20世紀の後半から21世紀の初頭にかけて高く評価されてきた、従順で、論理的で、勤勉で、責任感の強い、いわゆる「優秀な人材」は、今後「オールドタイプ」として急速に価値を失っていくことになるでしょう。一方、このようなオールドタイプに対置される、自由で、直感的で、わがままで、好奇心の強い人材=「ニュータイプ」が、今後は大きな価値を生み出し、評価され、本質的な意味での「豊かな人生」を送ることになるでしょう。(山口周)
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時代はニュータイプな人材を求めている!
時代が急激に変化する中で、過去の常識が通用しなくなっています。大量生産の時代のマインドセットを捨て、新しい考え方を身につける必要があります。今日はそんな時代を生き抜くためのヒント満載の山口周氏のニュータイプの時代を紹介します。このブログでは山口氏の書籍をなんどもピックアップしてきましたが、今回も著者な多様な視点から時代を読み解く力から多くの学びを得られました。
まず、前提条件を整理しましょう。求められる才能とは時代の要請に対して答えを引き出す希少な能力や資質なのですが、それが大量生産時代のものとは異なってきていることを認識すべきです。
20世紀の後半から21世紀の前半まで、50年ほどのあいだ「望ましい」とされてきた思考・行動様式の多くは、今日、急速に時代凝れのものになりつつあります。 いわゆる「優秀さ」は文脈依存的な概念であることに注意が必要です。どのような時代にあっても、その時代において「望ましい」とされる人材の要件は、その時代に特有の社会システムやテクノロジーの要請によって規定されることになります。これはつまり、世の中の要請に対して相対的に希少な能力や資質は「優秀さ」として高く評価され、逆に過剰な資質や能力は「凡庸さ」として叩き売られる、ということです。
現代は「モノ」が過剰になる一方で、「問題」が希少になっている現在の社会において求められる人材要件に対して、人間のマインドは追いついていきません。人の考えは保守的なため、偏差値に代表される「正解を出す能力」を「優秀さ」のモノサシに使っています。
確かに人類は原始時代以来、20世紀の後半までずっと「問題が過剰で解決策が希少」という時代を生きてきました。人材育成の基本的な目的は「問題解決能力の向上」に置かれてきましたが、今は過去の常識が通用しなくなっています。
私たちは人類史の中で初めて「問題が希少で解決策が過剰」という時代に突入し、この時代にあった能力を養う必要があるのです。それは、「問題の発見」と「問題の解決」を組み合わせることが求められます。現在は「問題」そのものが希少になっているわけですから、問題の「発見能力」を鍛えるようにしましょう。現代は、問題解決者の価値が減り、問題発見者の価値がアップすることを理解し、そのための能力を身につけるべきです。
山口氏はこれから求められる行動様式を以下のようにまとめています。オールドタイプを抜け出し、ニュータイプにならなければ、価値を提供できなくなるのであれば、私たちは学び方や行動様式を変えなければなりません。
・「正解を探す」→「問題を探す」
・「予測する」→「構想する」
・「KPIで管理する」→「意味を与える」
・「生産性を上げる」→「遊びを盛り込む」
・「ルールに従う」→「自らの道徳観に従う」
・「一つの組織に留まる」→「組織間を越境する」
・「綿密に計画し実行する」→「とりあえず試す」
・「奪い、独占する」→「与え、共有する」
・「経験に頼る」→「学習能力に頼る」
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人材をアップデートする6つのメガトレンド
資本主義はもはや機能しなくなっていますが、私たちは相変わらずオールドモデルで役立つ教育を受け続けています。そろそろこの呪縛から逃れないと、自分を過去の遺物にしてしまいます。激しい変化が起こっている現状で、自分の価値を高めるためには思考や行動様式をアップデートしなければなりません。なぜ、ニュータイプが求められているかを6つのメガトレンドから学んでいきましょう!
