企業文化をデザインする 戦略を超えた「一体感」のつくり方 (冨田憲二)の書評

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企業文化をデザインする 戦略を超えた「一体感」のつくり方
冨田憲二
日本実業出版社

本書の要約

優れた企業文化は、組織の成長と成功に欠かせないものです。優れた企業文化とは、組織のビジョンやミッション、価値観を共有し、それに基づいて行動する組織のことです。優れた企業文化があれば、組織は変化や困難に直面しても、自らの強みを活かして成長することができます。

カルチャーデザインが企業に求められている理由

企業カルチャーとは、組織とメンバーの「生き方」論。だからこそ、組織の根本的な部分において重要であり、永続的な成長/成功に欠かせない土台となる。(冨田憲二)

企業文化は、組織とそのメンバーの「生き方」であり、成功や成長に不可欠な要素です。 強い企業文化は、多くの人々を惹きつけ、組織の活力の源となります。企業文化をデザインするためには、組織や環境、メンバーを含めた徹底的な「内省」が必要です。優れた企業文化の答えは、その組織自体に内在しています。

企業の規模にかかわらず、短期的な成長だけでなく、中長期的な健全な成長を追求するために、企業文化のデザインに注力する必要があります。カルチャーデザインとは、組織のメンバーや内面との持続的な対話です。

常に自分たちにとって本当に必要なカルチャーは何かを問い続け、それを力強く維持するための取り組みが重要です。 企業文化は、組織の成長と成功の鍵です。強い企業文化をデザインし、維持することで、組織は持続的な成長と成功を達成することができます。

企業におけるカルチャーデザインとは「その企業が信じるもの、そしてそれに基づき判断/行動することのすべて」である。

企業におけるカルチャーデザインは、その企業が信じるものに基づいて判断や行動をすることの全体像を指します。

現代では、内発的なモチベーションが重視される時代です。人々の心を動かし、行動に結び付けるためには、「なぜそれが大切なのか」「なぜそれを行うのか」といった「Why」の説明が欠かせません。

企業のカルチャーデザインは、組織内のメンバーが共有する価値観や信念、ビジョン、ミッションなどを形成します。これらの要素は、企業の存在意義や目標を明確にし、メンバーの行動を方向づけます。カルチャーやパーパス、ビジョンに共感した社員が組織に集い、それを実現するためにメンバーが力を発揮してくれるのです。

メンバーの内発的なモチベーションを引き出すためには、人々が仕事に対して意義や価値を見出し、自己成長や貢献を実現できる環境が重要です。そのためには、企業が「Why」に基づいた明確な説明や共有が必要です。

なぜ特定の目標を達成する必要があるのか、なぜ特定の行動や方針を取るのかを従業員と共有することで、彼らは自らの仕事に対して意欲を持ち、自己成長やチームの成功に寄与する意識を持つようになります。

戦略と企業文化を両立させるべき理由

どんなに優れた戦略も企業カルチャーに食われる。これを言い換えれば、「優れた企業カルチャーこそ優れた戦略となる」ということです。

優れた企業文化は、組織の成長と成功の鍵です。優れた企業文化とは、組織のビジョンやミッション、価値観を共有し、それに基づいて行動する組織のことです。優れた企業文化があれば、組織は変化や困難に直面しても、自らの強みを活かして成長することができます。

ピーター・ドラッカーは、「Culture eats strategy for breakfast.」という言葉を残しています。これは、「どんなに優れた戦略も、企業文化に食われる。」という意味です。優れた戦略を立てても、組織の文化がそれを支えなければ、戦略は実行されず、成果につながりません。

現在の世界は不安定さと不確実性が蔓延しており、他社との差別化を定量的に評価することが非常に困難です。さらに、ゲームそのもののルールがいつ変わるのかも予測できません。 また、人々の価値観も変化しています。

かつては大量消費という高速サイクルが重視されていましたが、今では持続可能性(サステナビリティ)への長期志向が中心となっています。さらに、ダイバーシティ(多様性)やインクルージョン(包括性)といった価値観も重要視されるようになりました。

このような状況下では、企業や組織は単に過去の成功モデルに頼るだけではなく、柔軟で創造的なアプローチが求められます。新たな価値観やトレンドに敏感であり、持続可能性を考慮したビジネスモデルを構築する必要があります。 また、不確実性の中でのビジネス活動を行うためには、迅速な意思決定とアジャイルな対応力が不可欠です。変化に適応し、フレキシブルに対応することで、機会を見つけて競争力を維持・向上させることができます。

