鮎川詢裕子氏の最高のリーダーほど教えない ―部下が自ら成長する「気づき」のマネジメントの書評

仕事における「気づき」はいつでもどこでも生まれるわけではありません。主に、リラックスしている時、信頼関係がベースにある対話をした時や、初めて行動した時、経験を振り返る時、足りなかった情報のピースがはまった時、感情が動く時などに生まれます。この「気づきの機会」こそが、成長機会そのもの。つまり、「教える」は、部下の成長そのものを阻害することになってしまうのです。(鮎川詢裕子)


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リーダーの仕事は部下に気づきを与えること

鮎川詢裕子氏から最高のリーダーほど教えない ―部下が自ら成長する「気づき」のマネジメントを献本いただきました。最近、ブログ経由の献本が増えており、嬉しい限りです。鮎川さんにもこの場から感謝をお伝えしたいと思います。

「教える」から「気づかせる」ことができないリーダーは組織を強くできないと著者は指摘します。5000人以上のリーダー、その組織を変えてきた鮎川氏は、まず部下に興味を持ち、彼らが答えやすい環境を準備すべきだと言います。私は本書を読みながら、三洋電機の創業に関わった名経営者の後藤清一氏の言葉を思い出しました。彼は部下の気持ちを以下の5つの「たい」で表現しています。部下は上司から関心を持ってもらいたいにも関わらず、しっかりと向き合ってもらえていないことに不満を持っているのです。
1.関心を持たれたい。
2.理解されたい。
3.認められたい。
4.信頼されたい。
5.可愛がられたい。

鮎川氏はダメなリーダーの3つの特徴を紹介しています。部下の成長をはばむ3つの行動をしているなら、まずそこから改善してみましょう。
■部下の行動を変えようとしている
■認識がズレたまま仕事を進めている
■部下のカを引き出すかかわリ方を知らない
上司の態度がよくなければ、部下は成長しません。部下が結果を残せないのは、自分のせいだと考え、まずは自分を変えてみましょう。相手を変えることは難しいと考え、まずは自分のダメさ加減をチェックするのです。

多くのリーダーは結果をすぐに求め、部下に考えさせないようにしています。考えるための質問を用意したり、アドバイスのやり方に気を使うとよいと鮎川氏は述べています。リーダーが指示ばかりしていては、部下は思考をストップし、自らアクションを起こさなくなります。アドバイスをしたい時も、部下が考え終わるまで待ちましょう。リーダーは良いコーチであるべきですから、部下に寄り添うことが必要です。自分の意見を押し付けるのではなく、アドバイスの一つとして自分の考えを伝えるようにすると部下の思考と行動が変わるようになります。部下に気づきを与えることが優秀なリーダーに求められるスキルなのです。

 

気づきによって、部下の行動は劇的に変わる!

この自分の中で「あっ、わかった!」という瞬間、この「気づき」の有無が部下の潜在能力の発揮に大きな差を生み出します。教えても、脱明しても、怒鳴っても、部下が変わらなかったのは、そこに「気づき」が起こっていないからです。「気づき」というのは発見であり、大袈裟にいえば「見ている世界が変わる」こと。

部下が自分で考えるようになるためには、時間がかかるかもしれませんが、変わる瞬間が必ず訪れます。上司はその瞬間をデザインするために、質問をしたり、的確なアドバイスをすべきです。これまで思い込んでいた解釈や常識、世界の見え方がまったく違って見えれば、行動は劇的に変わります。「気づき」が起きると、人は自然と変わり出すのです。

自分の内側から湧いてくる答えなので、そのエネルギーは他人に言われた指示やアドバイスの比ではなく、自分を突き動かす力になっていくのです。そして、これまでとは違う観点で考え出すようになります。たとえば、今までなぜ動けなかったのか、どうしてそうなっていたのかが、客観的に見え、「なんでこんなことがわからなかったんだろう」というぐらい劇的な視点転換が起きるのです。人は視点が変われば、行動も変わります。有効な「気づき」が生まれると自主性が増し、発想力や思考力が高まり、「自分は、本当はどうしていきたいのか」と考えられるようになっていきます。

部下に気づきを与えるために、対話の基盤を作ったり、傾聴を心がけることを意識しましょう。

優れたリーダーは、部下の向き合い方も異なります。認識を合わせるだけでなく、部下との向き合い方を変えなければ、良いコミュニケーションは生まれません。たとえば「意見は同意していても、聞き手の相手を受け入れない」向き合い方をしていると、部下の心が折れ、信頼関係が損なわれていきます。逆に「意見が違っても話し手の話を尊重しながら、聞き手が自分の意見も伝えていく」ようにすると部下との信頼関係が深まることがわかっています。

つまり、信頼関係ができるかどうかは、意見が合っているかどうかよりも、聞き手の向き合い方のほうが重要だということです。

人は自分と似ている人に対して安心感を覚えます。言葉だけではなく、部下に向き合う態度を変えることが重要です。

■部下がゆっくリ話すなら、ゆっくリ話す
■静かでロジカルに話す部下なら、同じように話す。
■感情的になりやすい部下なら、感情に寄り添うことを意識する
話し方やスピード、声のトーンだけでなく、相手の内面の傾向や状態を把握しながら、それに合わせていくようにしましょう。部下と共通する感覚で深くつながり合うことで、相互理解が深まり、相手がやるべきことに気づいてくれるのです。相手の状態を知り、理解するために、真摯な態度で部下の話を聞きましょう。話を聴く時には部下が主役だとわきまえ、自分の過去の自慢話をするのをやめましょう。

まとめ

組織を成長させるためには、まず、リーダーが成長すべきです。部下を変えることは難しいのですから、まず、リーダーが変わり、部下が変化することを待つようにします。リーダーは自分の意見にとらわれがちですが、部下の受け入れにくい意見も聞き入れるなど自分の態度を見直しましょう。質問力を鍛え、的確なアドバイスをするなど自分の行動を変えることで、部下はある日突然気づきます。この気づきによって、部下の思考と行動が変わり、組織が強くなり始めるのです。

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この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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