ブランド・プロデュース思考(工藤一朗)の書評

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ブランド・プロデュース思考
工藤一朗
クロスメディア・パブリッシング(インプレス)

本書の要約

ブランディングによって顧客のLTVを高めていくことが、ビジネスを存続させる鍵になります。ブランディングを行い、顧客にパーパスの実現に向かう活動が適切に伝わることで、共感が生まれ、リピート顧客(ファン)が増えていきます。ブランディングによって顧客との関係が変わり、結果、LTVが向上するのです。

経営者がブランドをプロデュースすべき理由

ブランドとは、お客様との間の「プロミス(約束)」です。そして、顧客とのあらゆる接点において一貫したプロミスを伝え続けるためには、ブランドを俯瞰し、各所との連携を図ってブランディングを「プロデュース」していく思考が必要です。(工藤一朗)

経営者が、自社のブランドを「プロデュース」ことが求められています。ブランド・プロデューサーに必要な資質は以下の3つになりますが、その全ての資質を経営者が持っているはずです。
・自社に対して強い思い入れがある。
・自社のブランドに対して深い理解がある。
・部署横断的に社内を俯瞰でき、業務に携われる。

経営者であるブランドプロデューサーが、ブランドに対する考え方をインターナル、パートナー、顧客に一貫性を持って伝えることで、売上と利益がアップします。

現代のような物質的な不満が解消された時代になると、顧客はモノやサービスを購入する時に、企業にパーパスや企業文化を求めます。顧客は機能的な価値だけでなく、情緒的な価値にもこだわります。消費者たちはブランドが発信する「意味」に注目し、共感できたものを購入します。

特にZ世代は社会問題への関心が高く、強い社会貢献意識を持つ企業を応援します。この数年で彼らが消費の中心になる中で、パーパスや企業文化がより重視されるはずです。ブランドの社会的背景や社会的意義をメッセージにして発信しなければ、Z世代からスルーされてしまいます。

ブランディングによって顧客のLTV(ライフ・タイム・バリュー=顧客生涯価値)を高めていくことが、ビジネスを存続させていく上で重要となるのです。

LTVが以下の3つの理由から、重要なマーケティング指標になっています。
■需要の伸びが期待できなかで一人の顧客の利益の積み重ねが重要。
■事業の継続にかかわる指標となります。
■CPA(顧客獲得単価)の上限をLTVから決められるようになり、マーケティングコストをコントロールできるようになります。

LTVを改善するなら、顧客体験を高め、ブランドロイヤリティをアップさせる必要があります。現代の顧客は、ブランドには「嘘がないこと」、「言っていることと、やっていること」の一貫性を求めています。そのために、デジタル、SNS、リアルでのブランドイメージを統合し、ブランディングを行わなければなりません。

ブランディングがもたらす7つのメリット

言葉と心理的印象の両方でブランドを伝えることで、論理的にだけでなく、心象的にもブランドを伝え、心的情景の一端にブランドや商品の存在を刻み込めるのです。

ブランドは「言葉(By word)だけでなく「心理的印象(By psycology)によっても伝わります。「情緒的価値」が重視される中、「ロゴやアイコン」「色」「音」「香り」「形」などの「心理的印象(By psycology)が重要なファクターになっています。

ブランドは商品開発、製造、営業施策、キャンペーン、メッセージ、広告クリエイティブ、ロゴ、パッケージデザインといった、あらゆる要素や活動に反映されなければなりません。ブランドを象徴するパッケージやロゴ、色、音、形、キャッチコピーになっているかを検証し、ブランドイメージに一貫性を持たせるようにします。

そのためには、ブランディングを個別に考えるのではなく、全体から俯瞰した視点からブランドを捉えるようにしましょう。ブランドの一貫性を「ブランド・プロデューサー」がコントロールすることで、一貫したブランディングが実現します。

ブランド・プロデューサーは一貫性のあるブランディング戦略によって、顧客の「ブランド体験」を作っていきます。ブランド体験とは、顧客とのあらゆる接点において、そのブランドの世界観を感じてもらうことです。

適切なブランディングができれば、売上と利益も自ずと伸びていきます。パーパスの実現に向かう活動がブランドとして適切に伝わることで、共感が生まれ、リピート顧客(ファン)が増え、結果、LTVが向上するのです。

クレームに対しても真摯に向き合う文化がある企業であることを示せると、顧客からの信頼度もアップし、クレームを言っている人もファンに変えられます。

著者はブランディングがもたらす7つのメリットを明らかにしています。
・安定的なプロダクト・ライフサイクル、LTVの確保
・ブランド価値の継続
・継続的で安定的な売上の確保
・新規顧客獲得コストの軽減
・新商品投入時の信頼性の確保
・競合他社との差別化
・市場での価格優位性の確保

「ブランド」意識を現場まで落とし込み、各部署で連携して一貫性のあるブランディングを行うことで、顧客から支持される企業になり、結果、LTVがアップします。経営者やCMOがブランドのトータルプロデューサーになることで組織が一つになり、持続的に成長できるようになります。


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