メガトレンド1 飽和するモノと枯渇する意味
私たちは「モノが過剰で、意味が希少な時代」を生きています。「役に立つモノ」を生産し続けようとするオールドタイプは価値を失うことになる一方で、希少な「意味」を世界に対して与えるニュータイプは大きな価値を生み出していくことになります。
メガトレンド2 問題の希少化と正解のコモディティ化
ありとあらゆるモノが過剰になり、「問題」が希少化してくると、必要な能力が「問題の解決」から「問題の発見」にシフトします。誰も気づいていない問題を見出し、経済的な枠組みの中で解消する仕組みを提起する「課題設定者=アジェンダシェイパー」が、ニュータイプとして大きな価値を生むことになると山口氏は述べています。
メガトレンド3 クソ仕事の蔓延
オールドタイプは、自分の価値を維持するために、さらなる「クソ仕事」を作り出し、組織を混乱させます。彼らは周囲のモチベーションを破壊し、自らも「無意味の泥沼」へと陥っていきます。一方、ニュータイプは「仕事の目的」や「仕事の意味」を形成し、本質的な価値を言語化・構造化します。ニュータイプは人材を惹きつけ、モチベーションを引き出し、大きな価値を生み出す存在になります。
メガトレンド4 社会のVUCA化
VUCAというキーワードが注目されています。Volatility(変動性・不安定さ)、Uncertainty(不確実性・不確定さ)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性・不明確さ)の頭文字から取った言葉で、現代の経営環境やキャリアなどの社会を特徴付けています。
「VUCA化の進行」は、私たちがこれまで「良い」と考えてきたさまざまな能力やモノゴトの価値に大きな影響を与えることになります。VUCA時代は柔軟性、適応力、実行力を持つことが重要になります。
■「経験の無価値化」
「経験豊富」は価値を失います。環境がどんどん変化していくということは、過去に蓄積した経験がどんどん無価値になっていくということを意味します。変化に適応し、新しい環境から柔軟に学び続ける人が価値を生み出すことになります。
■「予測の無価値化」
社会がより「不安定」で「不確実」になるということは「予測の価値」がどんどん減損していくことになります。このような時代にあって、計画に時間をかけ、立てた計画を実直に実行するという行動様式は極めてリスクが高くなります。今後はむしろ、とりあえず試し、結果を見ながら微修正を繰り返していくという、いわば「計画的な行き当たりばったり」によって、変化する環境に対して柔軟に適応していくことが求められます。
■「最適化の無価値化」
「VUCAな世界」では、環境は連続的に変化し続けているわけですから、どこかの時点での環境に高度に最適化してしまえば、 それは次の瞬間には時代遅れなものになってしまいます。変化していく環境に対して、どれだけしなやかに適合できるかという「柔軟性の度合い」の方が重要になってきます。
メガトレンド5 スケールメリットの消失
かつては、ビジネスにおける成功の力ギはスケールメリットだと捉えていましたが、今日では、スケールはそのままメリットにならないどころか、むしろ競争力を削ぐ要因となりつつあります。 この変化をドライブしている大きな要因は以下の2つです。
■限界費用のゼロ化
ジェレミー・リフキンは、さまざまな分野で限界費用がほぼゼロになるという現象が発生していることを指摘し、近い将来において、19世紀から連綿と続いてきた垂直統合型の巨大企業が、その巨大さゆえに有していたアドバンテージ、つまり「スケールメリットによる限界費用の低さ」がもはや成立しなくなると指摘しています。
■メディアと流通の変化
昨今、テクノロジーの進化やソーシャルメディアによって、メディアや流通は大きく変化しています。個人事業主が簡単に物作りや情報を発信できるようになり、顧客を獲得しています。大量生産されたモノを求める顧客が減る中で、個人が自分の課題を解決するためのソリューションを持つ個人やベンチャーが、大企業を淘汰し始めています。
メガトレンド6 寿命の伸長と事業の短命化
S&Pの構成企業は「アメリカを代表する企業」という選択基準で選ばれています。そのような企業の平均寿命が、半世紀前には60年だったのが、今日では20年以下になっています。現代は多くの人が現役として働く期間の方が、企業の平均寿命よりも、ずっと長いという時代がやってきました。
自分のポートフォリオを大きく組み替えていくようなキャリアを志向するニュータイプは、リスクをむしろチャンスに変えていきます。柔軟でしたたかなキャリアを歩んでいくために、柔軟性や変化への適応力を鍛えることが求められています。
オールドタイプからニュータイプへの変化のために必要なことはJ・Dクランボルツの考え方に近いと思います。彼のプランド・ハップンスタンス(計画的偶発性)の5つの指針を紹介して、今日のブログを終わりたいと思います。
1.好奇心:新しい学習の機会や出会いをデザインする。。
2.持続性:失敗に負けずにチャレンジを続ける。
3.柔軟性:姿勢や状況を自ら変える努力をする。
4.楽観性:チャンスは必ず訪れ、それを手に入れられると考える。
5.冒険心:結果を意識せず、とにかく行動を起こす。
まとめ
社会構造の変化やテクノロジーの進化にともない、個人や企業は、新しい考え方や成功モデルへの書き換えが求められています。オールドタイプの時代は過ぎ去り、柔軟性、変化への適応力、行動力を持ったニュータイプの人材が求められています。
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