パーパス 「意義化」する経済とその先(佐々木康裕, 岩嵜博論)の書評


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パーパス 「意義化」する経済とその先
佐々木康裕, 岩嵜博論
ニューズピックス

本書の要約

消費者は「ただモノを買う人」から、「社会を良くするために消費をする市民」へと自らを変化させています。Z世代を中心に企業への期待が大きく変わっていく中で、企業は「利益の追求」と「社会を良くする」を両立させなければ、顧客の支持を得られなくなっています。

パーパスが経営者にとって重要な理由

パブリックとプライベートが融解する未来は、すぐそこに迫っている。社会的責任を果たすことと、経済合理性をいかに高度に統合できるか。企業はこの新しい問いに挑むことを求められている。(佐々木康裕, 岩嵜博論)

このブログでもMTPMassiveTransformativePurposeの重要性を何度も指摘していますが、2020年代はパーパス経営を行うことが、経営者の重要課題になるはずです。

環境・社会・経済の3つの観点から、サステナビリティを考えることが、今、経営者に求められています。社会課題の解決が経営戦略の中心に置かれる時代には、「利益の追求」と「社会を良くする」を両立させなければ、顧客の支持を得られなくなっているのです。

消費者は「ただモノを買う人」から、「社会を良くするために消費をする市民」へと自らを変化させています。Z世代を中心に、企業への期待も大きく変わってきています。以前もてはやされた株主価値の最大化を目標に経営を行うと、顧客からそっぽを向かれてしまうのです。

企業は「そもそも何のためにビジネスを行うのか」という問いかけを絶えず行い、パーパスを再定義し、そこから事業を見直すべきです。サステナビリティに高い関心を持つミレニアル世代やZ世代は、提供される製品・サービスの背景にある意義やストーリーに意識を向けています。

パーパスを戦略の中心に置く企業は、意義が競争優位性につながることに気がついています。保険会社のLemonadeの機能価値は、加入から保険金の請求まですべてオンラインで完結する利便性と、割安な保険料にあり、アプリのUI/ UXもよく、顧客は良質な体験をプロダクトから得ています。

Lemonadeの最大の特徴は、「保険を必要悪からソーシャルグッドへ転換する」というパーパスのもと設計された、保険金の余剰を非営利団体への寄付に回すギブバックの仕組みを取り入れていることです。人々がLemonadeの保険に加入すればするほど社会が良くなるという意義があるからこそ、社会課題に関心がある顧客が同社を選択するのです。

SNSを使いこなすZ世代は、企業に対しても社会的貢献を求め、情報発信を通じて、企業に影響力を及ぼしています。彼らの声を取り入れ、パーパスをベースにソーシャルグッドの経営を行なっている企業が、今後ますます力を増していくはずです。

消費者の企業への期待は、単純によいプロダクトやストレスのない体験を提供することではなく、社会をよりよい方向に進化させることへと変化していることを忘れないようにしましょう。

パーパス策定のための4つのステップ

ビジネスモデルもZ世代が消費の中心になる中で、変化し始めています。「作って、売って、終わり」から「ループ型」に企業のあり方もシフトしています。サブスクリプションやリペアなどループ型を前提にしたビジネスモデルが、環境を意識した顧客から支持されています。
例・・・生産の適正化(パタゴニア)、リペア(IKEA)、シェア型モデル(AirBnB)

意思決定や製造プロセスも過激なぐらい透明化されています。商品を購入した顧客は、カスタマージャーニーの中で、企業姿勢をチェックし、環境や社会貢献に熱心ではない姿勢が見つかれば、購入をやめてしまいます。顧客だけでなく投資家も、環境や社会貢献等の非財務的指標を業績評価に組み込むようになっています。

今後のビジネスは、自社を中心に置き、自社だけの利益を追求するようなビジネスではなく、パーパスをビジネスの中心に据えながら、多様なステイクホルダーたちと一緒に、ある種のエコシステムを構築していくことが必要になる。 パーパスは決めることがゴールではない。パーパスをもとに組織が動的に駆動することが真のゴールだ。

自社の存在意義を自ら問いかけ、生まれてきたパーパスを組織の中の多様なステイクホルダー、そして組織の外のステイクホルダーとの対話を通じて、作り上げていく必要があります。

多くの人々の意思が反映されたパーパスは、ステイクホルダーの一人ひとりが信じることができる共有財となっていきます。 パーパスは、自組織のDNAと社会からの期待が重なるところから生まれます。組織の強みと社会からの期待を統合し言語化することで、自分らしいパーパスを作れるようになります。

パーパス策定のための4つのステップ
STEP1:自組織の探索  
組織内インタビューを通した自組織の歴史的資産・競争優位性・大切な価値観の探索
STEP2:社会の探索  
デスクリサーチやワークショップを通じた自組織周辺で起こっている社会変化の抽出
STEP3:統合と言語化  
抽出された要素を統合して、パーパスの幹となるコンセプトをつくり、ステートメントを明文化
STEP4:具現化  
実現したい世界をより多くの人々と共有するために、ビジュアル化や映像化などの形で具現化

パーパスは自組織のためだけの「小さな船」ではなく、あるべき姿をステイクホルダーとともに目指すための、「大きな船」であるべきだ。

顧客が変化する中で、自社のパーパスを再定義することで、顧客とのつながりを強化できます。サスティナビリティや経営の透明性を追求することで、新たなビジネスの可能性を発見できるようになります。社会に貢献するというパーパスを設定することで、ビジネスの領域をより広げられるのです。

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