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Think Smart 間違った思い込みを避けて、賢く生き抜くための思考法
著者:ロルフ・ドベリ
出版社:サンマーク出版
本書の要約
選択をする際、人は4つの思考の罠に陥りがちです。特に「選択肢の見過ごし」には注意を払いましょう。私たちは選択肢をひとつ示されると、現状とその選択肢だけを比較してしまいがちですが、その比較方法は間違っています。手間をかけて、必ずまた別の選択肢と比べるようにしましょう。
陥りやすい4つの思考の罠に気をつけよう!
私たちには、ひとつの選択肢を次善の選択肢と比較することをつい忘れてしまう傾向がある。(ロルフ・ドベリ)
MBAを取得すれば、良い会社に転職でき、年収をアップできると考えがちです。MBAが投資に値するものであることを示すための、費用対効果の試算が大学院から示されます。例えば、MBAの取得費用が10万ユーロだったとします。MBA取得者が退職するまでの生涯年収は、MBAを持たずに平均的な職に就いた人の年収を手取りで40万ユー口上まわれば、最終的には30万ユー口のプラスになります。当然、MBAは取得したほうがいいということになります。
本当にこれは事実なのでしょうか?ロルフ・ドベリはこの思考は間違っていて、同時に4つの「思考の罠」に陥っていると指摘します。
まず、ひとつ目は「スイマーズボディ幻想」です。水泳選手の体形が完壁なのは、もともと体格に恵まれた人が水泳選手になったからなのですが、それを水泳のせいと思い込み、自分も水泳をすれば同じような体形が手に入れられると考える「思考の罠」です。MBAの場合も同様に、取得しようとするのは、はじめからキャリアを非常に重視している人ばかりです。MBAの有無にかかわらず、彼らが高い収入を得られる可能性は、もともとそれ以外の人たちより大きいのです。
ふたつ目の思考の罠は、MBAの取得には2年以上かかるという点です。この間、学校に通っていなければ得られたはずの給与を10万ユー口とすると、MBAを取得するのに必要な金額は10万ユーロではなく20万ユーロということになります。この金額をうまく投資に使えば、それ以上の収入を得られるかもしれません。
3つ目は、30年を超える長い期間の収入を見積もることが正しいかということです。30年後の世界がどうなっているかなど、誰にも知りようがなく、ナンセンスです。そして最後の4つ目は、選択肢はMBAを取るか取らないかだけではないという点です。人生には他にも選択肢があり、MBAよりずっと安価で、同じくらいキャリアにプラスになるプログラムがあるかもしれません。
この4つ目の思考の罠を著者は「選択肢の見過ごし」と呼びます。私たちには、ひとつの選択肢を次善の選択肢と比較することをつい忘れてしまう傾向があるのです。
選択するときは「次善の選択肢」と必ず比較する
あなたは「貯蓄預金」にいくらか資金をあずけていて、投資コンサルタントにその運用方法について助言を求めたとします。コンサルタントは、5パーセントの利子がつく「債券」の購入をあなたに薦めます。「金利が1パーセントの貯蓄預金にあずけておくより、ずっとお得ですよ」とコンサルタントは言いますが、本当に、この債券を購入したほうがいいのでしょうか?
「貯蓄預金」と「債券」との比較だけでは、本当に正しい選択をしたかはわかりません。正しくは、その債券をほかのありとあらゆる投資の手段と比較して、そのなかから最良のものを選ばなくてはなりません。ウォーレン・バフェットの次の言葉を読めば、手間をかける重要性に気づけるはずです。
取引をするときには、必ずその時点で可能な次善の取引と比較することにしている。その分、よけいに手間はかかるがね。(ウォーレン・バフェット)
多くの人はこの「選択肢の見過ごし」をしていると著者は言います。たとえば、あなたの体に腫瘍が見つかった時に、何もしなければ、あなたはあと5年しか生きられないとします。難しい手術によって、腫瘍をすべて摘出できますが、手術で命を落とす可能性も50パーセントあると主治医は言います。このふたつを比較しようとしたなら、あなたは「選択肢の見過ごし」に陥っています。腫瘍を完全には摘出できなくても、はるかに安全で生きられる期間を伸ばす手術は他にもあるかもしれません。寿命が延びた期間に、危険のない方法で腫瘍を取りのぞける治療法が新たに見つかれば、より長生きできます。
私たちは選択肢をひとつ示されると、現状とその選択肢だけを比較してしまいがちですが、その比較方法は間違っています。手間をかけて、必ずまた別の選択肢と比べるようにしましょう。「選択肢の見過ごし」を避けることで、人から騙されなくなる可能性を高められます。
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