細谷正人氏のブランドストーリーは原風景からつくるの書評


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ブランドストーリーは原風景からつくる
著者:細谷正人
出版社:日経BP

本書の要約

永続するブランドは、ユーザーが自ら生み出す物語によってつくられています。①場所や人物、時間による空間的記憶、②五感や感情による情緒的記憶、③複数回繰り返される概括的記憶の3つの過去記憶が、そのブランドと自己との関係をより強固にすると著者は指摘します。

ブランド戦略に原風景を取り入れよう!

DX(デジタル・トランスフォーメーション)時代の到来で言われているよう、今後はデジタルデバイスを通じてデータが共有化され、生活者の個人的な記憶は画像や映像などでアーカイブ化できるだろう。AI(人工知能)によって解析された生活者の”原風景”を活用することで、未来における人の行動変容の予測が今以上に精度が高くなる。そうすれば、個人的な記憶を活用したブランド戦略の立案に生かすことができる。(細谷正人)

永続するブランドは、ユーザーが自ら生み出す物語によってつくられるとバニスター株式会社代表の細谷正人氏は指摘します。

ブランドストーリーは一朝一夕にできあがるものではなく、長い期間を経て出来上がります。ブランド側から一方的に与えることはできませんが、一度生まれたブランドストーリーには、人の原体験が息づき、ブランドに対する記憶、様々な感情や五感が含まれます。その結果、ブランドと人は情緒的に強く結びつけられるようになります。多くの人が暑い夏の日を思い出すと扇風機とカルピスウォーターを連想するのは、そこに強いブランドストーリーがあるからなのです。

人とブランドとの問に結ばれる、終わることのない絆であるブランドストーリーには、①ブランドの潜在的な成長力である独自性と適切性、さらに②ブランドの能力である知識とその信頼性の2つの要素が内包されている。

記憶に残るようブランドには、この2つの要素が内包されていて、唯一無二のブランドストーリーを紡いでいます。

自伝的記憶がブランドの長期育成に影響を与えることを著者はインタビュー調査から明らかにしました。以下の4つの要素が人の記憶に影響を及ぼしていたのです。
①自伝的記憶において形態として記憶をイメージできるか否かがブランドの長期育成に影響する
人はブランドを五感によって、立体的かつ空間的に記憶をイメージしています。

②1回の経験に基づくような個人的記憶における鮮明な記憶よりも、複数回の類似の経験に基づく概括的な個人的記憶のほうがよりブランドの長期育成に影響する。
複数回繰り返される概括的な個人的記憶のほうがブランドの長期育成に影響します。衝撃的な記憶は熱狂的なロイヤルティーが発生するものの、その記憶は短命で持続性に欠けることがわかっています。

③自伝的記憶によるブランドの長期育成に関しては、必ずしも”いつ(When)”が重要ではなく、”どこで(Where)””誰と(Who)”のほうが重要である。
“どこで(Where)””誰と(Who)”の要素は自己とブランドの関係性に影響を及ぼします。

④情緒的記憶、つまり良い感情も悪い感情も、ブランドとの強いつながりを生じさせ、結果的にブランドの長期育成に影響する。

記憶に残るブランドは、自伝的記憶によって原風景を構成していたことを著者は明らかにします。

①場所や人物、時間による空間的記憶、②五感や感情による情緒的記憶、③複数回繰り返される概括的記憶の3つの過去記憶が、そのブランドと自己との関係をより強固にすることが分かった。つまり過去の記憶形成であるブランドにおける自伝的記憶によって”原風景”を構成し、ブランド認知やブランド・イメージによってブランド・エクイティが形成され、最終的にブランドの長期育成に大きく貢献している。

この概念モデルから著者は以下の4つの結論を導きます。
●ブランドにおける自伝的記憶は、空間的記憶・情緒的記憶・概括的記憶から構成される。
●自伝的記憶の各要素は現在の知覚された商品力・サービス力に影響を与える。
●現在のブランド・アイデンティファイアとヒューマンスケールは知覚された商品力・サービス力に影響を与える。
●知覚された商品力・サービス力、ブランド・アイデンティファイア、ヒューマンスケールは、ブランド認知とブランド・イメージを媒介し、ブランド・エクイティに影響を与える。

AIの時代に必要なブランディンングとは?

