フローとストック 世界の先が読める「思考」と「知識」の法則 (細谷功)の書評

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フローとストック 世界の先が読める「思考」と「知識」の法則
細谷功
KADOKAWA

フローとストック(細谷功)の要約

著者の考案したCAFSマトリックスを活用することで、現在の動きの構造を明らかにし、生じている課題や歪みを速やかに特定することができます。この洞察に基づいて未来に向けた仮説を立て、具体的に行動することで、積極的な改善とイノベーションを実現することが可能になります。

CAFSマトリックスとは何か?

世の中の具体的な個別の事象を抽象度を上げて連続的に捉えることで、その変化のメカニズムからさまざまな事象を説明し、次に起きる出来事の予想を可能にする。(細谷功)

フローとストックは、ベストセラー具体と抽象に基づき、新たな分析フレームワークである「CAFSマトリクス」を提案する書籍です。本書では、具体的な事例を用いて、どのようにして世界を解釈するかについて探求されています。

CAFSマトリックスは、著者によって独自に考案されたフレームワークで、未来予測や問題解決の効果的な手法として紹介されています。このモデルは、「具体と抽象」という横軸と、「フローとストック」という縦軸を使用し、これらの要素から成る二次元のマトリックスを構築します。

CAFSとは、Concrete(具体)、Abstract(抽象)、Flow(フロー)、Stock(ストック)の各頭文字を取って名付けられました。 このマトリックスを利用することで、具体的な事象やデータの流れ(フロー)と、これらが時間と共に蓄積される知識やリソース(ストック)を効果的に結びつけ、新たな知見や洞察を引き出すことが可能です。

世の中の変化は、何らかの入力と出力が存在し、その結果が履歴として蓄積されるという形で一般化できます。このプロセスにおいて、「フロー」と「ストック」という概念が重要な役割を果たします。

フローは日々の出来事や行動、つまり変化の過程を表し、これらが積み重なることで新たな結果や状態を生み出します。一方で、ストックはこれらフローによって得られた結果や状態が蓄積され、長期的な影響を持つ概念です。

例えば、ユーザーの経験や広告への反応(フロー)が蓄積されて形成される企業ブランド(ストック)、または政党や政治家の振る舞い(フロー)が積み重なり、特定の政党や政治家への支持(ストック)として表れます。これらの例からもわかるように、フローは行為(動詞)であり、ストックはそれによって生じた状態(名詞)です。この二つの相互作用が、世の中の変化を理解するための鍵となり、戦略的な意思決定に役立てることができます。

組織や会社のライフサイクルも、人の成長と類似したアナロジーで考えることができます。創業期のスタートアップは、「ヒト・モノ・カネ」といったリソースがほとんどない「ないないづくし」の状態からスタートします。

しかし、時間が経過するにつれて、これらの物理的なリソースに加え、「情報」「ノウハウ」「ブランド」「実績」「信頼」といった無形の資産が蓄積され、組織は成長していきます。 このようにリソースが積み重なる過程を「ストック」と捉えると、初期の不足を乗り越えた企業は、時間とともに「ストック型」の大企業へと変貌します。

これらの企業は、蓄積された豊富なリソースを活用して、市場での強固な地位を築いたり、さらなる成長を遂げたりすることが可能です。組織の成長過程を理解することは、戦略的な意思決定や将来の展望を考える上で重要であり、フローとストックの概念を用いることで、そのダイナミクスをより深く把握することができます。

フローに具象と抽象という概念を取り入れたCAFSマトリックスを活用することで、個々の事象を単独で捉えるのではなく、より大きな文脈での理解を深めることができます。これにより、広い視野での問題解析や戦略的思考が促進され、未来をより正確に予測することができるようになります。

CAFSマトリックスでイノベーションを起こす方法

「あるものから」の発想が「ストック型」思考回路であり、「ないものから」の発想が「フロー型」思考回路ということです。

日々の「思考」というフローが積み重ねられることで、「知識」というストックが蓄積されます。これは私たちが日常的に経験する重要な学習プロセスであり、成長には欠かせない要素となります。

安定した環境下では、過去の経験やデータが未来を予測するのに役立つため、知識の蓄積(ストック)が優位となります。しかし、変化が激しい環境下では、過去のデータや情報が役立たなくなります。このような状況では、新しい技術を活用するなどして迅速に対応する即興的なフローが強みを発揮します。

「ストック型」の思考回路は、過去の経験や知識を元にして物事を考える傾向があります。これは、蓄積された知識や経験が基盤となっているため、安定感や確実性を持っていると言えます。一方、「フロー型」の思考回路は、新しいアイデアや発想を生み出す際に活性化されます。過去の枠組みにとらわれず、柔軟な発想が可能となります。

具体と抽象という対照的な概念は、私たちが新しいアイデアやシステムを生み出す際に欠かせない要素です。具体は目に見える現実的な物事を指し、抽象はそれを超えた概念やアイデアを表します。人間は具体的な問題やニーズに対処するために具体的なアプローチを取りますが、抽象的な考え方や概念を取り入れることで革新的な解決策や新たな視点を生み出すことができます。

新しい仕組みやアイデアを生み出す過程で、具体と抽象を行き来することは不可欠です。具体的な問題を抽象化して捉え、それに基づいて新たなアイデアを具体化することで、創造性を発揮し、革新的な成果を生み出すことが可能となります。それによって、私たちは常に新しい課題や変化に適応し、進化していくことができます。

時間の経過とともに、私たちはさまざまな歪みや課題に直面します。しかし、その歪みや課題に目をつけ、新たなアプローチや仕組みを生み出すことで、イノベーターが登場し、世界は次のステージへと導かれていきます。イノベーションは、具体と抽象の融合から生まれるものであり、私たちの生活や社会をより良い方向に導く力を持っています。

人間が根源的に有している抽象化能力をはじめとする思考力や、それを知識やルールとして捉える「ストックとしての抽象」の力であるということに鑑みれば、今後も類似のパターンで世の中が動いていくことは容易に予想できます。 人間の持つ抽象化能力は、新たなアイデアや概念を生み出す上で重要な役割を果たします。この能力を活用し、フロー視点で具体的に考えてみましょう。

身の回りの事象にCAFSマトリックスを適用することで、現状の動きの構造を理解し、生じている歪みを早期に察知することができます。この洞察をもとに、先見の明をもって未来の仮説を立て、PDCAサイクルを回すことで、最終的にはイノベーションを引き起こすことができます。このプロセスは、抽象的な思考と具体的な行動を組み合わせることで、より効果的に課題に対処し、新しい価値を生み出す手段となるのです。

『ストックとしての抽象』をリセットして、『フローとしての具体』から考え直してみよう。

著者は、フローとストックを通じて、思考と知識の相互作用とその法則を詳細に解説しており、読者がこれらの概念を実際にどう活用するかについても指南します。書籍は、具体的な分析や豊富な事例を通して、これらの法則をわかりやすく説明しており、著者の独自の視点と深い洞察力が光っています。

また、膨大な情報の中から本質を見極め、状況を客観的に分析するための方法やスキルについても詳しく触れられており、読者にとっては将来の展望を考えたり、問題解決に取り組む際の貴重なガイドとなるでしょう。

この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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