経営読書記録 表 (楠木建)の書評

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経営読書記録 表
楠木建
日本経済新聞出版

経営読書記録 表 (楠木建)の要約

楠木建氏によると、良い書評とは読者がその本を読みたくなるような魅力を持つものだと言います。彼は書評を通じて、読者が自分に合う本を見つけやすくし、同時により多くの人に読書を習慣として取り入れてもらうことを目指しています。また、経営者が読むべき良書を紹介することで、経営スタイルを変えることも目指しています。

書評を書く意味とは?

読書という行為は事後性が強い。いろいろな本を読んでいくうちに、ようやく読書に固有の価値が分かる。いよいよ読書が楽しくなる。そうこうしているうちに、読書が習慣になる。問題はいかに事後性を乗り越えるかにある。(楠木建)

読書を習慣化するためには、いくつかのコツがあります。まずは、読書を好きになることが重要です。自分の興味や関心に合った本を選び、楽しみながら読むことが大切です。

さらに、読書の時間を確保することも大切です。忙しい日常の中でも、少しの時間を読書に割くことができるように工夫しましょう。例えば、通勤時間や寝る前の時間を活用することができます。

著者の楠木建氏が書評を書く主な動機は、読んだ本から得た価値を他者と共有することにあります。楠木氏にとって、良い書評の唯一の基準は、「その書評を読んだ人が本を読みたくなるかどうか」です。

私自身も毎日、この書評ブログを書いていますが、読者から「この本を読みたくなった」という反応や著者からの「紹介してくれてありがとう」という言葉が、執筆の励みになっています。

楠木氏は冒頭で、私が好きなアダム・グラントの「THINK AGAIN」を紹介しています。

本書を読み進めていくうちに、僕も「考え直す」ことについて考え直す必要性を痛感した。翻って自分には思考の柔軟性があるのか。仕事や生活において重要な問題を再考しているのか。自分の信念に固執し、トータリアン・エゴに陥ってはいないか。と自問自答してみると、どうも怪しい。

思考力と柔軟性は、それぞれ異なる能力であり、時にはトレードオフの関係にあると言えます。思考力は論理的な思考や問題解決能力を意味し、一方で柔軟性は新しいアイデアや視点を受け入れる能力を指します。これらは反対の要素のように見えるかもしれませんが、実際には相互に関連しています。

自分の信念が挑戦されると、人はしばしば固く門戸を閉ざす傾向があります。これは「トータリアン・エゴ」(全体主義的エゴ)という心理学の概念で、自分の信念に反する情報や知識を無意識のうちに排除してしまう状態を指します。このため、既存の考え方を新しい視点で見つめ直すのが難しくなるのです。

思考力と柔軟性は別々の概念ではありますが、互いに関連しており、両方を高めることでより良い結果を得ることができます。自分自身の思考の柔軟性を高め、常に謙虚な姿勢で考え直すことは、個人の成長や成功において重要な要素となります。

自分の意見や考えを個人のアイデンティティから切り離すことにより、世界の見方が変わります。時代の流れに適応するために、アンラーニングを行うことが、自己のアップデートにつながります。

経営者・投資家・従業員の適切な関係とは?

仕事と趣味は異なります。趣味であればひたすら自分を向いて自分のためにやればよいのですが、仕事は自分以外の誰かの役に立って初めて仕事になります。仕事に限って言えば、自己評価には一切の意味がないというのが僕の持論です。仕事は成果がすべて。「お客」の評価を経たものだけが「成果」なのです。「経営」という仕事はその最たるものでしょう。自分の会社をどんなに良い会社だと思い、どんなに愛していたとしても、市場で評価されなければ意味がありません。

中神康議氏の投資される経営 売買(うりかい)される経営の楠木氏の書評からも学びを得られます。経営者と投資家(株主)は時に利害が対立し、対峙する二律背反する存在として捉えられることがあります。

しかし、本書は両者が敵対するものではなく、互いに対話することで学びあえる存在と捉えています。 経営者が稼ぐ力がある商売をつくり上げ、従業員が力を合わせて仕事をすれば、稼ぐ力はますます強まります。経営者は自らの職責を果たし、従業員の給料も増えます。結果として株価も上がるため、投資家も利益を得ることができます。さらに、従業員が株の一部を保有していれば、株主としての利益も享受することができます。

このような関係性においては、三者の対立やトレードオフは解消され、皆が豊かになるトレードオンの関係に変容します。経営者、従業員、投資家の利益が一体となり、共同の目標に向かって協力することが重要です。

「三位一体」という考え方は、新しい経営モデルではなく、むしろ古くから存在する経営の王道であると言えます。経営者が経済活動を通じて長期利益を追求し、従業員に報酬を与え、投資家には成果を還元する、これこそが健全な経済の基本です。言い換えると長期利益の追求をそれぞれのステークホルダーが目指すべきです。

さらに、経営者は顧客、従業員、投資家から共感されるパーパスをつくり、それを実現することが求められています。企業の目的やビジョンを明確にし、社会的な価値を創造することで、顧客や従業員、投資家の信頼を得ることができます。経営者は、経済の発展だけでなく、社会的な責任も果たす存在としての役割を担っています。

長期的な利益を生み出すことができれば、投資家からの評価を受け、株価も上昇することがあります。株主への配当は利益の分配方法の一つですが、利益がなければ配分はできません。経営者が利益を出すことができるビジネスを構築すれば、雇用を創出し、維持することが可能になります。

経営者の役割とは何か?

