地に足をつけて生きろ! 加速文化の重圧に対抗する7つの方法 (スヴェン・ブリンクマン)の書評

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地に足をつけて生きろ! 加速文化の重圧に対抗する7つの方法
スヴェン・ブリンクマン
Evolving

本書の要約

ポジティブ思考も大切ですが、ネガティブな側面にも目を向けることで、リアルな視点を持ち、より深い理解ができることもあります。ストア哲学の考え方を取り入れることで、ネガティブな側面に恐れずに向き合い、成長や変化を受け入れる心の柔軟性を養えるようになり、正しい選択ができるようになります。

加速社会にストア哲学を取り入れる意味とは?

最終的に我々誰もが死を免れないということを考える必要がある。メメント・モリ、自分がいずれ死ぬということを忘れないように、毎日その事実を考えることだ。それによって気がおかしくなったりするのではなく、死にまつわる事実に慣れていき、生きることのありがたみをもっと思い知るのである。 (スヴェン・ブリンクマン)

加速社会に生きる現代人は、日々さまざまなプレッシャーや要求に直面しています。「もっと成功しろ」「もっと立派になれ」「もっと幸せになれ」「もっと生産的になれ」「自分自身を見つけろ」といった要求により、私たちは抑圧された環境で日々ストレスを感じています。

そんな現代社会でうまく生きるために、オールボー大学心理学教授のスヴェン・ブリンクマンは「ストア哲学」の活用を提唱しています。自己啓発書が発信するポジティブ思考を鵜呑みにするのではなく、ストア派の考え方を取り入れ、地に足をつけて、思考すべきだと言います。

ストア哲学は、古代ギリシャの哲学者ストア派に由来し、精神的な安定と幸福を追求する哲学です。この哲学を取り入れることで、プレッシャーや要求に対して心の平静を保ち、より充実した生活を送ることが可能とされています。

ストア哲学では、外部からの要求に振り回されず、内なる自己との調和を重視します。達成すべき目標や成功の基準にとらわれることなく、自分自身と向き合い、自己受容を促す考え方があります。それによって、現代社会のプレッシャーに負けずに、自己肯定感や内面の平和を築くことができるとされています。

地に足をつけて加速文化を生き抜くために、私はストア哲学から学ぶことを推奨する。ストア派の教えは、自制心、心の平穏、尊厳、義務感、そして人生の有限性を考察することを教えてくれる。こうした美徳を学ぶことによって、私たちはうわべの成長や変容に惑わされることなく、深い充足感を育むことができる。

・現代ではポジティブ思考(実現したい夢をイメージする)が推奨されるが、ストア派ではネガティブ思考(自分が所有しているものを失ったらどうなるか)を推奨する。
・現代では常にチャンスのことを考えろと言われるが、ストア派では自分の限界を知って祝福しろと言われる。
・現代では感じるままに生きることを期待されるが、ストア派は自制心と感情の抑圧を教える。
・現代では死がタブー視されているが、ストア派では日々己の死を想い、今生きている命に感謝する気持ちを育むことを推奨する。

成長・変化・変容・イノベーション・学習などの概念が躍動する文化の中では、「地に足をつける」ことが軽視されますが、考え、悩むことも時には重要になります。未来だけに囚われるのではなく、過去を振り返ったり、ポジティブ思考だけでなく、ネガティブに考えることも時には必要になります。

ソクラテスはかつて、「よく死ぬことを学ぶのが哲学だ」と述べました。しかし、現代社会は一般的にポジティブな面にフォーカスし、皆が「良い生活」について話すことが多く、「よく死ぬこと」についての議論はあまり見られません。時には「よく死ぬこと」について考えることで、自分の人生を見直せます。

哲学者のモンテーニュは、「死に方を学んだ人間は、奴隷の心を忘れることができた人間なのだ」と述べています。 「よく死ぬこと」について考えることの目的は、死そのものに魅了されることではありません。むしろ、究極のネガティブである死に慣れていくことで、死の恐怖に囚われることなく、より充実した生き方を考えられるようになります。

地に足をつけて生きるための7つのステップ

著者は地に足をつけて生きるための7つのステップを紹介しています。
1、己の内面を見つめたりするな
2、人生のネガティブにフォーカスしろ
3、きっぱりと断れ
4、感情は押し殺せ
5、コーチをクビにしろ
6、小説を読め――自己啓発書や伝記を読むな
7、過去にこだわれ

ネガティブなことにフォーカスすることは、一見すると不思議なアプローチに感じるかもしれませんが、実は我々がハードシングス(難しい状況や困難)を乗り越えるためには、ネガティブな側面に目を向けることが重要なのです。 ストア派のように死を意識することで、我々は人生における真の価値を見出すことができます。

死は人間の避けられない運命であり、それを意識することで自らの有限性に気づくことができるのです。この有限性を受け入れることで、現在の瞬間をより大切にし、自分自身や周りの人々との関係を深めることができるでしょう。

ネガティブな側面への意識は、現実を冷静に受け止める力を養います。難しい状況に直面したとき、問題を正確に把握し、冷静に判断することが重要です。感情的になることなく、現実と向き合い、対処するための戦略を立てることができるのです。

死に慣れていくことによって、死の恐怖から解放され、より充実した生き方を実現できるというのは、究極のネガティブである死を意識する上での重要なポイントです。 ネガティブ・ビジュアリゼーションには、次のふたつの側面とエクササイズがあります。

・ネガティブ・ビジュアリゼーションの側面
ネガティブ・ビジュアリゼーションは、ポジティブなイメージだけでなく、ネガティブな側面や可能性も想像することです。これにより、人は悪い結果や困難な状況に直面した際にもより冷静に対処できるようになります。ネガティブなシナリオを想像することで、そのリスクを事前に理解し、準備をすることができるのです。

・ネガティブ・ビジュアリゼーションのエクササイズ
ネガティブ・ビジュアリゼーションのエクササイズは、定期的に死を想像することです。自分自身が死んだ後の状況や、愛する人が亡くなった後の自分の気持ちを思い浮かべます。これにより、自分自身や人生の大切さを深く感じることができ、現在の日々の選択や行動をより意識的に行うことができるのです。

このように、ネガティブ・ビジュアリゼーションは、ポジティブな未来だけでなく、ネガティブな側面にも目を向けることで、より現実的で堅実な人生を築くためのツールとなるのです。

ネガティブなことに対して不満を持つか、怒りを抑えるかは、状況によって異なります。私たちが生きる現実は複雑であり、一つの正解があるわけではありません。それぞれの選択にはメリットとデメリットが存在し、自分自身の感情や状況を考慮しながら、適切な対応を選ぶ必要があります。

ストア派の人生哲学は、ネガティブなことに目を向けながらも怒らず、それを受け入れることを重視しています。彼らの目標は、ネガティブな出来事を肯定的に捉え、実際にできることがあればポジティブな変化をもたらすことです。ネガティブな経験を成長の機会とし、自己啓発を図ることで、心の平安と尊厳を大切にします。 このような人生哲学は、現代社会においても意義を持っています。

私たちは常に新しいイノベーションや成長に追い求められていますが、それに振り回されることなく、自己を見つめ直し、穏やかに生活することも大切です。また、できないことを受け入れることも重要です。それは、自己の限界を認めることであり、自己成長の一環となります。

ポジティブ思考に極端に偏らず、ストア哲学を用いながら、真摯に人生を考えたいものです。自分の内面ばかり見るのではなく、人生をより広い視点で考えることも必要です。自分の死を意識しながら、他者への貢献を考えることで、人生をより豊かにできそうです。


 

この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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