ステイ・スモール 会社は「小さい」ほどうまくいく(ポール・ジャルヴィス)の書評

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ステイ・スモール 会社は「小さい」ほどうまくいく
ポール・ジャルヴィス
ポプラ社

本書の要約

規模の拡大を目指さないカンパニー・オブ・ワンのアプローチは、規模拡大に伴うマイナス面を回避し、社員数、費用、ストレスを過度に増やすことなく、収入、楽しさ、熱心なファン、目的意識、自由、経験を増やすことで、変化の激しい市場で利益を確保し、個人としても困難な状況にも対応できる余裕を確保する賢明な長期戦略です。

人生を豊かにするカンパニー・オブ・ワンとは何か?

規模を小さくすること、それはものを捨てることだけを意味するのではない。思考を明晰にすることでもある。必要最低限の生活をはじめたことで、仕事でもほんとうに必要なことがはっきりとわかるようになった。(ポール・ジャルヴィス)

ビジネス環境が激変する現在、仕事に必要なものと不要なものの常識が変わっています。市場が多様化するにつれて、従来の「会社を大きくすればよい」という考え方だけが正しいわけではなくなっています。時には規模を縮小することで、成功に近づけることもあります。

著者のポール・ジャルヴィスは「カンパニー・オブ・ワン」の重要性を指摘します。カンパニー・オブ・ワンのアプローチは、規模拡大に伴うマイナス面を回避し、社員数、費用、ストレスを過度に増やすことなく、収入、楽しさ、熱心なファン、目的意識、自由、経験を増やすことで、変化の激しい市場で利益を確保し、個人としても困難な状況にも対応できる余裕を確保する賢明な長期戦略です。

このアプローチは、ひとりでやるビジネスだけでなく、小さな会社のオーナーから大企業のリーダーまで、誰でも自分の仕事にオーナーシップと責任を持ち、市場で価値を発揮できるようにする考え方やモデルです。

従業員を雇うことなく、自分自身でビジネスを行うことで、より自由で柔軟なライフスタイルを実現することができます。また、ビジネスの規模を小さく保ち、質の高いサービスを提供することで、収益性を向上させる方法についても解説されています。

広告によって〝もっとたくさん〟への執着が煽られ、幸福や充足感が約束されますが、それは実現不可能な空約束に過ぎません。時には、〝十分〟あるいは〝もっと少なく〟を目指すことが必要です。なぜなら、〝もっとたくさん〟を求めると、生活やビジネスの両方でストレスや問題、責任が増えることが多いからです。

カンパニー・オブ・ワンが組織を強くする理由

従来の会社は、たくさん人を雇ったり、多額の資金を投じたり、増えた社員を支えるために複雑な設備を調えたりすることで問題を解決しようとする。わたしは、〝もっと〟を求める問題解決策には興味がない。複雑でコストがかかり、責任も大きくなって、たいてい代償も増えるからだ。〝もっと〟を追求するのはいちばん手っ取り早い答えだが、いちばんかしこい答えとはいえない。わたしは規模拡大の道をとらずに問題解決に取り組むことで、よろこびと経済的な利益を得てきた。わたしもその他大勢の人も、いまあるリソースを使って問題に取り組んでいる。工夫は少し必要だが、そうすることで長期的に安定したビジネスを築くことができる。経営をつづけるのにあまり多くのものを求められないからだ。

カンパニー・オブ・ワンの採用によって、従業員や資本を持たないことで、自分自身のライフスタイルを自由に選択できることができます。ビジネスの拡大によって従業員を雇用したり、資本を調達することで生じるストレスや責任を回避することができます。このように、ビジネスオーナー自身がコントロールを保持することができ、自己のライフスタイルに合わせた働き方を選択することができます。

また、カンパニー・オブ・ワンはリスクを最小限に抑えることができます。ビジネスの規模が小さいため、大きな投資をする必要がなく、マーケットの変動や経済の変化に影響を受けることも少なくなります。さらに、ビジネスオーナー自身が全ての決定を下すことができるため、リスクの最小化につながります。

そして、カンパニー・オブ・ワンでは、自己のスキルや能力を最大限に活用することで、より高い利益を得ることができます。自分自身がビジネスの主要な資産であるため、自己のスキルを高め、自己研鑽を積むことで、より高い品質のサービスを提供し、それによってより高い利益を得ることができます。

大企業に勤めていても、自分で自分を守らなければなりません。学びやスキルアップに個人が自己の成功を定義し、その達成に向けて主導的な役割を果たすことが必要です。

自己投資を行い、他者に貢献できる人は組織の中でも力を発揮します。ダートマス大学のビジャイ・ゴビンダラジャン教授の最近の研究によると、従業員5000人あたり少なくとも250人は真のイノベーターであり、25人はイノベーターであるのと同時に優秀な社内起業家(カンパニー・オブ・ワン)でもあることが明らかになっています。

経営者は社内起業家に投資をし、従業員のモチベーションを高めるようにすべきです。社内でアイデアを出し、主導的な役割を果たす社内起業家を育成することで、会社全体にとって大きな利益が生まれる可能性が高まります。このような環境を整備することで、イノベーションが起こり、自社の競争力を向上できます。

カンパニー・オブ・ワンを効果的に運営するには、職務に必要なスキルを備えるだけでは不十分です。セールス、マーケティング、プロジェクト管理、および顧客維持についても知識が必要です。通常の企業では、従業員はひとつのスキルに特化することができますが、カンパニー・オブ・ワンでは、大企業に所属していたとしても様々なスキルを身に着けておいたほうがよいのです。

ビジネスの規模を拡大することが、必ずしも問題解決につながるわけではありません。実際には、無理な拡大はビジネスの長期的な存続に悪影響を与える可能性があります。ビジネスの成功の定義は人それぞれ異なりますが、問題解決能力や持続可能性が重要な要素であることを理解する必要があります。したがって、ビジネスが持続可能であるかどうかを考慮しながら、適切な規模で成長することが重要です。


 
 

 
 
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