楠木氏はBUILD 真に価値あるものをつくる型破りなガイドブック(トニー・ファデル)も取り上げています。

最高のアイデアはビタミン剤ではなく鎮痛剤でなくてはならない。ビタミン剤は不可欠ではない。ひっきりなしに続く日常的な不快な体験を除去する──ここにプロダクトの価値がある。人生はささやかな、それでいてとんでもない不便に満ち溢れている。しかし、世の中の人々はそれに慣れている。だから誰も問題の存在自体に気づいていない。

プロダクトの正体は、ユーザーが手に入れる前から始まります。ユーザーがプロダクトに注目し、興味を持つきっかけを作ることが重要です。そして、ユーザーがプロダクトを手に入れた後も、その価値を実感できるように続けることが必要です。これは、カスタマージャーニーと呼ばれるプロセスの一部です。

プロダクトは、ユーザーのニーズや問題を解決するために存在しているので、そのニーズや問題を理解し、プロダクトに反映させることが重要です。 つまり、プロダクトは単につくって売って終わりではありません。ユーザーの視点を大切にし、ユーザーのカスタマージャーニーのすべてを考慮に入れることが求められます。

見えないものを見えるものにするためには、顧客の「なぜ」に答えることが必要です。そして、その回答がユーザーにとって納得感や価値をもたらすものでなければなりません。

プロダクトが破壊的であることは重要ですが、一度にすべてを破壊しようとするのは禁物です。なぜなら、顧客の経験は常に連続しているからです。私たちは顧客の頭と心を自分たちの都合でリセットすることはできません。 急がば回れという言葉があります。

一発勝負ではなく、カスタマージャーニーに寄り添いながら、バージョン1、2、3……と重ねていく中で、顧客に経験をじっくりと蓄積してもらうことが肝要です。 顧客は新しいプロダクトを受け入れる際に、変化に適応する必要があります。

そのため、私たちは顧客のペースに合わせてプロダクトを進化させる必要があります。一度に大きな変化をもたらすと、顧客は戸惑いや抵抗を感じるかもしれません。しかし、少しずつ改良や新機能を追加することで、顧客は徐々に新しい経験を受け入れることができます。

また、顧客の経験を重視することは、顧客との信頼関係を築くためにも重要です。顧客がプロダクトに対してポジティブな経験を積み重ねることで、彼らは私たちのプロダクトに対してより忠誠心を持つようになります。その結果、顧客の満足度やリピート率が高まり、ビジネスの成果も向上するでしょう。

破壊的なプロダクトを作り出すためには、顧客の経験を蓄積しながら進化させていくことが重要です。一度にすべてを変えようとするのではなく、じっくりと顧客と向き合いながら、プロダクトを改善していくことが成功への道だと言えるでしょう。

CEOとしての役割は非常に重要であり、組織全体の成功に大きく貢献します。CEOは、高いリーダーシップと戦略的な思考を持ちながら、組織のビジョン実現のために努力する必要があります。

まず、CEOは組織内外のステークホルダーとの関係構築が重要な役割です。組織の利害関係者とのコミュニケーションを円滑に行い、信頼関係を築くことが求められます。これにより、組織のパフォーマンスを向上させることができます。

また、CEOはリスク管理も重要な役割です。ビジネスの環境は日々変化しており、様々なリスクが存在します。CEOは組織の将来に関わる潜在的なリスクを予測し、適切な対策を講じる必要があります。これにより、組織の安定性と持続可能性を確保することができます。

さらに、CEOはメンバーに対してパーパスやビジョンを示す役割も担っています。組織の目標や方向性を明確にし、メンバーが共有しやすい状況を作ることが重要です。

また、それを実現するための文化、戦略、組織を構築することもCEOの役割です。組織全体が一体となり、共通の目標に向かって取り組むことができます。 CEOとしての役割は多岐にわたりますが、組織の成功には欠かせない存在です。高いリーダーシップと戦略的な思考を持ちながら、組織のビジョン実現に向けて積極的に取り組むことが求められます。

そのためには、組織内外のステークホルダーとの関係構築やリスク管理なども重要な要素となります。CEOは組織全体を牽引し、成功へと導く存在として活躍することが期待されています。

本書を読んでいて、デイヴィッド・バックマスター給料―あなたの価値はまだ上がるが「積読」になっていることに気づきました。また、クックマートの競争戦略――ローカルチェーンストア・第三の道(白井健太郎)を購入し、早速、この2冊を読了しました。これも楠木氏の書評のおかげです。


この記事を書いた人
徳本

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数
iU 情報経営イノベーション専門職大学 特任教授 

■著書
「最強Appleフレームワーク」(時事通信)
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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