このような状況で、企業が成功するためには、人間の持つ曖昧さを積極的に受け入れ、長期的な視点を持って企業文化に投資することが重要です。 企業文化とは、組織とそのメンバーの価値観や行動様式のことです。企業文化が強固であればあるほど、組織は変化や困難に直面しても、自らの強みを活かして成長することができます。

企業文化を構築するには、まず、組織のビジョンやミッション、価値観を明確にする必要があります。また、組織の構成員がこれらの価値観を共有し、行動に移せるよう、組織全体でコミュニケーションを図ることも重要です。 企業文化は、短期的に成果を出すためのものではなく、長期的な成長のために必要なものなのです。企業文化に投資することで、企業は変化や困難に強い組織へと成長することができます。

企業文化は、組織の成長と成功に欠かせないものです。優れた企業文化は、組織の一体性を促進し、組織の方向性を明確にし、パフォーマンスを向上させ、組織の変革を支援します。

・組織の一体性を促進する
一貫性のある戦略と文化は、組織の一体性を高めます。組織全体が共通の目標に向かって行動することで、シナジー効果が生まれ、組織の成果が最大化されます。 たとえば、企業文化が「顧客第一主義」であれば、組織のメンバーは皆、顧客の満足を第一に考え、行動するようになります。その結果、顧客の満足度が向上し、企業の売上や利益も増加します。

・組織の方向性を明確にする
戦略は組織の方向性を示しますが、企業文化はその方向性を支える土台です。文化が戦略と一致していれば、組織のメンバーは共通の目標に向かって取り組むことができます。 たとえば、企業文化が「革新」であれば、組織のメンバーは皆、新しいことに挑戦し、既成概念にとらわれない発想をすることが奨励されます。その結果、組織は常に新しいビジネスモデルや製品・サービスを開発し、競争力を維持することができます。

・パフォーマンスを向上させる
組織の文化がパフォーマンスを向上させる要素を含んでいれば、戦略の実行力も高まります。文化が組織のメンバーにポジティブな影響を与えることで、組織全体のパフォーマンスが向上するでしょう。 たとえば、企業文化が「チームワーク」であれば、組織のメンバーは皆、協力して目標を達成しようとします。その結果、組織はより効率的に業務を進め、より良い成果を出すことができます。

・組織の変革を支援する
戦略の変更や組織の変革に伴う文化の変化も重要です。組織の文化が変化に柔軟に対応できれば、組織は変化する環境に適応し、成長することができます。 たとえば、企業文化が「変化を受け入れる」であれば、組織のメンバーは皆、変化を恐れず、新しいことに挑戦することができます。その結果、組織は常に変化する環境に適応し、成長することができます。

Airbnbから学べる企業文化の重要性

Airbnbの創業者たちが、創業初期からアップルやナイキなど、長期的に成功している企業を徹底的に調べた結果、その共通点は「クリアなミッションとコアバリューを確立している」ことであることが明らかになったといいます。

そして企業文化がある会社では自社で活躍できる優秀な社員が定義されているので、採用でも効果を発揮します。

採用で大事なのは「ワールドクラスの優れた人材」の採用。そして「バリューに沿ったカルチャーフィット」。そのために、採用においてはこんな自問を必ずする。「もし世界中の人を誰でも採用できるとして、それでもこの人を採用したいか?」と。バリューのチェックはそれだけをチェックする面接官を用意してカルチャーフィットだけを見る。エンジニアにエンジニアは当てない。徹底的にバイアスを取り除く。(ブライアン・チェスキー)

Airbnbのブライアン・チェスキーはCEOの仕事を3つに定義しました。
1 ミッションを明確にすること
2 戦略を描く

3 優秀な人を採用する

カルチャーとは、その会社の人々が何を信じ、何を大切にしているかです。つまり、クリアなミッションを持つことです。ブランドとは、会社が発信する外の世界に対する約束です。その約束を発信するのは、カルチャーを信じて熱狂している従業員にほかなりません。その熱狂がユーザーに伝わり、強いブランドが作られます。

レアル・マドリードのリーダーは、カルチャーを次のように表現しています。

カルチャーこそが複雑な組織を結束させる接着剤であり、コミュニティの価値観の上に成り立つカルチャーが、強靭な絆とインスピレーション、パワー、パッション、アイデンティティの源泉だと信じています。

カルチャーは、組織の成長と成功に欠かせないものです。優れたカルチャーを構築することで、組織は変化する環境に適応し、成長することができます。

レアル・マドリードは、勝ち方を選ぶクラブです。彼らは、攻撃的でエレガントなサッカーを体現し、対戦相手に最大限の敬意を持って接することを大切にしています。また、クラブはコミュニティメンバーとファンの価値観と期待を戦略の中心に据えており、そのカルチャーに対する一貫性は、そう簡単に真似できるものではありません。