AIが発達すれば当然、技術を使うこともいとわないのがこれからの時代。もちろん、時代の流れを読んで順応していくことは必要である。しかし、そこに人間がどう関わるか、ブランド戦略を考える際に、時の流れをゆっくりと捉えて大局的に見つめ、大胆に攻める“勇気”こそが、人間にしかできない戦略の企て方になる。

本書には新しい原風景からつくられたブランドの成功事例が紹介されていますが、今日はその中からたねやのケーススタディを紹介します。和菓子のたねやグループは、2015年1月にテーマパークのような「ラ コリーナ近江八幡」をオープンしました。そこには屋根が芝に覆われたシンボリックな店舗があります。

たねやのCEOの山本昌仁氏は自然との共生と三方よしを経営理念に掲げ、それをラ コリーナで実現します。

これからの時代は、すべての企業が社会との関わりを求められています。そこで当社の役割は何かを考えたとき、「自然に学ぶ」ということを、人間はもう少し考えていかないとあかんと。そうなると、お客さまは重要な存在ではありますが、常にお客さまが第一で、お客さまが良ければいいという考え方ではなく、やはり地元の滋賀県に伝わる近江商人の考え方である「三方よし」の精神に戻ってしまうんですね。「三方よし」は「売り手」「買い手」「世間」がそれぞれ「よし」というのがビジネスの理想になるという考え方ですが、実は比較的最近になって出てきた言い方だそうです。それでも、私の山本家や近隣で商売をされている方は「三方よし」のような考え方を代々伝えてきました。私も、そういったことを常々言われていましたので、お客さま第一というより、売り手、買い手、そして世間すべてが良くならなくてはいけないと感じています。(山本昌仁)

山本氏は顧客体験を大事にし、たねやのお菓子を食べた瞬間にお客さまに笑顔になってもらうことを目指しています。一つ一つのお菓子が幸せを運ぶために、菓子の素材である自然を大事にしています。

自然から学ぶという企業姿勢を顧客にも伝える努力をたねやは続けます。「自然に学ぶ」というたねやのコンセプトを表現するために、ラ コリーナはつくられ、人々と自然がつながっていく場として空間がデザインされています。結果、年間311万人がラ コリーナを訪れ、多くの人をファンにしています。

「自然に学ぶ」というのは、そういうことなのかなと思います。今は自分の背ぐらいの木が、20年したら森になるんですよ。ちょっとずつ、ちょっとずつ大きくなった結果が、10年後、20年後に、あるいは100年後に花開く。私たちの経営の考え方というのか、理念というのは、そういうものなんです。

滋賀の山野草の寄せ植えを届ける愛四季苑というチームが、都心に店舗にたねやの企業姿勢を届けています。季節の山野草を店に飾ることで、同社は顧客に四季の移り変わりを知らせています。愛四季苑のこの活動そのものに、原体験や原風景があり、顧客に忘れえぬ体験を届けているのです。

たねやは自然による空間的記憶と時間軸を使い、企業姿勢を顧客に届けることで、ブランドを類まれなるものに変えています。商品だけでなく、空間として季節や自然を感じることができる場をつくることで、たねやは顧客の価値を提供しているのです。ここからやがて消費者の自伝的記憶が生まれていくはずです。

自伝的記憶は言語化や数値化が難しく、デジタル時代に大きなパワーを持ちます。AIの時代に、人間性を追求するたねやの五感的な取り組みにブランディングのヒントが隠されています。「原風景は未来を描くための原動力だ」と著者は指摘しますが、企業は記憶の中に残るための取り組みをそろそろ始めた方がよさそうです。

ブロガー・ビジネスプロデューサーの徳本昌大の5冊目のiPhoneアプリ習慣術がKindle Unlimitedで読み放題です!ぜひ、ご一読ください。

 

 

 

この記事を書いた人

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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