運を味方にする 「偶然」の科学(バーバラ・ブラッチュリー)の書評

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運を味方にする 「偶然」の科学
バーバラ・ブラッチュリー
東洋経済新報社

運を味方にする 「偶然」の科学(バーバラ・ブラッチュリー)の要約

運が良いと信じることが、ポジティブな気持ちを育て、行動力を強化することに繋がる可能性があります。この信念は、充実した生活への道を開くポジティブな思考の力を再確認するもので、幸運を信じ、前向きな姿勢を保つことが大切な一歩となるのです。

ポジティブな人が運がよい理由

「自分は運が悪い」と思うと「実行機能」が損なわれる。(バーバラ・ブラッチュリー)

著者のバーバラ・ブラッチュリーは、神経科学的および心理学的なアプローチから、偶然の出来事が私たちの人生に与える影響や、運を味方にする方法について解説しています。 彼女の著書では、私たちが運や偶然をどのように理解しているかについて深く考察されています。

人間は予測できない不確実な状況を嫌い、ランダムな出来事に意味やパターンを見出そうとします。しかし、実際には偶然の出来事は予測不可能であり、私たちの制御の範囲外に存在します。

著者は、運を味方にするためにはまず偶然の出来事を受け入れることが重要であると述べています。運を味方にするためには、柔軟な対応が必要です。また、自分の行動や思考を変えることも不可欠です。

彼女は、行動や思考の変革を通じて、偶然の出来事に対して良い結果を引き寄せることが可能だと指摘しています。著者は、運や偶然に関する科学的な知識を通じて、認識や行動を変えるヒントを提供しています。

例えば、著者は、運を味方にするためにはポジティブな思考や感謝の気持ちを持つことが重要だと述べています。また、著者は、運を味方にするためには自己効力感を高めることも大切だと指摘しています。

理学者のリズ・デイジョン・モルトビーは、運を信じることが全体的な心理面でのウェルビーイングに与える影響を検証しました。144人の男女に対して、幸運を信じているかどうかを尋ね、それぞれのうつ状態、不安、楽観主義、神経症傾向についても調査した後、結果にパターンがあるかどうかを検証しました。

結果から明らかになったのは、自分や他人が運に恵まれていると信じていない人ほど、うつ状態や不安を感じやすい傾向があるということでした。逆に、幸運を信じている人は楽観的であり、うつ状態や不安を感じにくい傾向が見られました。

モルトビーの研究チームはさらに、「自分は運が悪い」と思い込んでいる人たちには、「実行機能」が損なわれている傾向があることを発見しました。実行機能は、計画を立てたり、代替案を考えたり、物事を整理したり、課題に集中したり、注意を維持するなどの認知機能を指します。自分が幸運だと思っている人は、平均よりも実行機能が高いわけではありませんが、不運だと思い込んでいる人には実行機能の働きが弱い傾向が見られました。

この研究結果から、幸運を信じることは心理的なウェルビーイングだけでなく、実行機能にも関連していることが示されました。運に恵まれていると信じることは、ポジティブな心の状態を促し、実行力を高める可能性があります。幸運を信じることの重要性を再認識し、ポジティブな考え方を持つことが、より充実した生活を送るための一つの方法かもしれません。

儀式やお守りでパフォーマンスは向上する?

リザン・ダミッシュバーバラ・ストーブロックトマス・マスワイラーは、迷信が困難な課題でのパフォーマンス向上に寄与するかどうかについての研究を行いました。成功の見込みが極めて不確実である場合、心理的なストレスが高まり、認知機能が低下するため、人々が迷信的な儀式に頼りやすくなるという仮説を検証したのです。

迷信的な儀式を行うことで、緊張が和らぎ、状況をコントロールできるという幻想を抱くことができるようになります。これが事実であるならば、迷信を実行することで自己効力感(出来事を自分でコントロールできるという認識)が高まり、課題により一層真剣に取り組み、より長期間にわたって努力を続ける可能性があると考えました。

