ユーモアは最強の武器である(ジェニファー・アーカー, ナオミ・バグドナス)の書評

low-angle photo of pink and orange balloons

ユーモアは最強の武器である
・ジェニファー・アーカー,
スタンフォード大学ビジネススクールのゼネラル・アトランティック・プロフェッサー、行動心理学者
・ナオミ・バグドナス
スタンフォード大学ビジネススクール講師、エグゼクティブ・コーチ
東洋経済新報社

本書の要約

ユーモアは私たちのパワーを高めるだけでなく、まわりの人たちも良い影響を与えます。ユーモアは人と人との有意義なつながりを育み、創造力を解き放ち、緊迫した状況においてもストレスを和らげてくれます。ユーモアを身につけることで、人生のあらあゆる困難も乗り越えられ、豊かな時間を送れるようになります。

ユーモアがもたらす効果とは?

ユーモアは人間の心理と行動に重大な影響を及ぼしているからだ。そして私たちは、真面目な話、この新たな分野がビジネスにおいても最大の競争優位性となるのではないかと考えたのだ。(ジェニファー・アーカー, ナオミ・バグドナス)

アップル、ピクサー、グーグルなどの成長企業にはある共通点があります。これらのクリエイティブな企業は「ユーモア」を大切にしているのです。陽気さを持って、社員が楽観的に考え、行動できる文化を築くことで、組織を強くできます。

ユーモアのある組織には心理的安全性が生まれます。笑顔で人に接することで、相手に対する信頼が築けます。ユーモアによって良好な人間関係がつくれるだけでなく、創造性やレジリエンスも育めます。陽気さやユーモアがある職場では、プレッシャーへの対応力も高まるのです。

ユーモアは運動能力と同じように鍛えることが可能です。ユーモアのスキルを身につけることで、気分をよくできますし、健康にもよい影響を及ぼすことがわかっています。

人生の中でつねにユーモアを探し求めていれば、楽しい時間を増やせ、幸福度をアップできます。どんな時にでもユーモアの気持ちを持つことで、脳が活性化し、解決策が見つかるようになります。

自分が楽しい気分になれる理由を探すマインドセットは、習慣になるのだ。

私たちが笑うと、脳内では次のホルモンが分泌されます。
・ハッピーな気分(ドーパミン)
・人への信頼が深まる(オキシトシン)
・ストレスの緩和(コルチゾールの減少)
・高揚感が高まる(エンドルフィン)

私たちが仕事上のやりとりにもユーモアを効かせれば、周りにいる人によい気持ちが伝染します。ユーモアは相手の脳だけでなく、自分の脳にも良い結果をもたらします。

行動科学の研究によると、仕事上でユーモアを用いることによって、次の4つの効果が強まることがわかっています。
■パワー 
地位が高く知性が優れている人という印象を与え、相手の行動や意思決定に影響を及ぼせます。提案したアイデアにも良い反応が得られます。

■つながり 
知り合ったばかりでも信頼感が生まれ、打ち解けることができます。長く続いている間柄なら、なおさら満足感を覚えられます。

■創造力 
それまで見落としていた関連性に気づきやすくなります。リスクのあるアイデアや型破りなアイデアを思い切って提案できます。

■レジリエンス 
ストレスが緩和され、挫折から立ち直りやすくなります。

ユーモアを身につけることで、人生を豊かにできる?

ユーモアは他人から受ける印象を左右するだけでなく、他人に対する私たち自身の態度にも影響を及ぼす。

ユーモアと地位の関係を調査したところ、ユーモアのある人への評価が高いことがわかりました。旅行についての感想を求めたところ、ユーモアのある意見を述べた人たちのほうが、「有能である」印象を与えた割合が5%高くなり、「自信がある」印象を与えた割合が11%高く、「地位が高い」印象を与えた割合が37%高くなりました。

ユーモアのセンスは知的能力測定と相関関係にあることが、ダニエル・ハウリガンとケヴィン・マクドナルドの研究によって明らかになっています。2人は被験者に「もし1日だけ、ほかの動物になれるとしたら、どんな動物にはなりたくないですか? また、その理由も述べてください」という質問をした際に、ユーモアのある回答をお願いしました。さらに、「その動物をとびきり面白おかしく描写してください」というリクエストも付け加えました。

