各務茂雄氏の世界一わかりやすいDX入門 GAFAな働き方を普通の日本の会社でやってみた。の書評


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世界一わかりやすいDX入門 GAFAな働き方を普通の日本の会社でやってみた。
著者:各務茂雄
出版社:東洋経済新報社

本書の要約

DXを成功させるためには経営者、社員、ビジネスパートナー、顧客を含めたビジネスの全体像を俯瞰し、デジタル技術を活用し、企業が強みを伸ばすようビジネスモデルを再考する必要があります。顧客と社員の体験を高めるために、デジタル技術と合理的マネジメントを融合すべきです。

GAFAな働き方と逆GAFAな働き方

DXの本質はデジタル技術と合理的マネジメントを融合すること。そして、DXを実践する上で不可欠なのはGAFAな働き方なのである。(各務茂雄)

EMCやVMware、Amazonなどの外資の日本法人で結果を出してきたのが、本書の著者の各務茂雄氏です。その後、ドワンゴに転職した著者は運営しているニコニコ動画・生放送のインフラ改革を行い、年間50億円を費やしていたインフラコストをわずか2年で33億円までに下げることに成功します。3年計画だったこの改革を1年前倒しで行えたのは、著者がDX戦略アーキテクト局長としてドワンゴに「GAFAな働き方」を導入したからです。

日本の会社のノウハウやスキルは属人化していることが多いのですが、この属人化がDXを推進する上で最大の障壁になっていると著者は指摘します。著者はそれを徹底的に解消し、GAFAのやり方をドワンゴのメンバーに伝えていったのです。

では、GAFAではどのような働き方をしているのでしょうか?GAFAと日本の会社の働き方を比較してみます。
GAFAな働き方
●企業文化や行動規範が明文化されている
●仕事の役割が明確に設計されている
●コミュニケーションが最適化されている
●実力主義(勘違いされることが多いが成果主義とは違う)
●KPIやOKRがクリアで多様性がある

逆GAFAな働き方
●行動規範と実際の働き方に大きなGAPがある
●仕事の役割があいまい
●コミュニケーションコストが高い
●同調圧力があり、年功序列

GAFAは壮大なビジョンであるMTPが示され、社員に共有されています、メンバー全員が同じ目標のもと、それぞれのスキルが発揮できるように組織が作られています。(MTPの参考記事)GAFAではDXの本質である「デジタル技術と合理的マネジメントの融合」され、コミュニケーションもスムーズに行われています。AmazonやGoogleが猛烈なスピードで成長しているのも、このDXの本質を彼らが理解しているからなのです。

AmazonにはOLP(Our Leadership Principles)という14の項目からなる行動規範があります。(OLPの参考記事)Amazonでは役職にこだわらず全員がリーダーであるという考え方のもと、社員全員がOLPに従って行動しています。OLPはAmazonの行動規範であると同時に、同社の企業の文化をつくっているのです。これがAmazonの強みになっています。

 DXの基礎となるマトリックス型組織とは?

GAFAは社内と社外のビジネスプロセスにデジタル技術を活用し、最適化しています。彼らはサービスを顧客だけでなく、サービスに携わる全ての人の体験価値を高めるためのものと捉え、デジタル技術を取り入れています。社員全員が課題を解決し、日々の体験をよりよくするために、DXを推進していく必要があるのです。メンバーがそれぞれの役割を担い、最高のパーフォマンスが発揮できるようにDXを設計することが経営者の仕事なのです。

デジタルネイティブ企業でも、変化に乗り遅れることがあります。一時マイクロソフトが低迷したのは、マーケットを見誤ったからです。市場と顧客の変化に合わせた変革・トランスフォーメーションを忘れると、マイクロソフトのようなデジタル企業も負け組になってしまうのです。経営者や社員がトランスフォーメーションを意識し、課題を解決する姿勢を持たなければ、DXはうまくいかないのです。

著者はDXを「攻めのDX」と、 「守りのDX」とに分けて整理しています  
■攻めのDX→業界内での売上げ  や利益を狙うためのデジタル投資  
■守りのDX→会社全体の生産性を向上させ、下がった費用を活用し、 DXに再投資する
攻めと守りの両方が揃愛ことで、企業は利益を上げながら、スピーディに製品やサービスを提供できるようになります。GAFAな働き方を導入することで利益を生み出せ、それを再投資することで、社会の牽引役になれるのです。

著者はDXの基礎となるマトリックス型組織をつくるべきだと言います。
1、個々の役割を明確にしたサービス型チーム(仕事をサービス〈機能〉と定義し、利用者に対する機能と品質を守るチーム)をつくります。
→個人とチームの役割が明確になるため、仕事のスピードが一気に上がります。

2、コミュニケーションを改革し、チームの連動性を高めます。
→有益なツールを適所で用いるコミュニケーション改革を行なうと、時間単位の生産性が上がります。

3、マトリックス型組織に合った人材マネジメントを行います。
→マトリックス型組織で、リモートワークをしてもスムーズにコミュニケーションがとれるようにします。

DXのメカニズムをつくるためには、会社の経営基盤を入れ替える必要がある。経営基盤を入れ替えるためには、そこで働く従業員と一緒に仕事をするビジネスパートナー、そしてお客様を含めたビジネスの全体像を俯瞰し、デジタル技術をテコに、その企業がもつアナログな強みを活かしてビジネスモデルを考え直す必要がある。そうして考えられたビジネスモデルを遂行するのに最適な仕事のやり方を探す、これがDXの本質である。

DXを成功させるためには、「GAFAな働き方」を導入すること欠かせません。メンバー全員が生産性を「自分らしく」高めるために、デジタル技術をうまく使って実現するという思想を社内に共有する必要があります。その意味でDXを企業のIT部門に任せきりにするのはとてもリスクがあります。MTPを明らかにし、社員一人一人の能力を発揮できる組織をつくることが、とても重要であることを本書で再認識できました。

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この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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