研究者たちは、迷信が心理的な安定感を提供し、自己効力感を高め、それによって困難な課題に対処する意欲を刺激する可能性があると結論づけたのです。その上で、迷信を実行することで、楽観主義や希望といった感覚を持つことができ、どんな課題にも取り組む際には、パフォーマンスが向上する可能性があると仮説されました。

この仮説を検証するため、リザン・ダミッシュは複数の実験を実施しました。 最初の実験では、ゴルフボールのパッティングを行うふたつのグループの学生(ゴルファーは含まれていない)に対し、一方のグループはただゴルフボールを渡され、「がんばって」と励まれました。もう一方のグループにはゴルフボールを渡す際、「このボールはラッキーボールで、みんな成功したのよ」と伝えられました。

結果として、ラッキーボールを渡された学生は、何も言われていない学生たちよりも良いパッティングのスコアを記録しました。

次の実験では、ふたつのグループの学生に同じおもちゃが渡されました。このおもちゃは左右にバランスよく傾け、小さなボールを穴に入れる仕組みがありました。一方のグループには「これは指を交差させて幸運を願うしぐさの効果を調べる実験です」と伝えられました(ドイツでは幸運を願う際、「きみのために親指を押すよ」と表現されます)。

もう一方のグループは、単におもちゃで遊び、ボールを穴に入れるように指示されました。結果として、幸運を願うしぐさの効果を期待していたグループは、そうでないグループよりも、小さなボールを穴により多く入れ、要した時間も少なかったという結果が得られました。

他の二つの実験では、学生たちに対して事前に「あなたの幸運のお守りを研究室に持ってきてほしい」とリクエストしました一つのグループは記憶力テストやアナグラムの課題に取り組む間、お守りを身につけることが許されました。もう一方のグループは、各課題に取り組む前にお守りを取り上げられました。

結果、お守りを身につけていたグループは、お守りを取り上げられたグループよりも、記憶力テストとアナグラムの課題の両方で優れた成績を収めました。

このような結果から、リザン・ダミッシュは「幸運を信じる迷信を活性化させると、課題をこなす能力が自分にはあると思えるようになり、パフォーマンスが向上する」と述べています。

宇宙の外部の力として、または私たちの行動全体にその影響が現れる個人の特性として、呪術的思考、迷信、幸運を信じることによって、非常に大きな利益が得られる可能性があります。これらを信じていると、ストレスや不安を軽減でき、不確かな状態に対しても道筋が見えるような気がするからです。

呪い、ラッキーシューズ、試験がうまくいく験担ぎのペン、祈りの力はどれも非論理的で、不合理で、このうえなく非科学的です。実際、論理や理性といったものをすべて無視して、私たちがこうしたものに関わりつづ続けている事実こそが、そこから恩恵が生じていることを物語っています。

人間は合理的な存在とされていますが、実際には非論理的な行動や信念を持つことがあります。ゲン担ぎや験担ぎは、その一例です。理性や論理を無視して、ある行動やアイテムに力を託すことで、成功や幸運を引き寄せようとするのです。

このような非科学的な信念や行動がなぜ続くのか、その理由はさまざまです。一つには、人間は不確実性や未知に対して不安を感じる傾向があります。ゲン担ぎや験担ぎは、その不安を取り除く手段として機能するのかもしれません。特に重要な場面や試験の前など、成功を望む状況では、何かしらの支えや安心感を求めるものです。

また、ゲン担ぎや験担ぎは、心理的な効果もあると言われています。人間の信念や思考は、行動や結果に影響を与えることがあります。例えば、自信を持って試験に臨むことで、集中力やパフォーマンスが向上する可能性があります。ゲン担ぎは、そのような心理的効果を引き起こす要素として機能するのかもしれません。


 

この記事を書いた人
徳本

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数
iU 情報経営イノベーション専門職大学 特任教授 

■著書
「最強Appleフレームワーク」(時事通信)
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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