マイケル・サンデルの実力も運のうち 能力主義は正義か?の書評

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実力も運のうち 能力主義は正義か?
著者:マイケル・サンデル
出版社:早川書房

本書の要約

能力主義の倫理は、勝者のあいだにはおごりを、敗者のあいだには屈辱と怒りを生み出します。努力と才能によって勝利を収めた人びとは、自分の能力を過信しますが、実は、今の成功は幸運のおかげでもあるのです。自分の今があるのは社会のおかげだと考え、勝者が道徳的な気持ちを取り戻さない限り、格差は解消されません。

極端な能力主義が格差を拡大させる!

不平等が増すにつれ、また大学の学位を持つ者と持たない者の所得格差が広がるにつれ、大学の重要性は高まった。大学選択の重要性も同じように高まった。いまでは、学生は自分が入学できる最もレベルの高い大学を探し出すのが普通だ。子育てのスタイルも、とりわけ知的職業階級で変わった。所得格差が広がれば、転落の恐怖も広がる。この危機を回避しようと、親は子供の生活に強く干渉するようになった──子供の時間を管理し、成績に目を光らせ、行動を指図し、大学入学資格を吟味するのだ。(マイケル・サンデル)

努力と才能で人は誰でも成功出来るという「能力主義」がアメリカを分断させています。勝者は自分の能力で、今の地位を得たと考えがちですが、成功者は親からのギフトがあったから、成功できたと考えた方がよさそうです。よい大学に入学するためには、親の資産や経歴がものを言うようになり、これが格差を助長しています。

競争の激しい能力主義社会で、努力と才能によって勝利を収める人びとは、親や社会から多くの恩恵を被っているにもかかわらず、それを自分の能力だけで勝ち得たと考えがちです。成功は自分自身の手柄であり、もし失敗すれば、その責めを負うのは自分だと考えることで、他者への思いやりを失っています。能力主義が蔓延ることによって、格差が正当化され、社会が分断されてしまったのです。

現代の分裂した政治情勢を乗り越える道を見つけるには、能力の問題に取り組む必要があるとマイケル・サンデルは指摘します。能力主義によって、労働の尊厳はむしばまれ、多くの人たちがエリートに見下されていると感じています。

この数十年間における不平等の爆発的拡大によって、世の中は分断され、身分は固定されるようになりました。成功者がその優位性を確固たるものとし、自らの子供に受け渡すことができるようになったのです。過去半世紀にわたり、名門大学は人種、宗教、ジェンダー、民族といった、かつて入学を特権階級の子息に制限していた障壁を取り除いてきました。大学進学適性試験(SAT)が生まれたのは、階級や家系ではなく学業成績に基づいて生徒を入学させることを保証するためでしたが、アイビーリーグの学生たちの親の収入を見ると、この施策はあまり効果的ではなかったことがわかります。

この40年でアメリカにおける勝ち組と負け組の格差は拡大しています。そして、能力主義は世襲化し、新しい身分制度が生まれています。ハーバード大学やスタンフォード大学の学生の3分の2は、所得規模で上位5分の1に当たる家庭の主審者で占められています。

奨学金などの学資援助策にもかかわらず、アイビーリーグの学生のうち、下位5分の1に当たる家庭の出身者は4%にもいません。ハーバード大学をはじめとするアイビーリーグの大学では、上位1%(年収63万ドル超)の家庭出身の学生のほうが、所得分布で下位半分に属する学生よりも多いのです。

分断をなくすために、何をすべきか?

グローバリゼーション時代は高学歴者に豊かな報酬をもたらしたが、ほとんどの一般労働者には何ももたらしていない。1979年から2016年までに、アメリカでは製造業の雇用が1950万件から1200万件に減った。生産性は上がったものの、生産高に占める労働者の取り分の割合はどんどん小さくなるいっぽうで、役員と株主の取り分は増え続けた。1970年代後半には、アメリカの大企業のCEOは平均的な労働者の30倍の収入を手にしていた。2014年には、300倍の収入を得るようになった。

勤勉で才能があれば誰もが出世できるというアメリカンドリームは失われ、それが実現できるのは今や中国になっていると言います。アメリカ社会は硬直し、果実を得られなくなった白人の労働者階級の自殺が増えています。既存の政治家に対する不信感から、2016年の大統領選挙では、トランプ支持者が増加しました。トランプは大学の学位を持たない白人有権者の3分の2の票を獲得しましたが、ヒラリー・クリントンは上級学位(修士号あるいは博士号)を持つ有権者のあいだで圧勝したのです。

過去40年にわたり、市場主導のグローバリゼーションと能力主義的な成功概念が相まって、かつてアメリカにあった道徳的絆を破壊してしまいました。グローバルなサプライチェーンと資本の流れ、それらによって培われた国際人意識のせいで、アメリカ人は労働者たちの仕事に感謝しなくなり、連帯の呼びかけに反応しなくなりました。

われわれはどれほど頑張ったにしても、自分だけの力で身を立て、生きているのではないこと、才能を認めてくれる社会 に生まれたのは幸運のおかげで、自分の手柄ではないことを認めなくてはならない。自分の運命が偶然の産物であることを身にしみて感じれば、ある種の謙虚さが生まれ、こんなふうに思うのではないだろうか。「神の恩寵か、出自の偶然か、運命の神秘がなかったら、私もああなっていた」。そのような謙虚さが、われわれを分断する冷酷な成功の倫理から引き返すきっかけとなる。

能力主義の倫理は、勝者のあいだにはおごりを、敗者のあいだには屈辱と怒りを生み出します。彼らの成功は彼ら自身の手柄であり、彼らの美徳の尺度だと考えるようにそして、彼らよりも運に恵まれていない人びとを見下すようになります。

生まれ持った才能や、そのシグナルとしての学歴などは、家庭環境や所得と高い相関があるにも関わらず、自分たちの能力を過信します。受験戦争などに大きな努力を払ったから、自らがその対価に値すると錯覚し、できない人間を見下すようになるのです。能力(功績)を持つ者は傲慢になり、持たざる者は自分を見下されていると卑下することで、社会は分断されてしまいます。

一方、自分の成功は様々な人に支えられていると考え、運命の偶然性を実感することで、謙虚な心を取り戻せます。マイケル・サンデルは自分の能力を過信してはならないと述べています。才能を認めてくれる社会に生まれたのは幸運のおかげで、自分の手柄ではないことを認めることで、他者に優しくなれるのです。今こそ、成功者は社会に感謝し、失われた道徳心を取り戻すべきです。

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この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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