レアル・マドリードは、「どんなスター選手であっても、カルチャーフィットしなければ採用しない」というポリシーを持っています。つまり、高いポテンシャルと実力を持っていることは大前提で、そのうえでクラブのカルチャーにフィットするかどうかが重要ということです。

コロンビア大学の調査によると、スター選手投入によるチームパフォーマンスの上昇には限界があり、その限界を超えるとチームの協調性が乱れて障害が起こるということです。このような状態は「タレント過剰性」といわれます。 組織内に確固たるカルチャーと価値観が共有されていれば、タレント過剰性を最小限に抑えたり、解消することができます。

カルチャーは、ステータスを巡る争いから当事者の注意をそらし、組織全体の目標に集中させる役割を果たします。つまり、スター選手にありがちな自己顕示欲やマウンティングが減り、協調性が生まれるということです。

レアル・マドリードは、勝利を追求するだけでなく、攻撃的でエレガントなサッカーを体現し、対戦相手に最大限の敬意を持って接するというカルチャーを大切にしています。このカルチャーは、クラブの成功に欠かせない要素であり、レアル・マドリードを世界で最も愛されているクラブの一つにしています。

コロンビア大学の研究によると、タレント過剰性を抑制するためには、次の3つが重要です。
1、監督の資質を見極める(ディレクターのカルチャーフィット)
2、スター軍団を牽引するリーダーを育てる
3、会長は一貫して価値観を忠実に守る(トップマネジメントのカルチャーフィット)

カルチャーがタレント過剰性の抑止力になるということは、常に優秀な人材獲得を推進する企業にとっても、重要な示唆となります。 優秀な人材を獲得しても、カルチャーがなければ、チームとして機能しません。チームメンバーが同じ価値観を共有し、協力し合うことで、タレント過剰性を抑制し、チームを成功に導くことができます。

企業は、カルチャーを重視し、チームメンバーが同じ価値観を共有し、協力し合える環境を整えることが重要です。

企業文化を形成する3つの要素

企業カルチャーの本質は、簡単には真似できない独自の信念、集団的判断/行動の蓄積である。

企業文化とは、企業が生まれた瞬間から、創業者によって信念が埋め込まれ、価値観が刻み込まれます。そして、組織が成功と失敗を繰り返す過程で集団的学習を通じて深められ、その企業の行く先を決める羅針盤となります。 企業文化に対する経営戦略上のアプローチは、「すでにあるもの」を可視化し、深く理解し、より広め、自社の置かれている外部環境や事業戦略に合わせて調整したり、バランスをとったり、場合によっては外科手術を施したりする「デザイン」なのです。

企業文化は、企業の成長と成功に欠かせないものです。企業文化が明確に定義され、共有されていれば、組織は共通の目標に向かって一致団結して取り組むことができます。また、企業文化が外部環境や事業戦略に合わせて変化していれば、企業は変化する環境に適応し、成長することができます。 企業は、企業文化を重視し、企業文化をデザイン・構築・維持していくことが重要です。

ザッボスの元COOアルフレッド・リン(現セコイア・キャピタルパートナー)は、優れた企業カルチャーがもたらす恩恵を次に挙げる6つに集約しています。
1.組織の第一原理となる
2.皆の足並みを揃える
3.安定性を生み出す
4.信頼を育む
5.必要としない人を排除する
6.必要な人をとどめる

優れた企業文化は、組織の意思決定や行動の基本原理となります。企業文化は、次の3つの要素によって形成されます。
・経営判断
・採用
・評価

どれほど優秀な人材であっても、企業文化にフィットしない人材は採用してはいけません。また、経営陣やマネジメント層の行動が企業文化と一致していなければ、組織全体の企業文化は乱れてしまいます。

企業文化を浸透させるためには、感情に訴えなければなりません。つまり、組織のカルチャーにフィットしたポジティブな感情を継続的にマネジメントすることが重要です。そのためには、カルチャー浸透のキーマンとなる人材を見出し、大切に育んでいく必要があります。

カルチャー浸透のキーマンとなる人材とは、企業文化に強く共感し、それを自ら体現している人材です。そのような人材は、組織の他の人々に企業文化を浸透させるのに大きな影響を与えます。

企業文化のデザインにおいて、経営層やマネジメント層のリーダーシップは重要ですが、ポジティブな感情エネルギーの担い手には、必ずしも上層部の人間がなれるとは限りません。むしろ、現場に潜むカルチャーの濃い信者を見つけ出し、担ってもらうことが重要です。


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