TECHNOKING イーロン・マスク 奇跡を呼び込む光速経営
著者:竹内一正
出版社:朝日新聞出版社
本書の要約
イーロン・マスクは地球と人類のために、持続可能な社会を一日でも早く実現しようと本気で考え、そこに向かって最短距離で行動します。イーロンの過大な使命感と過剰な自信が、スピード重視のベストエフォート型を選択させ、テスラとスペースXの破格の推進力を生んでいるのです。
天才的な頭脳と努力で不可能を可能にするイーロン・マスク
イーロン・マスクは自らを「テクノキング」と称している。だが、それはジョークではない。テスラとスペースXが世界を席巻するのは、最先端にして常識破りのテクノロジーを生み出しているからに他ならない。その2社を率いるイーロン・マスクは、打ち上げるロケットの材質からテスラ車の空気抵抗値まで熟知し、技術者たちと高度な議論をぶつけ合い、テクノロジーで人類と地球を救う戦いを繰り広げている。(竹内一正)
このブログでは、何度かイーロン・マスクを取り上げていますが、TECHNOKING イーロン・マスク 奇跡を呼び込む光速経営(竹内一正著)が出版されたので、改めてイーロン・マスクの凄さを確認していきたいと思います。(イーロン・マスクの関連記事はこちらから)
大学生時代のイーロンは、「将来の人類に最も大きな影響を与えるものは何か?」と哲学的な疑問について深く考え込むことが度々あったと言います。そして、「インターネット、持続可能なエネルギー、宇宙開発」の3つをビジネスにすると決め、ペイパル、スペースX、テスラを起業し、その3つの分野全てで結果を残します。
イーロンは、火星への無人飛行を2024年に、有人飛行はその2年後の2026年に実施するというビジョンを示していますが、そこから逆算し、猛烈なスピードでロケット開発を行っていきます。
物理学を専攻したイーロンは、天才的な頭脳を持っていて、周りの専門家から高度な知識を極めて短時間で吸収してしまいます。彼はロケット工学を学んだこともなく、航空宇宙企業で働いたこともないにも関わらず、NASAのロケット科学者たちが舌を巻くほどの専門知識を短期間で身につけていきます。高速の学習能力で得た専門知識と、物理学的思考でイーロンが達した結論が、「ロケットは再利用できる」でした。
ロケットを再利用すれば、宇宙旅行のコストも低減できます。しかし、誰もこのアイデアにチャレンジしませんでした。NASAをはじめ業界全体が、ロケットの再利用は不可能だと考えていました。しかし、イーロン1人がそれを可能だと考え、実現に向けて動き始めます。
競合メーカーの10分の1のコストでロケット開発することを目標に、イーロンは何度も失敗しながら、確実に進歩していきます。この努力の積み重ねによってNASAとの信頼関係を構築し、破綻寸前のところまで追い詰められながら、イーロンは危機を乗り越え、スペースXを軌道に乗せたのです。
テスラは地球温暖化を阻止する持続可能なエネルギー企業
テスラは、太陽光発電から蓄電池事業までを手掛ける、
垂直統合された「持続可能なエネルギー企業」と見るべきだ。 自宅の屋根に設置したテスラ製の太陽光パネル「ソーラールーフ」 で発電した電気を、家庭用蓄電池「パワーウォール」 に貯めて使う。そして、EVに充電できる。つまり、 循環型のエネルギー利用を世界で初めて実現したのがテスラであり 、このことを評価する投資家は世界に多くいる。 クルマを作って売るだけの古い企業とテスラは全く違っていた。
売上規模では遥かに及ぼないトヨタの時価総額を超えるほど、テスラは投資家からも評価されています。テスラを自動車メーカーと考えるとこの株価は説明できませんが、テスラを垂直統合された「持続可能なエネルギー企業」と見れば、テスラをSX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)を実践する最先端の企業だと評価可能です。
テスラユーザーが、一戸建て住宅の屋根に「ソーラールーフ」を、家の外には家庭用蓄電池の「パワーウォール」を設置すれば、電力会社の電力網に頼らないオフグリッド化が実現できます。当然、EVへの充電もできて、万が一の時はEVを蓄電池として使用することも可能です。
テスラは家庭用蓄電池「パワーウォール」だけでなく、企業向け蓄電池の「パワーパック」を提供してます。「パワーパック」は、高さ2187㎜×幅968㎜×長さ1317㎜で、複数連結すれば、容量をGWhレベル(lGWh11100万kWh)にまで拡大できます。カリフォルニア州の大手電力会社「サザン・カリフォルニア・エジソン社(SCE)」には、 約400台のパワーパックから成る容量80MWh/出力20mwの蓄電池システムを納入するなど、実績も積み上がっています。
2021年4月にはアップルが、パワーパックを集約し大容量化した製品の「メガパック」85台で構成される蓄電量240MWhの米国内最大級蓄電システムを購入しました。テスラの蓄電池事業は、2019年に1651MWhだった蓄電容量が、2020年は3022MWhと前年比80%以上成長しています。
持続可能なエネルギー社会実現のためには、「発電」「蓄電」「輸送」の3本の矢が欠かせませんが、テスラはそこでも重要な役割を担っています。
テスラは「ベストエフォート型」の開発思考で自動運転技術を開発しています。 ソフトウェア開発では当たり前「とりあえずやってみる。問題があれば後で修正する」という考え方で、自動運転車をつくっているのです。
安全を重視する自動車メーカーは石橋を叩いて渡る姿勢で開発を行なっていますが、これでは開発期間が長くなってしまいます。一方のテスラは、まず世に出してみて、もし、問題が起きれば、分析し、設計を改善し、間髪を入れずに改良版を世に出していきます。このサイクルを猛烈なスピードで繰り返すことで、他社にない進化を遂げてきたのがテスラだったのです。
イーロン・マスクは地球と人類のために、持続可能な社会を一日でも早く実現しようと本気で考え、そこに向かって最短距離で行動します。世界を化石燃料依存から脱却させるために、イーロンはテスラのEV特許を公開してしまいます。イーロンにとって、地球温暖化を阻止するためであれば、自社の特許技術の公開など大したことではないのです。
イーロンの過大な使命感と過剰な自信が、スピード重視のベストエフォート型を選択させ、テスラとスペースXの破格の推進力を生んでいる。失敗への覚悟があるから、10%、15%といった小さな改良ではなく、3倍、5倍といった桁違いのスケールアップを目指すことが可能になる。
テスラの開発スピードが遅れれば、温暖化ガスで地球環境が悪化し、人類の存続が危うくなるとイーロンは真剣に考えています。このイーロンの壮大なビジョンが、多くの投資家や開発者・ファンをテスラに引き寄せているのです。
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