匿名の審査員たちが、参加者たちのユーモラスなプレゼンを評価しました。結果、プレゼンがもっとも面白いと評価された参加者たちは、事前に行われた一般知能検査の得点が非常に高かったことがわかりました。 

どれくらい頭がいいかは、その人がどんなことで笑うかを見ればわかる。(ティナ・フェイ)

ユーモアは交渉の結果も左右します。研究者のテリー・カーツバーグ、チャールズ・ネイキン、リューバ・ベルキンによる交渉実験では、参加者たちがペアを組み、リクルーター役と就職希望者役に割り振られました。雇用時の待遇についてメールで交渉する際、それぞれの待遇条件(給与、ボーナス、保険の保障内容、休暇等)ごとに、就職希望者にはポイントが付与されます。なるべく多くのポイントを獲得して、交渉を終わらせるのがこの実験の目的になります。

実験は「ユーモアあり」と「ユーモアなし」の異なる設定のもとで行われ、「ユーモアあり」の場合、2人組のどちらか(リクルーター役あるいは就職希望者役)が、実験前にコマ割り漫画『ディルバート』の職場での交渉を描いた漫画を読まされます。

実験前に漫画を読んだ人たちは、そうでない人たちよりも平均で33%多くポイントを獲得しました。さらに、「ユーモアあり」で交渉した二人組は、「ユーモアなし」で交渉した二人組に比べて、交渉相手に対する信頼度が31%高く、交渉の成り行きについての満足度も16%高かったのです。

オバマ元大統領やブッシュ元大統領も政治にユーモアを活用し、人とのつながりを強化していました。ホワイトハウスというストレスのある職場にもユーモアは欠かせないのです。

メンバー同士が一緒に笑うと、相手に対して腹を割ったり、弱みを見せたりしやすくなります。一緒に笑うことで、職場でオキシトシンが分泌され、よい人間関係を築けるようになるのです。

エイミー・エドモンドソンと同僚たちによる研究では、心理的安全性(失敗しても罰せられたり、バカにされたりしないと思えること)によって、私たちはより柔軟で打たれ強くなったり、いっそうやる気が出たり、粘り強くなったりすることがわかりました。失敗を気にしなくてもいいという安心感があると、大胆になり、大きなリスクをとる勇気が湧いてきます。

創造力を阻害するのが恐怖であることもわかっています。アップルではクリエイティブ・シンキングのための促進剤として、ユーモアを活用しています。ユーモアこそ、企業文化から恐怖を遮断するのにもっとも効果的なツールだと理解している企業は、職場にユーモアを根付かせる努力を怠りません。

ユーモアのセンスと寿命の長さには相関関係があります。ノルウェー科学技術大学による5万人超を対象とした15年間の縦断研究によって、ユーモアのセンスが豊かな人びとは、男女ともに、持病があったり感染症にかかったりしても、長生きすることが明らかになりました。

ユーモアをよく使う女性たちは、あらゆる原因による死亡リスクが48%低く、心臓病による死亡リスクが73%低く、感染症による死亡リスクが83%低いことがわかりました。いっぽう、ユーモアをよく使う男性たちは、感染症による死亡リスクが74%低いことが明らかになりました。

このようにユーモアは私たちのパワーを高めるだけでなく、まわりの人たちも良い影響を与えます。ユーモアは人と人との有意義なつながりを育み、創造力を解き放ち、緊迫した状況においてもストレスを和らげてくれるのです。ユーモアを身につけることで、人生のあらゆる困難も乗り越えられ、豊かな時間を送れるようになります。


この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
徳本昌大 Amazonページ >
 

徳本昌大をフォローする
イノベーションリーダーパーパス習慣化書評生産性向上アイデアクリエイティビティマーケティングライフハック人脈健康幸せ運動
スポンサーリンク
徳本昌大をフォローする
起業家・経営者のためのビジネス書評ブログ!
Loading Facebook Comments ...

コメント

タイトルとURLをコピーしました