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次のテクノロジーで世界はどう変わるのか
著者:山本康正
出版社:講談社
本書の要約
VUCAの時代は、変化が短期間に起こります。特にテクノロジーの進化は秒速で進み、ビジネスに変化を起こします。今までの勝ち組が5G、AI、ロボティックス、クラウドによって、あっという間に負け組に転落する恐れがあります。ビジネスパーソンはテクノロジーとリベラルアーツを学び、変化に適応すべきです。
ビジネスパーソンがテクノロジーを学ばなければいけない理由
便利な変化は短期間のうちに劇的に進んでいくという点、そして、劇的な変化は人々が気づかぬうちに静かに進行していくという点である。(山本康正)
AI、5G、ロボティクス、クラウドなどテクノロジーの変化が凄まじいことになっています。現代のビジネスはテクノロジーと切っても切り離せなくなっており、経営陣がテクノロジーの知識を持っていないことは最早リスク以外のなにものでもありません。著者の山本氏は金融機関、グーグルを経て、現在は起業家の支援と投資を行っています。「テクノロジー」と「投資(ビジネス)」の両面に精通している日本でも稀有な人材の山本氏が、ビジネスパーソンのために近未来のテクノロジーを開設したのが本書次のテクノロジーで世界はどう変わるのかです。
データを大量・高速に送受信する5G、データを保存・処理するクラウド、そしてデータをもとに判断を行うAI……この3つが形成するトライアングルが、今後の経営を変えていきます。優れたAIは、「データの量」と「良質なアルゴリズム」の掛け算によって生まれると著者は言います。つまり、世界をリードするAI開発のためには5Gやクラウドのインフラが不可欠なのです。
この事実に早くから気づいたのが、アメリカのFAANG+M(フェイスブック・アマゾン・アップル・ネットフリックス・グーグル・マイクロソフト)と中国のBATH(バイドゥ・アリババ・テンセント・ファーウエイ)です。この分野で日本は完全に遅れをとりましたが、ソフトバンクは投資家というポジションで、世界の巨大企業と戦っています。ヤフーとLINEも経営統合を行い、アジア・マーケットでの生き残りを図ろうとしています。
また、ブロックチェーン技術はまだ黎明期ですが、4番目のメガテクノロジーとして要注目だと著者は言います。ブロックチェーンによって、何らかの「権威」が行っていた正統性の証明を、あらゆる人が関われる民主化された形で証明する新しいシステムとして脚光を浴びています。仮想通貨の値上がりばかりが話題になりますが、ブロックチェーンによって、データの改ざんが防げ、デジタル情報の信頼が担保できます。調査会社ガートナーによると、ブロックチェーンが生み出すビジネスの市場規模は2030年には、約340兆円になると予測されています。
テクノロジーの観点から近未来を見ると、今後以下の7つの大変化が起こります。
大変化1 データがすべての価値の源泉となる
大変化2 あらゆる企業がサービス業になる
大変化3 すべてのデバイスが「箱」になる
大変化4 大企業の優位性が失われる
大変化5 収益はどこから得てもOKで、職種という概念がなくなる
大変化6 経済学が変わっていく
大変化7 業界の壁が消える
テクノロジーが進化する中、今後、顧客の情報を含むあらゆるデータを持つ企業がもっとも力を持つようになります。 「データ・イズ・イーティング・ザ・ワールド」という世界が出現し、データ力のない会社は大企業と言えども生き残れなくなります。
これからの時代に顧客に提供する価値の源泉は、データに基づくサービスやリコメンデーションになります。あらゆるデータが取れる社会が到来すると、データをもとに顧客の望むサービスを提供する企業が力を持ち、成長していくはずです。
プログラミング、データ、 英語、ファイナンスの知識を身につけよう!
われわれは常に、テクノロジーとりベラル・アーツの交差点に立とうとしてきた。技術的に最高のものをつくりたい。でもそれは、直感的でなければならない。(スティーブ・ジョブズ)
デジタル時代はテックとビジネスをブリッジ(橋渡し)できる人材が、価値ある存在になります。テクノロジーがわかり、弱い紐帯のハブ的存在になり、情報が集まる人が力を持ちます。
何か新しいものが生まれてくると思われる人に情報を伝えることで、新たなビジネスが生まれてきます。すべての人が持つ情報がすべての人との間で共有できれば、情報のロスは限りなく少なくなり、創造性や生産性が上がって社会はもっと良くなると著者は言います。人との信頼関係を築け、テクノロジーに詳しい人を目指せば、成功する確率を高められます。
5Gが本格化すると今以上に大量のデータがクラウドとつながり、机や椅子、ホワイトボードなど、いままではデータとして考えてもみなかったモノや機器から、データが集められるようになります。サーバーの中に、続々と大量のデータが蓄えらていきます。
動画が簡単にアップロードできるようになり、コンテンツのクオリティが上がり、相乗効果でさらに動画に関心を持つ人が増え、動画の量が急激に増えていくはずです。これまでとは、比較にならないほどのデータが蓄積され、かつては取れなかったデータが集まり、それを使いこなせるようになることで、まったく新しいサービスが生まれてきます。
画像解析の精度が上がり、自然言語処理の精度も飛躍的にアップし、世の中は激変します。AI、5G、クラウドのトライアングルの力が増強する結果、できなかったことができるようになり、今まで実現できなかったアイデアが日の目を見るようになるのです。
あらゆるデータが丸裸にされることに恐怖感を覚える人もいるかもしれませんが、データをAIで解析することで、生活者が求めるサービスを企業は提案できるようになります。質の高いサービスが受けられれば、データ提供のハードルも下がります。
著者はAI分野で、人口の多い東京圏には可能性が残されていると指摘します。
東京圏の都市人口は、現状では世界最大の3800万人である。これだけの人が生活をしている場所には、世界最大級のデータが発生すると考えていい。繰り返すが、AIのインパクトは、良質のアルゴリズムとデータ量の掛け算で決まる。その点で見れば、東京圏のデータ量は世界でも最高水準にある。本気でAIのアルゴリズム開発に取り組めば、世界のAIテクノロジーをリードする存在になり、日本のAIビジネスが再生する可能性は十二分にあると考える。
AIヘの恐怖感を捨て、AIの未来にかけることができれば、まだまだ日本にもチャンスがあるのです! 正解がわからない時代、正解が絶えず変化する時代に生きている以上、柔軟な思考で世界のトレンドを取り入れていく姿勢が、ビジネスパーソンや経営者には求められます。
残念ながら、日本には、自動的に情報が集まる環境はありません。テクノロジーの情報を得るために、自己投資を行う必要があります。これからのビジネスパーソンはプログラミング、データ、 英語、そしてファイナンス(金融財政)に関する知識を絶対に身につけるべきです。この4つを学ぶことで、テクノロジーのビジネスを理解できるようになります。
私はIoTやITの会社の社外取締役やアドバイザーをしているおかげで、最新のテクノロジーに触れることができます。AIやデータの重要性に気づき、これを他のビジネスに応用することで、ビジネスがより面白くなりました。定期的に海外に出かけ、変化を実感するように自己投資を続けていますが、これらの経験が私の宝になっていることは間違いありません。テクノロジーとリベラル・アーツから、徹底的に学べという著者のアドバイスにとても共感を覚えました。
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