギリシャの偉大な哲学者アリストテレスは、「人類共通の思考の秘訣」を見出しました。著者のクレイグ・アダムスは、アリストテレスの教えを現代の日常生活に応用する方法をわかりやすく、かつ、シンプルに解説しています。

帰納法は、個別の観察から一般的な原則や法則を導き出す推論方法です。しかし、この方法にはいくつかの落とし穴が存在するので、注意を払う必要があります。

私たちの思考には、パターンを発見し、様々な場面で関連性を追跡する能力が備わっています。共通点や類似点を見つけるとき、私たちはしばしばこれらのパターンが自然に現れるかのように感じます。これは日常生活の中で頻繁に活動する私たちの思考パターンの特徴です。

特に、一つの事象Aが別の事象Bを引き起こすという直接的な因果関係は容易に理解できますが、逆の方向(BからAへの遡及)は、複雑さゆえにしばしば見過ごされます。

「Bの原因はAである」という結論に達した際、その考えはしばしば強い説得力を持ち、明確な事実であるかのように感じられます。しかし、帰納的思考の過程で早急に答えを見つけ出すと、結論の飛躍が発生しやすくなります。このような飛躍は、事象間の関係を過度に単純化し、実際よりも単純な解釈を導き出す危険性があります。そのため、特定の原因と結果の関係を確定する際には、慎重な検討と複数の視点からの考察が必要です。

帰納のプロセスには飛躍がある。関連に気づき、理論を組み立てる。その間には論理的な開きがあるのだが、一気に溝を飛び越えてしまう。

人の心は、物事の間のつながりを見つけ、そのつながりに対して合理的な説明を思いつくと、その間に強い因果関係があると考えることがよくあります。この認識の傾向は、私たちの日々の判断や意思決定に影響を与える重要な要素となっています。

そんな時には、アリストテレスが指摘した「後件肯定」という論理の誤りについて思い出しましょう。「後件肯定」は、論理学における一般的な誤りの一つで、特定の結果からその原因を誤って推定することを指します。この論理の誤りは、ある事象(後件)が起こったとき、それを必然的に引き起こすとされる別の事象(先件)が存在したと結論付けることにあります。

例えば、「雨が降ると地面が濡れる」という事実があるとします。後件肯定の誤りは、「地面が濡れているから、雨が降ったに違いない」と結論付けることです。この推論は誤りである可能性が高いです。なぜなら、地面が濡れている他の原因(例えば、散水など)が存在するかもしれないからです。

「浮気者はみなおしゃれをして夜間出歩く」という前提から、「おしゃれをして夜間出歩くすべての人が浮気者である」と結論付けるのもこの誤りです。実際には、おしゃれをして夜間出歩く人の中には浮気と無関係な多くの人が含まれるため、このような単純な結論は誤りとなります。

実際には、おしゃれをして夜間出歩く人の中には、単にファッションを楽しんでいる人や、ナイトクラブやカジノに行く人など、浮気とは関係ない理由で外出している人が大多数を占めます。このような誤った推論では、浮気者を見つけ出すことはできても、同時に無関係な人々も誤って疑うことになります。

帰納の罠に陥らないための2つのルール

わたしたちは世界を読み違える。しかし、どれほど頻繁に、どれほどオートマチックに、どうして読み違えるのかを理解すれば、視界は開けるはずだ。

アリストテレスは、信頼できるしるしと当てにならないしるしを区別する方法を発見しました。彼は、当てにならないしるしには2つの型があることに気づいたのです。この洞察を理解することで、物事の捉え方が変わります。帰納的思考に関するこれまでの議論を2つの基本ルールに要約することができます。

・ルール1
AがBに伴って起こることがあっても、AがBの原因であるとは限りません。つまり、ある事象が他の事象に続くというだけでは、その因果関係を確定することはできないということです。

・ルール2
AがBの前に起きたとしても、必ずしもAがBの原因であるとは限りません。時間的な前後関係だけでは、因果関係を断定することはできないのです。

これらのルールは、事象間の関連性を考える際に重要な指針となり、誤った因果関係の推定を避けるのに役立ちます。アリストテレスの教えは、複雑な現象を理解し分析する際に、今日でも非常に有効です。

抽象的な概念を理解することは重要ですが、それを適切なタイミングで思い出す方法はまだ完全には理解されていません。しかし、この2つのシンプルなルールを覚えておくことで、世界をより慎重に観察する手助けとなります。

アリストテレスのルールは、無闇に事象を結びつける危険性を認識し、思考の自動的な流れに流されそうになったときに、私たちを警鐘する内なるベルのようなものです。

心がパターンを求めるあまり、私たちはしばしば物事を誤解します。このことを思い出させ、警戒させるのがアリストテレスのルールです。物事は一見したとおりではないことや、先入観に基づく誤解が起こりやすいことを認識することが重要です。

ステレオタイプや一般化、早合点などの思考の罠を知り、どのようにしてそうした誤りに至ったのかを自覚し、思考の癖を理解することが、間違いを避ける鍵です。そして、心が自動的に見つけ出す関連性に疑いを持ち、批判的に考えることが大切です。アリストテレスの2つのルールを用いて、帰納の落とし穴に陥らないようにしましょう。

 

 

この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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