散歩哲学 よく歩き、よく考える (島田雅彦)の書評

man walking beside the foot of the mountain during daytime

散歩哲学 よく歩き、よく考える
島田雅彦
早川書房

散歩哲学 よく歩き、よく考える (島田雅彦)の要約

人類は歩くことで思考し、創造性を高めてきました。AI時代には散歩すること、思考することが差別化要因になります。読書と散歩は、私たちの知識と感性を広げ、新たな視点を提供する活動です。これらを組み合わせることで、深い理解や感動を経験し、日常生活に豊かさをもたらすことができます。

散歩が創造的活動に重要な理由

散歩は暇を潰し、退屈を埋めるための最も基本的な行動である。誰かのせいで暇を奪われ、退屈を強いられているなら、自分を解放するために最初に取るべき行動、それが散歩である。(島田雅彦)

著者の島田雅彦氏によると、散歩は日常の退屈を脱するための有効な手段です。彼は散歩を通じて新しい発想やインスピレーションを得ることの重要性を強調しています。実際、ヴェネチアやフィレンツェのような都市は、人々が無目的に歩き、新たな出会いや発見をするために設計されたかのように見えます。これらの街角にある広場は、徘徊者同士が交流を深める場となっています。

島田氏は、忙しさに追われる現代人が直面する「心の余白」の喪失にも言及しています。彼によれば、日々の忙しさに追われることで、イノベーションや大きなアイデアを生み出す余地が失われがちです。故に、散歩をすることは、脳と体をリフレッシュし、創造的な思考を促進するために特に重要です。

散歩中に自分の意識の中で起きていることを全部記録することができたら、膨大かつ荒唐無稽なメモになるだろう。人はそれほどに散歩中に多くのことを思い巡らせているのである。

歩くこと、散歩することで思考する時間を確保できます。先週末は私は京都におり、満開の桜を楽しみましたが、京都の街を目的見なく、桜を求め、歩くことで様々なことを考えることができました。また、日常の喧騒から離れて心を静めることができました。

私たちは散歩を通じて自身の考えを整理し、新たなアイデアを生み出せます。散歩は単なる運動ではなく、心と身体の健康を促進し、創造性や感性を刺激する重要な活動であることが本書から伝わってきます。

さらに、島田氏は散歩が単なる身体活動ではなく、心身の健康を促進し、創造力や感性を高めるための重要な手段であると述べています。この本を通じて、散歩の文化的かつ歴史的重要性が強調されており、歩くことがいかに多くの思想家や文学者に愛されてきたかが示されています。

よく歩く者はよく考える  昔から思索家はよく歩く。哲学者然り、詩人然り、小説家然り、作曲家然り……よく歩く者はよく考える。よく考える者は自由だ。自由は知性の権利だ。

カントやルソーは散歩を習慣化し、そこからインスピレーションを得ながら創作活動を行なっていたことは有名です。彼らは日々の散歩の中で深い思索を行い、先駆的な社会思想、平和論、教育論を打ち出しました。散歩とは、身体を動かしながら自然や街並みを眺め、心を静めることで、新たなアイデアや洞察を生み出す良い機会です。

現代社会では、多くの人がスマートフォンに時間を取られがちで、じっくりと考える時間を確保することが難しくなっています。スマホが普及した今日では、情報の効率的な収集が重視され、即座に活用できる知識を求める傾向にありますが、このような環境は深い思考を促す時間を奪います。

そこで、私たちはタイパ追求する姿勢を見直し、あえて非効率とも言える散歩を日常に取り入れることで、創造力を再び育むべきだと考えられます。

散歩は心と体をリフレッシュし、新たなアイデアや解決策が浮かぶ貴重な機会を提供してくれます。このように、意図的にゆっくりと時間を過ごすことで、私たちは思考する力を取り戻し、豊かな創造性につながる道を開くことができるでしょう。

読書と散歩を習慣化しよう!

