子育ての悩みをどんな上司に相談すればよいのか?

誰かをもっと共感的になるよう促す時、私たちは「相手の立場に立って考えてみればいい」などとよく口にする。しかしこの言葉は、同じ立場を経験済みの人に対しでは、まさに言ってはならないことなのかもしれない。(レイチェル・ルタン、メアリー=ハンター・マクダネル、ロラン・ノルドグレン)


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子育ての悩みをどんな上司に相談すればよいのか?

自分が苦境にあるときは、「同じことを経験済みの他者」に相談して共感を得たくなります。私も子育てやリーダーシップで悩みを抱えた際に、それを乗り越えた経験者に相談をなんどもしました。しかし、その相談がすべて効果があったわけではありませんでした。今回、ハーバード・ビジネス・レビュー[EIシリーズ] 共感力を読むことで、その理由がわかりました。辛い経験を乗り越えた相談相手が、実は最も共感してくれないという研究結果が明らかになったのです。

ノースウェスタン大学ケロッグ・スクール・オブ・マネジメント博士のレイチェル・ルタン、ペンシルバニア大学ウォートン・スクール助教授のメアリー=ハンター・マクダネル、ノースウェスタン大学ケロッグ・スクール・オブ・マネジメント准教授のロラン・ノルドグレンの3人は子育てやいじめなどの体験を通じて、人の共感についての調査を行いました。

初めて子を持つ親になった親は、とにかく大変で、仕事のパフォーマンスが落ちていきます。自分の働き方を在宅型に変え、家族の世話をする時間を増やしたいと考えた場合、子育て経験のある上司とない上司のどちらに相談したらよいでしょうか?

多くの人が子育て経験のある上司に相談すべきだと考えるはずですが、実は、要望を聞き入れてくれる可能性が高いのが、子育てしたことのない上司の方なのです。子育てを経験した上司の方が、共感してくれると考えがちですが、3人の研究によってこの選択がしばしば間違っていることが明らかになりました。

苦境(離婚、昇進見送りなど)に陥っている他者に対し、過去に同じ苦境を乗り越えた経験がある人は、その経験がない人よりも共感を示しにくいことが、一連の実験でわかりました。最初の実験では、「寒中飛び込み」に参加した人々にアンケート調査を行いました。3月の凍てつくミシガン湖に飛び込むイベントに参加したメンバー全員に、パットという名の男性の物語を読んでもらいました。パットは、見事飛び込んでみせるぞと意気込んでいたが、十壇場になって怖じ気づき逃げてしまいました。1つのグループには飛び込む前にパットの物語を読んでもらい、別のグループには飛び込んでから一週間後に読んでもらいました。その結果、寒中飛び込みを成功させた人々は、まだ飛び込んでいない人々と比べて、パットに対して共感が薄く、軽蔑する気持ちも強いことが明らかになったのです

もうひとつの実験では、失業に苦しんでいる人への共感を調べてみました。200名を超える被験者に、必死の努力にもかかわらず就職できない男性の物語を読んでもらいました。彼は生活に窮し、麻薬の売人として稼ぐまでに身を落としていました。実験の結果、過去に失業状態を脱した経験を持つ人々は、現在失業している人や、不本意な失業を経験したことがない人と比べて、物語の男性に対して共感が薄く、厳しい見方を示したのです。

過去に苦境を乗り越えた経験を持つ人は、似たような苦境にあり克服できないでいる人に対して、特に厳しい見方をする傾向が強いようだ

では、なぜ、苦境を乗り越えた人は、相談相手に共感できないでのでしょうか。著者たちは2つの原因を指摘します。 まず、人は過去の苦境がどれほど辛い経験だったかを正確に思い起こすことができません。私たちは、過去のその経験が苦痛とストレスに満ちていたこと、つらい気持ちになったこと自体は覚えているかもしれません、実際にどの程度苦しんだかを過小評価してしまう傾向があるというのです。(エンパシー・ギャップ・共感の差異)

また、逆境を乗り越えた経験の持ち主は、自分が苦境を克服できたことを知っているため、状況の困難さをよくわかっているという自信を強く持っています。「どの程度つらかったか正確に思い出せない」状態と、「自分の力で乗り越えることができた」という気持ちが組み合わさることで、その苦境は克服できるはずだという考えが生まれます。その結果、苦しんでいる他者に共感ができなくなくなってしまうのです。嫌な体験を克服した人は、自分の過去を美化してしまい、他者への思いやりの気持ちを持てなくなるのです。

 

共感を学ぶことで、強い組織が作れる?

メンターシップ・プログラムでは、経歴や経験が似た人同士を組み合わせることが多いが、これを見直す必要があるかもしれない。リーダーにとっても重要な示唆がある。悩みを抱えた部下に相談されたリーダーは、自分自身の感情的な反応に従って問題に対応すべきだと考えるかもしれない。

ガラスの天井(管理職への昇進をはばむ目に見えない人種的・性的偏見)を克服した経験を持つ幹部は、差別に関する部下の悩みについて、自分自身の成功を基準に考えてしまう可能性があるというのです。コンサルティングや金融など、オーバーワークが常態になっている業界のマネジャーは、燃え尽きや過労を懸念する部下に対して厳しく接する可能性が高いのです。

私もバブル時代の広告会社の経験があるので、働き過ぎを美化する経験があり、部下に対して厳しいアドバイスをしていたことを思い出しました。人は自分ができたことを部下にも強要してしまいます。実際、オーバーワークを軽減しようとする改革に、年長の従業員が抵抗するといった例もあるそうです。

リーダーは固定観念を捨てる必要がある。過去に苦境を克服した自分の経験に、重きを置くべきではない。共感の差異を埋めるために有効なのは、相手の苦しみがどの程度なのかに、特に注意を払うことだろう。

優れたリーダーは、自分の過去にフォーカスするのをやめ、部下に共感すべきです。多くの人々が同様の問題に苦しんでいるという事実を、しっかり認識することも重要だと著者たちは指摘します。

子育てやワークライフ・バランスの問題で苦労している人はたくさんいます。彼らが職場を去ることで、チームを弱体化することにリーダーは気づくべきです。部下から相談を受けた上司は、思いやりの気持ちを持ち、彼らに接するべきです。相手の辛い状態に共感を持つように自分が変わることで、組織が強くなるのです。

まとめ

人は自分の辛い経験を美化し、相談相手に厳しく接してしまうことがわかっています。しかし、上司がこの態度で部下と接すると、相手は逃げ場がなくなってしまいます。自分の辛い過去にフォーカスするのをやめ、部下に共感を持って接するようにしましょう。

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この記事を書いた人
徳本昌大

 
●複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。

●多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。

●著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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