読書も、テキストの森に踏み込み、コトバと出会い、刺激を受けるという意味では、散歩なのである。そして、散歩は街や山谷に埋め込まれた意味やイメージを発掘するという意味では、読書なのである。

読書と散歩は、一見すると全く異なる活動に思えるかもしれませんが、実際には深いつながりがあります。読書は、広大な知識とアイデアの海を旅するようなもので、文字を通じて新しい出会いや刺激を受ける行為です。一方で、散歩は自然や都市の中を歩き、周囲の景色や出来事から意味やインスピレーションを見出す活動です。

散歩によって、日々の生活の中で見過ごされがちな美や深みを発見することができます。街の角や自然の中には、歴史、文化、人々の生活が詰まっており、そこから新たな発見や気づきを得ることがあります。

読書と散歩は、どちらも私たちの知識や感性を広げ、新しい視点を与えてくれる貴重な活動です。これらを組み合わせることで、より深い理解や感動に至ることが可能になるかもしれません。読書をしながらの散歩、または散歩をしてからの読書は、日常の中に隠れた美や深さを見つけ出し、豊かな人生を送る一助となり得ます。

私自身、読書や散歩を日常に取り入れることで、アイデアを生み出す力を養えるようになりました。これらの習慣は、思考を刺激し、創造性を養う上で非常に効果的です。読書と散歩を通じて、私たちは常に新たな発見をし、日々の生活に意味と彩りを加えることができるのです。

スマートフォン経由で得られる情報など今すぐ手に入るので、誰でも知っている。しかも、九割以上が既に垂れ流された情報の引用、盗用に過ぎず、フェイクやデマばかりだ。ChatGPTを使えば、もっともらしい、平均点以上のレポートや報告書、感想文は書けるし、既視感あふれる詩や小説も捏造できるが、その産物からは感情や善悪が欠落している。そもそも生成 AIには無意識の領域がなく、夢も見なければ、妄想もしない。そのくせ人間同様、デマを流したり、フェイクを作ったり、すぐバレる噓をついたりする。いっそ、人の手を煩わさなくてもいい仕事を全て生成AIに押し付けて、空いた時間に散歩にかまけるのが最も賢い選択となるのではないか。

AIの進化によって、私たちの日常や仕事における役割が変化しています。AIに繰り返し作業やデータ処理など、特定のタスクを任せることで、私たちはより創造的で意味深い活動に時間を割くことが可能になります。

特に、散歩をすることや妄想する時間は、AIでは提供できない新しいアイデアや視点を私たちにもたらします。AIとの適切な役割分担を実現し、自分自身の時間を充実させることは、非常に賢明な選択です。 散歩や夢想を通じて、私たちは新たな発見をし、創造性を刺激されます。これらの活動は、日々のルーティンから一歩離れ、心と身体に新鮮な気づきを与える貴重な機会です。

AIがもたらす情報や解析に加えて、散歩や妄想を通じて得られるインスピレーションは、私たちの思考や感性を豊かにします。 このようにAIとのバランスを取りながら、デジタル技術の恩恵を享受すると同時に、リアルな世界での体験を大切にすることで、私たちはデジタルとリアルの両方の世界から最良のものを受け取ることができます。

このバランスを見つけることが、私たちの生活をより豊かで意味のあるものに変える鍵となるでしょう。その際、考える時間を持つための選択肢が散歩になるのです。

著者はヴェネチアに住んでいたころの深夜の帰宅の思い出を語っています。夜の人口の少ないヴェネチアでは、人がいないため、とても寂しい散歩になると描写されています。

この話を読んで、私も飛行機の遅延で深夜に一人でホテルを探していた時の20年以上前の旅が思い出しました。Googleマップもない時代、ヴェネチアの迷宮のような街をさまよったことは、今思い返しても心に残る印象的な体験です

島田氏は散歩を通じて新たな視点や気付きを得ることの価値を伝えており、読者にとっては日々のルーティンに散歩を取り入れることの意義を再認識させます。散歩を通じて新たな視点や気付きを得ることの価値を伝えており、読者にとっては日々のルーティンに散歩を取り入れることの意義を再認識させてくれます。

著者の描く東京ガイドは魅力的で、紹介されている町に散歩に出かけたくなりました。現代の東京の風景と、過去の作家たちが歩いた東京の記述を通して、古典への興味も湧いてくる秀逸なエッセーになっています。


 

この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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